独自の進化を遂げた「宮崎うどん」…3つの謎を解明するため、大阪から現地・宮崎へ[PR]

宮崎うどんの謎に迫る!
宮崎といえばチキン南蛮、マンゴー、ゴルフなど・・・。しかし、何度か訪れるうちに、気づけば「うどん」もお目当てになっていた。関西とも讃岐系ともまったく違う宮崎うどん。宮崎で人気の5軒と、独自のうどんの進化について大学教授に取材した。
■ 独自の進化…宮崎うどんの「3つの謎」
大阪人である筆者から見ると、宮崎うどんは何だか不思議で・・・。謎をリストアップしてみると、
謎その1:麺が柔らかく、コシがない
謎その2:早朝の「朝うどん」から深夜の「シメうどん」まで1日中楽しめる
謎その3:トッピングやサイドメニューが豊富、店の個性が出まくっている
ほかにも、「『天ぷら』といえば魚のすり身を揚げたものが主流」「細麺が多い」などの特徴もあるが、こうしてみると、いずれも粉もん文化が発達した大阪や、「うどん県」と名高い香川におけるうどん文化とはまた異なる進化をしているように感じる。
どうして宮崎うどんは独自の進化を遂げたのか、ひとまずインターネットで調べてみたもののそれらしき答えは見つからず──。謎を深めたまま、現地へ向かうこととなった。

目次
- 飲んだあとの〆にぴったり、「釜揚げうどん 戸隠 本店」
- 出勤前に… 朝うどんセットを「三角茶屋 豊吉うどん 本店」
- 幅広い客層、繁華街の「きっちょううどん 橘通店」
- 県北の人気店、家族連れも多い「天領うどん 新生町店」
- 長嶋茂雄さんが愛したこだわりうどん「元祖釜あげうどん 重乃井」
- 宮崎うどんの3つの謎、食のプロに聞いてみた!
■ いざ現地へ!うどん店5軒を巡る
とにかく、食べてみないことにはわからない。宮崎県民から「宮崎うどんならココ!」というお店を教えてもらい、立地や時間帯をバラけさせ、特徴的な5店舗へ。実際に食べて、話を聞いた。
①飲んだあとの〆にぴったり、「釜揚げうどん 戸隠 本店」(宮崎市中央通)
まず宮崎に到着した初日の夜、向かったのは「釜揚げうどん 戸隠」。宮崎最大の歓楽街、通称「ニシタチ」の路地裏にあるこちらのお店は、夜7時から深夜2時までという夜の街ならではの営業時間が特徴的だ。


取材時の夜8時には仕事帰りらしきサラリーマンや家族連れで賑わっていたが、飲んだ後に立ち寄る人が多く、夜になればなるほど混み合い、深夜1時ごろに店内がぎゅうぎゅうとなることも珍しくない光景だそう。
2代目・猪野龍治さんは、「酔っ払いすぎて夢遊病みたいにふらふらになりながら、それでもウチのうどんでシメるため訪れる常連さんもいます」と嬉しそうに語る。

戸隠が夜営業をおこなう理由は、元々は猪野さんの両親が営んでいた「ダンス教室」だったから。お腹を空かした生徒たちを見かねた猪野さんの母が出していたうどんが評判になり、そのうち噂を聞きつけた人まで食べにくるように。そこから「そんなに評判がいいなら」ということで開店に至ったというから驚きだ。

気になるうどんは、茹でた熱々のうどんをそのままダシにつけていただく「釜揚げうどん」タイプ。まず箸で持ち上げたとき、麺の細さに驚いた。これは早く茹で上がるように、そしてツユによく絡むようにという意味があるそう。


鰹節と昆布ダシ、そして柚子がアクセントとなったツユはほのかに甘く優しい味わい。さらに宮崎うどんの特徴として知られる「柔らかさ」もあいまり、どんどん箸が進む。確かにこれはシメとして深夜に食べてもあまりお腹に響かなさそう。実際に鶏の炭火焼きなど宮崎名物をたらふく食べたあとに行っても、するすると食べることができた。

釜揚げうどん 戸隠
住所:宮崎市中央通7-10
時間:19:00〜翌2:00(LO1:45) ※日・祝休
電話:0985-26-2872
http://www.miyazaki-togakushi.com/
② 出勤前に…朝うどんセットを「三角茶屋 豊吉うどん 本店」(宮崎市大坪東)
翌朝7時に向かったのは「三角茶屋 豊吉うどん 本店」。なんと朝6時よりオープンしており、宮崎で朝からうどんを食べる食文化が定着していることがうかがえる。


