逆風のアメリカでも着実に成長…「くら寿司」の粘り強い挑戦

3時間前

「くら寿司 大阪・関西万博店」(Lmaga.jp撮影)

(写真3枚)

回転寿司チェーン「くら寿司」(本社:大阪府堺市)がアメリカで展開する「Kura Sushi USA」(以下:KSU)。他社の回転寿司店が苦戦を強いられるなか、同社はアメリカの22州とワシントンD.C.に83店舗を展開するなど、着実にアメリカにおける知名度や人気を獲得している。

そんな同社の設立当時から携わってきた姥一最高経営責任者(CEO)に、日本とアメリカの違いや、現地で支持を得るまでの紆余曲折などを聞いた。

■ 2009年にアメリカ進出…カルチャーショックも?

「Kura Sushi USA」の姥一CEO(Lmaga.jp撮影)
「Kura Sushi USA」の姥一CEO(Lmaga.jp撮影)

2009年にアメリカのカリフォルニア州・アーバインに1号店をオープンして以来、コンスタントに出店を続け、現在では店舗数83店舗にまで成長したKSU(2025年12月段階)。1年後にはさらに17店舗の出店を予定している同社だが、進出当初から順調というわけではなかった。

日本とアメリカでは食の嗜好や食文化が変わってくるため、日本で人気が高いカニやハマチなどの白身魚がアメリカでは不人気の傾向に。また「受け入れられないものはキッパリと拒否する」というアメリカ人の気質に触れ、カルチャーショックを受けたこともあったという。

■くら寿司独自の「ビッくらポン!」がアメリカで大ウケ

アメリカでは独自のメニューも展開されている(Lmaga.jp撮影)
アメリカでは独自のメニューも展開されている(Lmaga.jp撮影)

潮目が変わったのは、2014年のサンディエゴへの出店がきっかけだった。サンディエゴ店から日本のくら寿司で使用しているシステムをフルで導入するようになり、売上が爆発的に増加。

日本ではお馴染みの「ビッくらポン!」やお皿の回収システム、回転レーンやタッチパネルなどのシステムが「魔法のよう」と人気を呼んでいるのだという。さらに、あえて「日本食レストラン」のような立ち位置を意識し、天ぷらやラーメン、うどんなどのサイドメニューに力を入れたことも功を奏したようだ。

また、パン粉のざくざく食感や甘辛いソースが斬新な「ゴールデンクランチロール」の大ヒットも大きいそうで、姥CEOは「大阪のノリで『ゴールデンクランチ』という名前を付けたら、めちゃくちゃ売れたんです。ネーミングで変わりますね」と振り返る。

加えて、日本のくら寿司でも展開されている「IPコラボ」にも力を入れている。最近では『星のカービィ』のコラボが成功を収めたが、『ワンピース』や『たまごっち』、『サンリオ』など日本発コンテンツはアメリカ人にも受けがいいようだ。また、Vtuberの「hololive(ホロライブ) English」とのコラボは姥CEOとしても予想外の大反響だったとか。

■ ピザやチキンに「寿司」が連なる未来を目指す

海外進出から撤退する同業他社も多いなか、成功を収めているように思えるKSUだが、一方で広大な土地を誇るアメリカではまだ知名度が足りないという。

例えばアメリカで高い視聴率を誇る「MLBワールドシリーズ」が放送されているシーズンは、スポーツバーでの観戦や、自宅でピザやチキンを食べながら盛り上がるというのが定番スタイル。そこに「寿司」という選択肢が加わるにはまだまだ寿司文化が浸透していないようで、先日ドジャース戦がおこなわれた際は、売り上げが下がったのだとか。

姥CEOは「アメリカでは何千店舗と展開するファミレスチェーンもある。そこと比べるとうちは全然影響力はありませんが、もしもっと影響力を持ってきたら『寿司パーティー』みたいな文化もできるかもしれないですね」と語った。今年は初となるフードコート内の店舗もオープンしたKSU。寿司や日本食文化を広めるべく、さまざまな戦略を打ち出す同社のさらなる展開に注目だ。

取材・文/つちだ四郎

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