寒空の下4時間待ち「ソウルフード」は絶品クレープ!神戸の人気店閉店まで最後の1週間

2025.12.25 19:00

「この行列なんなん?」と驚く人も多い…その先にあるのは「スナックランド」。近隣の人も「普段は5~6人くらい並んでいたけど、こんな行列みたことない」と言う(12月24日/神戸市西区「スナックランド」Lmaga.jp編集部撮影)

(写真11枚)

1985年に街開きしたニュータウン「学園都市」(神戸市西区)。その駅前「キャンパススクエア」内で、1988年より37年営業を続けてきたクレープ店「スナックランド」が12月31日に閉店する。これまで、店頭で2人3脚でクレープを焼き続けてきた柴田さん夫妻も70代後半に。もうすぐ80歳というところで、高齢を理由に、2025年12月31日の営業を最後に閉店することを決めた。

「スナックランド」
「スナックランド」に閉店の張り紙が…(12月24日/神戸市西区「スナックランド」Lmaga.jp編集部撮影)

◆「この行列なんなん?」キャンパススクエア内に行列が

穏やかな時間が流れる、ショッピングモール「キャンパススクエア」に、突如現れた大行列。「この行列なんなん?」と驚き、写真を撮る人たちも。その先にあるのは、神戸西エリアの地下鉄沿線に住む人たちにはおなじみの「スナックランド」。名前を知らなくても、存在を知っているという人は多いだろう。

「スナックランド」
「スナックランド」のクレープ。レトロでかわいい包み紙も、創業当時から変更していないと言う(12月24日/神戸市西区「スナックランド」Lmaga.jp編集部撮影)

取材日は、開店と同時に約40人が並び、手がかじかむような寒空の下、どんどんその人数は増え、昼を過ぎると80人ほどに膨らんだ。店先には、「毎日2時間~4時間待ちです」の張り紙があり、「そんなおおげさな」と思ったが、そんなことはない。実際開店と同時に並んでも、食べられるのは約4時間後。それに耐えられる人だけが、一枚一枚丁寧に焼き上げる絶品クレープを食べることができるのだ。

「スナックランド」
「スナックランド」の店の前には、行列覚悟を促す張り紙が(12月24日/神戸市西区「スナックランド」Lmaga.jp編集部撮影)

こちらで扱うクレープの種類はなんと120種以上。値段も280円からと格安。現在巷は「第三次クレープブーム」で賑わっているが、そんなことも関係なく、「変わらぬ味」をコツコツ地元の人たちに提供し続けてきた。

「スナックランド」のメニュー表、とってもレトロ(12月24日/神戸市西区「スナックランド」Lmaga.jp編集部撮影)

周囲には名だたるファーストフード店が多数存在する激戦区ながら、個人店でここまで営業が続いている実力は相当なもの。「クレープの生地が最高」「クレープも、ポテトもめっちゃおいしい」と、味に定評がありファンも多い。閉店の知らせには、「え!マジかよー!」「寂しい…おっちゃんおばちゃん お疲れ様でした」「高校時代本当にお世話になりました」など、SNS上にも惜しむ声が多数あがっている。

「スナックランド」
「スナックランド」のクレープ生地はもちもち。温かいのはもちろん、冷めてもおいしい(12月24日/神戸市西区「スナックランド」Lmaga.jp編集部撮影)

特に付近には、兵庫県立大学、神戸市外国語大学、神戸市看護大学、流通科学大学、神戸芸術工科大学など、多くの大学が点在。また地下鉄からバスへの乗り継ぎなどで、高校生たちも多く立ち寄る立地で、学生たちにも愛された。取材時にも学生カップルが「おじちゃん、おばちゃんありがとう」と柴田さん夫妻に手紙を渡していた。

「スナックランド」
「スナックランド」に並ぶのは幅広い客層(12月24日/神戸市西区「スナックランド」Lmaga.jp編集部撮影)

◆ 4時間待っても「どうしても食べたいクレープ」過去にイチローらも来店

取材日は平日だったが、並ぶ人たちは学生からファミリー、高齢の方まで幅広く、いろいろな人たちに愛されてきたのがよくわかる。長期戦に備え、動画を楽しむ人、本を読む人、椅子を持参する人、なかにはサイファーしながら、という高校生も。みんな「どうしてもクレープが食べたい」気持ちは同じで、雨が降っても、帰る人はいなかった。

「12月に閉店発表してからはずっとこの状況が続いてます。もともとお昼ごはんも食べられない日が多かったけど、今はもうそれどころじゃない忙しさで…」とクレープを焼きながら奥さんの広子さんが教えてくれた。「閉店を決めてから、遠くの人たちや、懐かしい人たちもたくさん来てくれて、本当にありがたい」とあわただしいながらも、お客さんとの会話を楽しみ、感謝の気持ちでいっぱいだそう。

「ハムポテトクレープ」をつくる広子さん(12月24日/神戸市西区「スナックランド」Lmaga.jp編集部撮影)

秀夫さんはここまで長く続けられた秘訣を「甘くて、かわいいクレープだけじゃなくて、食事系クレープに力を入れ続けてきたから。うちは男性のお客さん、多いでしょ。『クレープ店やりたい』と相談してくる人も多いけど、お客さんに何度もリピートしてきてもらうには、食事になるクレープをしっかり提供することが大事だと、伝えている」と話す。実際にこの日も、「ハムポテトクレープ」や「フランククレープ」など食事系クレープを、家族で食べる用に何個もまとめ買いする人が多かった。

「スナックランド」
「スナックランド」の前には銀行員などを経験し、店を持った秀夫さん。クレープ店を持ちたい人たちにも真剣にアドバイスしてきた(12月24日/神戸市西区「スナックランド」Lmaga.jp編集部撮影)

「オリックスブルーウェーブ時代のイチロー選手はじめ、野球選手たちもたくさんきてくれていた」と「ほっともっとフィールド神戸」(総合運動公園、旧「グリーンスタジアム神戸」)が近いことから、野球選手など、幅広いジャンルのスポーツ選手との交流についても、笑顔で懐かしんだ。

◆ 親子3代で来店する人も…「ニュータウンのソウルフード」

親子三代で「スナックランド」に通ったという女性「今日が最後かな…」(12月24日/神戸市西区「スナックランド」Lmaga.jp編集部撮影)

この日来店した地元の女性は「お店ができてすぐ、娘が小学生くらいのときから、しょっちゅう買いに来ていた。今では娘が帰省した際、孫と一緒買いに来ることも。お店がなくなるのはショック。私たちにとっては『ソウルフード』です」と親子3代にわたり、通い続けた名店の火が消えることを、惜しんだ。

「スナックランド」
惜しまれつつ閉店する「スナックランド」。多くのファンが連日詰めかけている(12月24日/神戸市西区「スナックランド」Lmaga.jp編集部撮影)

広子さんは「2人で作れる数には限界があって、毎日300枚くらい。20時まで営業しているけど、並んでもらうのはだいたい16時くらいまで。それ以上並んでもらっても作れなくて…」と申し訳なさそう。ニュータウンの「故郷の味」の営業は、残り1週間。食べ納めを考えている人は、早めの来店を目指そう。

「スナックランド」(「キャンパススクエア」内)の営業は12月31日まで。営業時間は11時から20時。

取材・文・写真/Lmaga.jp編集部

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