店名の通り三角屋根の外観がかわいらしい同店は、広々とした駐車場を備えていることからも分かるように、車で来店する人が多いようだ。これから仕事に向かうと思しきお客が次々と訪れ、黙々と食事をしている様子が印象的だった。

特筆すべきは「朝うどんセット」という朝限定のメニューだ。「たまご・わかめ・たぬき」の具材から好きなものを2つ選び、さらにおにぎり2個、もしくは卵かけご飯をつけられるというもの。これでしめて410円というから、物価高の昨今では驚異的なお安さだろう。

まずうどんを箸で持ち上げると、ギリギリちぎれないような柔らかさ! 口にすると、ふわふわとするような食感だ。

そして昆布と鰹、いりこが入った少し甘みを感じるダシがまだ覚醒しきっていない身体に染み渡る。さらに大阪の「天かす」とは少し違う「揚げ玉」がダシをたっぷり吸い、それがまたおいしい。
実は朝からそんなに食べられるだろうか・・・などと少し心配していたのだが、ぺろりと平らげてしまった。宮崎の人々はこの「モーニングうどん」で英気を養っているのかもしれないと感じた。

三角茶屋 豊吉うどん 本店
住所:宮崎市大坪東3-1-3
時間:6:00〜19:30 ※年中無休(1/1をのぞく)
電話:0985-51-9015
http://toyokichi-udon.com/
③ 幅広い客層、繁華街の「きっちょううどん 橘通店」(宮崎市橘通西)
同じく朝6時から営業しているのは「きっちょううどん 橘通店」。こちらは夜9時まで、⾦・⼟・祝前⽇になると深夜0時まで営業しており、朝・昼・晩の時間帯を幅広くカバーしている。


訪れたのは朝8時ごろだったが、若者やワイワイと会話をする客が見受けられる。店長によれば、やはり開店時の朝6時がピークだそう。そして、橘通の中心地にお店があるだけあり、スナックなどのお店で仕事を終えたばかりの人たちがシメに訪れるそうだ。

ここでは並うどんに玉子を落とした「玉子うどん」を注文。青ネギに天かす(同店では、宮崎では珍しく「天かす」と呼ぶ)がたっぷり乗って、やはり麺は柔らかい。
そして店長から「これはつけて!」とプッシュされたのは「青唐辛子」。赤い唐辛子はうどんのお供だが、青唐辛子?と思いつつひとかけら乗せてみると、ピリッと辛く味変が楽しめた。


同店ではえび天や玉子なども別途トッピング可能。このカスタマイズしやすいところを含め、通勤・通学、観光客など多くの人々が行き交う立地ならではの自由さを感じた。

きっちょううどん 橘通店
住所:宮崎市橘通西3-3-27 宮崎アートセンタービル1階
時間:6:00〜21:00、金土祝前⽇6:00〜24:00
電話:0985-26-8889
http://www.kitchouudon.com/shop/03/
④ 県北の人気店、家族連れも多い「天領うどん 新生町店」(日向市新生町)
県北の日向市に店を構える「天領うどん」は、オープン時間が朝10時からということもあり、仕事の前に立ち寄るというより、ゆっくり食事を楽しむ近所の人や家族連れが多い印象だった。


ここで目が惹かれたのは入口近くに置かれた「おでん」。2代目の田崎さんによれば宮崎でおでんを出すうどん店はそう珍しくないそうだ。ちなみにおでんのタネは豚ハラミやハンバーグ、おふくろなど個性的なものが多く選ぶのが楽しい。

注文したのは看板メニューである、釜揚げうどんタイプの「天領うどん」。やはり麺はかなり細く、柔らかさのなかにも麺にコシがあるのを感じた。


そしてダシはサバや鰹節、昆布に干し椎茸を使ったあっさりタイプ。コシのある麺とあいまって、しゃっきりとした気持ちで朝を迎えられそうな一杯だ。

2代目・田崎澄さんによると持ち帰りを目的に訪れる人も多いようで、お店の入口にもテイクアウトセットが購入できる自動販売機も設置されている。いかに「天領うどん」が地元に根付いているかがうかがえた。


