子どものインフル、「異常行動」に注意!小児科医「3大マジでやっとけ」とは?

2025.12.21 08:30

今年は大阪府を含めて、全国的にインフルエンザが、例年より早く流行しています

(写真6枚)

大阪府における定点あたりのインフルエンザ患者報告数は、2025年第48週(11月24日〜30日)で「31.45」となり、警報レベルである「30」超えに。第50週(12月8日~12月14日)は「21.60」と減少したが、市北部では「25.80」など、以前と流行が継続している(※1)。

かねてから就学以降の小児・未成年の男性を中心に報告が多い、インフルエンザ感染による脳への影響で起きる「異常行動」については、厚生労働省も「異常行動に備えた対策を徹底してください」と呼びかけている。

さまざまな分野の医師たちが発信する「3大マジやっとけ」という注意喚起のX(旧Twitter)の投稿に関連して、小児科クリニック『おぎくぼ小児科』の院長、おぎくぼ小児科の院長/365日診療 (@ogikuboshonika)さんが、「インフルエンザ3大マジでやっとけ」として、こんなポストをXに投稿していた。

■「異常行動」に注意

「インフルエンザ3大マジでやっとけ
① 窓の鍵をすべてかける
② 保護者と一緒に寝る
③ 戸建ての場合は1階で寝る
インフルエンザにかかったら『急に走り出す』『部屋から飛び出そうとする』などの異常行動に注意して下さい。異常行動が出現する前の準備が大事です!」 (おぎくぼ小児科の院長/365日診療さんのXの投稿より引用)

インフル感染による「異常行動」については過去に、インフルの治療薬として知られる「タミフル」の服用を疑う説もあった。

おぎくぼ小児科の院長先生にお話を聞いたところ、タミフルの服用で異常行動が起きるのではなく、「インフルエンザによる脳への影響」という認識でほぼ間違いなく、2025年の研究では、むしろタミフル(オセルタミビル)が異常行動を減らす、と結論づける文献も登場しているそうだ。

「ですので、今回私がXの投稿で挙げたケースは、⚫︎一部は『急性脳症』レベルの重いもの、⚫︎一部はそこまで至らない『熱せん妄・一過性の意識障害・異常言動』といったグラデーションはありますが、いずれも『インフルエンザ感染が脳・中枢神経に与える影響』として理解しています」(おぎくぼ小児科の院長/365日診療さん)

小児科クリニック『おぎくぼ小児科』の院長、おぎくぼ小児科の院長/365日診療さんのX(旧Twitter)の投稿
小児科クリニック『おぎくぼ小児科』の院長、おぎくぼ小児科の院長/365日診療さんのX(旧Twitter)の投稿

■とくに注意すべき行動と、救急に連絡すべき症状

おぎくぼ小児科の院長先生によると、こうしたインフル感染による「異常行動」の中でもとくに注意すべき行動や、すぐに救急に連絡すべき症状があるという。

「厚労省のQ&Aおよびパンフレットでは、インフルエンザ罹患時に注意すべき異常行動として、例えば以下が挙げられています。

⚫︎急に走り出す
⚫︎家の外へ飛び出そうとする
⚫︎ベランダや窓から出ようとする、よじ登る
⚫︎意味不明なことを言う、支離滅裂な会話
⚫︎うろうろ歩き回る・徘徊する

また、緊急性のあるインフルエンザ脳症の『初発神経症状』としては、厚労省研究班のガイドラインで、<意識障害><けいれん><異常言動/異常行動>の3つが主なサインとして列挙されています。

こういった症状が、①連続ないし断続的に概ね1時間以上続く、②意識状態が明らかに悪いか悪化するような場合は、速やかに医療期間を受診する必要があると考えます。また上記以外でも痙攣する場合などは緊急で医療期間を受診した方が良いです」(おぎくぼ小児科の院長/365日診療さん)

