陰&陽のキメラ…過去の大河ドラマから見る、池松壮亮の豊臣秀吉像【豊臣兄弟】

22時間前

『豊臣兄弟!』第1回より。住職・了雲和尚と笑顔で話す藤吉郎(のちの豊臣秀吉/池松壮亮)(C)NHK

(写真9枚)

「最高の調整役」として、豊臣秀吉の立身出世を助けた弟・豊臣秀長の活躍を、八津弘幸脚本・仲野太賀主演で描く大河ドラマ『豊臣兄弟!』(NHK)。 第1回「二匹の猿」では、秀長と秀吉が早くも子役ではなく、本役で登場。これまで大河ドラマで描かれてきた秀吉像との違いや、秀長に与えられたこのドラマならではの属性について考えてみた。

■ 清須で織田信長や寧々に出会う…第1回あらすじ

尾張国の農村で、母・なか(坂井真紀)、姉・とも(宮澤エマ)、妹・あさひ(倉沢杏菜)と暮らす小一郎(のちの豊臣秀長/仲野太賀)。戦や略奪には参加せず、村の問題をあれこれと解決しては、坂井喜左衛門(大倉孝二)の娘・直(白石聖)からもらった小銭を貯めることに、喜びを感じる青年だった。

兄の藤吉郎(のちの豊臣秀吉/池松壮亮)は、喜左衛門から仏画を盗んで村を飛び出したため、一家は藤吉郎を死んだことにしていた。

『豊臣兄弟!』第1回より。(C)NHK
『豊臣兄弟!』第1回より。藤吉郎と話す寧々(浜辺美波)(C)NHK

しかし、藤吉郎は清須を治める織田信長(小栗旬)の足軽となって村に戻り、小一郎も侍になるよう懇願する。小一郎はそれを拒絶するものの、普請の関係で清須に行くことになり、そこで信長や寧々(浜辺美波)などの人々と遭遇。

小一郎は藤吉郎に、偉くなりたい理由を聞くと、家族や村の人たちを腹いっぱい食わせたいと答え、さらに「みんなを喜ばせたい。もう見下されたり、嫌われたりしとうない」と胸の内を明かすのだった。

■ 過去3作ある、豊臣秀吉メインの大河ドラマ

『太閤記』(1965年)『おんな太閤記』(1981年)『秀吉』(1996年)と、秀吉の天下一統をメインに据えた大河ドラマは、過去3作放送されている。

さらに、主人公の人生を左右するキーマンとして、秀吉が登場する大河ドラマも含めたら、もう5年に1回ぐらいのペースで登場しているのではないか。それぐらい大河ドラマのなかではおなじみの人物なので、数多くの名優たちが、それぞれの秀吉像を演じている。

『豊臣兄弟!』第1回より。(C)NHK
『豊臣兄弟!』第1回より。天下統一した後の豊臣秀吉(池松壮亮)(C)NHK

その外せない特徴をあげるとしたら、まずは猿っぽいキャラであること。公式にも「猿」と呼ばれていたので、過去の出演者を見てもいわゆる「正統派二枚目」と呼ばれる人が演じた例は数少ない。

もう一つの要素が「人たらし」であること。言葉巧みに人の心をつかんで、いつの間にか味方に引き込んでしまう。たとえば『秀吉』の竹中直人は、その愛嬌というか、明るいカリスマ性で周りを巻き込んでいく人物として描かれた。

『豊臣兄弟!』より。(C)NHK
『豊臣兄弟!』より。大和の戦国武将・松永久秀(竹中直人)(C)NHK

しかし、ここ10年ぐらいの大河ドラマでは、あまり「陽」のキャラとしては描かれてなかったように思う。

『軍師官兵衛』(2014年/こちらも竹中直人が秀吉役!)や『真田丸』(2016年/小日向文世)などの、晩年の闇落ちにスポットが当たった作品はともかく、『麒麟がくる』(2020年)の佐々木蔵之介も、『どうする家康』(2023年)のムロツヨシも、多少なりとも最初からクレイジーさを感じさせる造形だった。

■ 池松壮亮の秀吉は「愛嬌×狂気」のキメラ

そして、今回の池松壮亮の秀吉は、90年代まで染み付いていた「愛嬌で人を惹きつける人たらし」のイメージに戻すのか、それとも近年支持される「狂気で人を動かす人たらし」となるのかに注目したが、この第1回ではその両面を同等にミックスした、いわゆるキメラのような存在に見えた。