天領うどん 新生町店
住所:日向市新生町2丁目66-1
時間:10:00~19:00 ※1月元日、2日、その他メンテナンス等により臨時休あり
電話:0982-52-2822
https://www.tenryo-udon.com/
⑤ 長嶋茂雄さんが愛したこだわりうどん「元祖釜あげうどん 重乃井」(宮崎市川原町)
最後は大淀川からほど近い場所にある「重乃井」へ。女将のご主人が好きだったという京町家をイメージした風情あるお店は、2019年に新築したもの。
これまで続いてきた3代への感謝を込め、100年以上の歴史を持つ建物の一部を残しつつ、新たに作り上げたという。店内に流れる昭和歌謡も相まって、どこか懐かしい雰囲気が漂っていた。


開店当初からメニューは一切変わることなく、釜揚げうどんがメイン。女将の「茹でたてを食べてほしい」という思いから、注文を受けて生麺から茹でるようにしているため提供されるまで約15分だ。

人気店ということもあり時間帯によっては数十分の待ち時間も生まれるが、地元民が「こっちはいつでも食べられるから」と観光客に順番を譲るというハートフルなやり取りも生まれるという。
そしてついに到着したうどんを、女将さんの「食べてもらえれば分かる」という言葉に従って実食。

まず驚いたのは、麺の固さだ。筆者からすれば「やわうどん」というイメージが根付いた宮崎うどんとしては珍しく、かなりしっかりコシがある。

さらに「余計なものは一切入れていない」という女将の言葉通りさっぱり身体に優しい味わいのダシと手作りの揚げ玉との相性も抜群だ。
なんでも、同店を開いた初代店主が香川出身なのだという。だから麺にコシがあるのかと納得していると、女将が「体調が悪いって人には柔麺で出すし、『バリカタ』が好きな人には固麺で出すの」と驚きの臨機応変さ。固さもお客さん次第とのことだ。


釜あげうどん 重乃井
住所:宮崎市川原町8-19
時間:11:00〜18:00(麺が無くなり次第終了)
電話:0985-24-7367
https://www.instagram.com/shigenoi_udon/
たっぷり宮崎うどんを堪能した結果、余計に謎が深まった。やはり柔らかい麺が主流なものの、「重乃井」のように固めの麺もある。釜揚げタイプもあれば、かけうどんタイプもある。
トッピングとサイドメニューも店それぞれ。例えば「戸隠」は、「母がいなり寿司好きだったんですよ」といなり寿司、「きっちょう」はレタス巻き、「重乃井」は魚寿司などなど・・・と、どうやら統一されておらず。
嘘か真か、全国で展開しているうどんチェーン店も地元のうどん店が強力な宮崎には出店できずにいる・・・という噂も耳にしたことがあったが、それも納得してしまうほどの店ごとの個性を感じた。そこで、最後は食のスペシャリストへ取材をすることに。
■ 宮崎うどんの謎を「食」のプロに聞いてみる
お話を伺ったのは、宮崎市霧島にある「南九州大学」の管理栄養学科食品学研究室に所属する竹之山愼一教授。
宮崎生まれ・宮崎育ちでNHK宮崎放送局の番組『てげビビ!』で「宮崎のうどん、なぜ麺が柔らかい?」というトピックに協力したこともあるそうで、うどんの謎に迫る上でこれ以上の適任はいないはず! ということで、宮崎うどんについて気になる疑問、すべてぶつけてみた。

──まず一番気になるのですが・・・。なぜ宮崎のうどんは麺が柔らかいのでしょうか。
同じく九州の福岡でも、うどんはやわ麺が主流です。これは福岡の商人町や小倉の製鉄所など、かつて労働者たちが多く集まっていた町でうどん文化が発展したため、同じくやわ麺が発展したのかなと。讃岐うどんのように固くこねたものではなく「多加水麺」という水を多めに入れた麺を使っているお店が多いんです。
──もともとが柔らかいんですね。
それに関西や関東の駅にもある「立食いうどん」のお店も、結構麺は柔らかめですよね。宮崎と同じように麺の茹で上がりが早いこと、回転率の高さを求められることでやわ麺に落ち着いたのだと思います。
ただ、なかでも宮崎うどんが特に柔らかいのは、他の地域とは違い1回目に茹でる際100%まで茹で上げている店が多いからではないでしょうか。