「異常行動の例」(画像:厚生労働省「インフルエンザの患者さん・ご家族・周囲の方々へ」より)
「異常行動の例」(画像:厚生労働省「インフルエンザの患者さん・ご家族・周囲の方々へ」より)

■命には代え難いが…「家族内感染」は避けたい

院長先生の投稿に対して、「親としてはうつされないよう定期的に換気したいが異常行動が怖い」「同じ部屋で寝るのは賛成だが感染リスクも高まるのよな。もちろん命には代えられないけど」といった、保護者側の切実な声も多く寄せられた。

「こういったジレンマは診察室でもよく出る話題です。感染予防はもちろん大事ですが、感染防止と転落防止では、『転落等の事故防止』が優先されます。

厚労省のリーフレットにも、『インフルエンザにかかった時は、飛び降りなどの異常行動を起こすおそれがある。特に発熱から2日間は要注意』とあります。私自身もこのスタンスに沿って、

⚫︎自宅療養中は、少なくとも2日間は子どもを1人にしない
⚫︎ベランダや窓の鍵を確実にかける
⚫︎戸建ての場合は可能な限り1階で過ごす

こういった、 『転落予防を最優先にした対策』 を強く勧めています。インフルエンザによる異常行動でいちばん怖いのは<転落など命に直結する事故>です。転落事故は一度起きると取り返しがつかないのです」(おぎくぼ小児科の院長/365日診療さん)

厚生労働省が推奨する「転落等の事故を防止」するための対策例(画像:厚生労働省「インフルエンザの患者さん・ご家族・周囲の方々へ」より)
厚生労働省が推奨する「転落等の事故を防止」するための対策例(画像:厚生労働省「インフルエンザの患者さん・ご家族・周囲の方々へ」より)

■「家族内感染」どう防ぐ?

それでも、家族内感染で保護者も同時に倒れてしまう事態は避けたい…。

そんな保護者の方々に対して、院長先生はいつも以下のようなアドバイスを行なっているという。

「インフルエンザによる異常行動による命に直結する事故を防ぐため、特に発熱後2日間は『感染よりも安全』を優先してください、とお伝えしています。

換気自体は間違いなく推奨される対策ですので、私が診察室でよくお伝えしているのは、発熱後2日間の『リスクが高い時間帯』に気をつけてほしい以下の対策です。

⚫︎窓を開ける際は必ず大人が側で見ている状態で短時間だけ換気する
⚫︎子どもが寝ている間や、大人が目を離す時は窓は閉めて施錠
⚫︎可能なら、換気は子どもがいない別室や廊下を中心に行う
⚫︎同じ部屋で寝る時は<大人はマスクを着用>
⚫︎可能な範囲で頭の向きをずらす/布団の配置を工夫する

事故防止を最優先にしながら、できる範囲で感染対策を組み合わせる、という折衷案です。感染予防効果のエビデンスは低いですが、保護者の不安(感染リスク)にも寄り添う形で説明するようにしています」(おぎくぼ小児科の院長/365日診療さん)

また、窓や玄関の鍵に手が届く年齢の子どもがいる場合の対策として、「チャイルドロックを手が届かない場所に設置するのがおすすめです」と、Xに投稿していた院長先生。

「インフルエンザの有無に関係なく、子どもの転落防止対策は必要だと考えております。ベランダに物を置かない、補助錠の使用などが大切です。消費者庁でも紹介されています」(おぎくぼ小児科の院長さん)

「インフルエンザの患者さん・ご家族・周囲の方々へ」(画像:厚生労働省)
「インフルエンザの患者さん・ご家族・周囲の方々へ」(画像:厚生労働省)

■ワクチンは重症化のリスクを下げる「安全ベルト」

「異常行動」を含む「インフルエンザ脳症」は、とくに「予防接種をしてない子ども」にリスクが集中し、重篤化した場合、死亡や神経学的後障害をもたらすことがあるという(※2)。