『豊臣兄弟!』第1回より。(C)NHK
『豊臣兄弟!』第1回より。墓で剣術の勝負をする主人公・小一郎(のちの豊臣秀長/写真左、仲野太賀)と兄・藤吉郎(のちの豊臣秀吉/写真右、池松壮亮)(C)NHK

普段は調子の良い二枚舌で、問題児だけどなんか憎めない雰囲気を出しつつ、いざという時は冷酷さと残酷さをむき出しにする。その秘められた狂気は、小一郎がドン引きして去るのも致し方なしと思えたほど強烈だった。

秀吉を演じるにあたり「表面的なキャラクター像ではなく、人間性の核にあるものを手放さずにいたい」と語っていた池松だが、その核は秀長に語った「みんなから褒められたい。嫌われたくない」という思いではないだろうか。

『豊臣兄弟!』第1回より。(C)NHK
『豊臣兄弟!』第1回より。大根をかじる小一郎の兄・藤吉郎(のちの豊臣秀吉/池松壮亮)(C)NHK

いわゆる承認欲求が強くて、自分の身内を喜ばせる方向に気持ちが全振りして、それ以外の人たちはどうなろうと知ったこっちゃない。これが傍目には「サイコパス」に映ることになるのだろう。最初から本領を発揮してきた池松秀吉、今後の「戦国が生んだモンスター」ぶりが楽しみになってきた。

■ ビジネスドラマの脚本家が描く、戦国時代の“お金”に期待

一方、今回の主役となる豊臣秀長だけど、兄の行動に振り回される常識人という側面が強く、それほど突出したキャラ付けは今までされていなかったように思う。それゆえに、脚本の八津弘幸もキャラの作り甲斐を感じたのだろう。

そうして生まれた仲野太賀版の秀長は、兄とはまた違う面での「人たらし」な人間となった。すでに村人のケンカや普請のアイディアでも披露されたように、周囲の人たちにとって最良の方法を積極的に提案することで「この人、いい人だな!」と人望を集めるタイプだ。

『豊臣兄弟!』第1回より。(C)NHK
『豊臣兄弟!』第1回より。道の土木工事の最中に、土砂崩れが発生し慌てる主人公・小一郎(写真左、仲野太賀)たち(C)NHK

これだけだとただの「いい人」キャラで終わってしまいそうだけど、様々なビジネス系のドラマをヒットさせてきた八津だけに、「金にうるさい」という属性を秀長に与えたようだ。なにかとお金を要求するし、小銭も家族に分配せずこっそり溜め込む。普請の現場を仕切りだしたのも、お金になる仕事をふいにしたくないあまりの行動だ。

『豊臣兄弟!』第1回より。(C)NHK
『豊臣兄弟!』第1回より。10文もらえる約束で、野盗から幼なじみ・直(白石聖)を助ける主人公・小一郎(仲野太賀)(C)NHK

この性格が、頼りになるけどたまに意地汚くなるという人間臭さにつながるのではないだろうか。物語の面でも、これまであまり詳細に描かれなかった、戦国時代の資金調達や予算調整に光が当たることも期待される。

お金が大好きな一方で、盗んでまでお金を得たくはないという、非常に高い倫理観も備わった秀長。承認欲求のためならなんでもやりそうな秀吉に、強いブレーキをかける役を担うことが十分に期待できる。

『豊臣兄弟!』第1回より。(C)NHK
『豊臣兄弟!』第1回より。天下統一した後の主人公・豊臣秀長(写真左、仲野太賀)と兄・豊臣秀吉(写真右、池松壮亮)(C)NHK

天才・秀吉の影に隠れた感のあった秀長だけど、『豊臣兄弟!』では「この人がいなければ、今の自分はいなかった」という、ニコイチの関係として描かれていくはず。まずは第2回以降、できるだけ早く2人の足並みがそろうことを祈ろう。

大河ドラマ『豊臣兄弟!』はNHK総合で毎週日曜・20時から、NHKBSは18時から、BSP4Kでは12時15分からスタート。1月11日放送の第2回「願いの鐘」では、自分の村に帰った秀長が、幼馴染の直の縁談の話を聞くところが描かれ、さらに織田信長の妹・市(宮﨑あおい)が初登場を果たす。

文/吉永美和子

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