──1回目に茹でるというのは?
一度茹でた状態で置いておき、忙しい時間帯になったら下準備しておいたうどんを茹で直します。ですので、宮崎のうどんの柔らかさは「二度茹で」もカギとなります。
──実際にお店を巡ると、柔らかさに違いがあるなと感じました。
おそらく、1回目に茹でる際のパーセンテージが異なるのだと思います。例えば釜揚げうどんの店だと、1回目で100%まで茹でてしまうとお湯の中に浸っている状態なのでゆるゆるになってしまうんですよ。なので70、80%程度の茹で加減に留めている可能性が高いです。

──サイドメニューやトッピングが豊富な理由は?
たとえば県北のうどん店や飲食店はサバの押し寿司を出すところが多いのですが、それは日向市には港町があり、アジやサバが穫れることから押し寿司を作る文化が残っているからなんですね。
また、宮崎で「天ぷらうどん」を注文すると、魚のすり身を使ったものが出てくることが多いですよね。九州で言うところの「さつま揚げ」ですが、これも食品学上で言うとタンパク質を補うために魚のすり身を使った天ぷらを乗せていると推察できます。
うどん単体だとエネルギー源としてはちょうどいいですが、タンパク質が少ないんです。その点、魚のすり身ならコスト的にも低く抑えられるし、良質なタンパク質を摂れるというわけです。

──なるほど。この独特な文化はいつ頃から生まれたものなのでしょうか。
戦後のベビーブーム(1947~49年)や高度経済成長期のあたりで一気に変わったんじゃないかなと思いますね。今でこそ宮崎駅の周辺が栄えていますが、ずっと昔は大淀川を挟んだ南宮崎駅のあたりの方が発展していたんですね。
南宮崎駅周辺には昔工場や繭の検定所があったんですが、その近くにあったのが「三角茶屋」です。そこで労働者に出していたうどんが、今浸透している「宮崎うどん」として定着したのではないかと。そして三角茶屋の跡を継いだお店が「三角茶屋 豊吉うどん」と「おくのうどん」として残っています。

──なるほど、「三角茶屋」が今ある宮崎うどんの源流と言えるんですね。釜揚げうどんの「重乃井」さんはまた違う発祥なのでしょうか?
宮崎は大淀川沿いにズラッと観光ホテルがありまして、昔からキャンプのため宮崎を訪れた巨人軍が泊まりに来ていたんです。その際に「ミスター長嶋」こと長嶋茂雄さんが「重乃井」さんの味に惚れ込み、通うようになりました。
それをきっかけに「重乃井」さんがキャンプ地にうどんを差し入れするようになったとか。なので、三角茶屋とはまた異なるルートで発展したうどんだと言えるでしょう。

──ちなみに、早朝からうどんを食べる文化も昔からあったんでしょうか?
昭和の時代、日本各地でモーニング文化が発展しましたが、宮崎でも同じように朝うどん文化が栄えました。そして、宮崎は車社会なので、車を使った距離に店舗を置く「郊外型」とも言えるうどん店も広がりを見せ、車で出勤する際に立ち寄るのも習慣に。
そして、飲み屋街で働いている人たちが深夜3~4時くらいまで仕事をしたあと朝まで空いている別のお店で飲んで、そのまま朝うどんに・・・というコースも。そうなると、もうほとんど夜と朝が一緒になってしまうんです。
ちなみに今は飲み屋街の近くにある「戸隠」さんも、以前は宮崎市役所の近くに店がありました。市役所に集まる人たちがよく来ていたわけですが、現在は飲み屋街近くに集中しているようです。

──うどん店が宮崎県民の朝から晩までをカバーしてるんですね。
やはりそれぞれの生活・習慣によって、よく行くお店は違いますよね。店を出す場所や時間帯、訪れる客層の違いによってうどん店がそれぞれ異なる発展をし、さらにそこから派生した店も生まれ・・・。今ある「宮崎うどん文化」が形成されているのだと思います。
◆
3日間の旅で見えてきたのは、宮崎うどんの奥深さと、うどんを愛する人たちの懐の広さだ。一口に「うどん」と言っても、麺の柔らかさや長さ、トッピングにダシ、そして食べるシーンもさまざま。
それぞれにホームとなるうどん店がありつつ、「たまにはあそこのうどんを食べたい」と気分転換のものも。それはひとえに「うどん」そのものを愛しており、幼い頃から生活に馴染みきっているのだと感じた。
宮崎はもしかすると、あの香川にも負けない「うどん県」なのかもしれない。現地で静かにほとばしるうどん愛を浴びるうちにそう感じた。
取材・文/つちだ四郎
写真/Lmaga.jp編集部
提供/宮崎県観光協会
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