「インフルエンザ脳症そのものは、年間100~200人程度の小児に発症し、死亡率や後遺症率が高い重篤な疾患であることが、小児科学会からの注意喚起で示されています。

診察室ではよく、『ワクチンを打ったのにかかったから意味ないですよね?』と言われます。そもそも季節性インフルエンザワクチンは、『打てば絶対かからないワクチン』ではなく、①かかる人を減らす、②かかったとしても、重い経過になる人を減らす、という二段構えの役割を持ったワクチンです。

完全に防げなかったり、ワクチン株と流行株のミスマッチがあっても、入院や重症化のリスクを底上げ的に下げてくれる『安全ベルトのような存在』であることをお話するようにしています。

そのうえで、<本人の基礎疾患の有無><家庭内に高リスク者(乳児、高齢者、基礎疾患のある方)がいるか><学校・保育園などでの集団生活状況>を踏まえ、『打つメリットが大きいご家庭ほど、早めの接種を検討してほしい』と伝えています」(おぎくぼ小児科の院長さん)

猛威をふるうインフルエンザの脅威から子どもたちの命と安全を守るため、「何度でも何度でも何度でも何度でも言うよ。インフルエンザワクチン、打とう!声が枯れるまで言います!」とXに投稿していた、おぎくぼ小児科の院長先生。

インフルエンザ脳症や後遺症など、重症化のリスクを下げるため「インフルエンザワクチン」の接種を
インフルエンザ脳症や後遺症など、重症化のリスクを下げるため「インフルエンザワクチン」の接種を

■保護者が見た「子どもたちの異常行動」

今回の「おぎくぼ小児科」院長先生によるXへの投稿に対して、コメント欄には保護者の方々からの共感の声や、自身の「異常行動」についての経験談も多数寄せられた。

「息子もどこかに行こうと起き上がってた!5歳です。目は開いてるのに視線が合わない。うわ言を言う。怖いと言う。同じ部屋で寝るのはほんとに賛成」

「うちの家人(小)、突然、『砂の国(マリオオデッセイ)に行かなきゃ!』って寝床から起きたからね。びっくらぽん」

「異常行動は10歳前後の男児に多いとのことで、今さら窓ロック買ってみた。熱せん妄で『UFOが来る…怖い』ってなったことあるから」

「去年娘がインフル中に、焦点の合わない目つきで会話するし爆笑するしで恐怖した記憶が(涙)。痙攣の前駆症状も出たから即、救急車呼んだよね。解熱したら娘、まったく覚えてなくてさらに恐怖」

「子どもがインフルで高熱の時、夜中に外出ようとしてた(マンション高階)気配でたまたま気づいたけど本当に怖かった。どうしたの?って聞いたら『外に出ないと』って。以来、熱出したらリビングに寝かせるように」

「息子が子どもの頃、インフルの高熱で寝てた時に急に、鬼が来る!鬼が来る!って本当に怯えて逃げようとするのを抑えてたことあったんだけど、今思い出しても怖い。無事でよかった…」

「週末に園の先生から、いつもとは異なるタイミングで急に走り出したりしたので週末様子を見てくださいと言われてて今息子、38.5度…先生まぢすげぇです…」

■自分自身が経験した「異常行動」

「これさ、怖いけど本当にあるんだよな…。中学生の頃だけど、インフルになって死にそうなくらいきつかった時、夜中に急にかけ出して、鍵がない鍵がないって言ってたらしくて親が止めてくれたからよかったけど、親が起きてなかったら怖いなーて思っちゃった。てか記憶にないのがいちばん怖い」

「夫は子ども時代にインフルエンザになり、急にうわ言を言って1階から2階へ階段をかけのぼり、部屋の窓を開けて飛び降りようとしたらしいです。お母さんが気づいて止めたとか」

「14歳の時にインフルエンザで熱せん妄になったことあります。急に起きて窓から外に出ようとしたらしいけど記憶がなかったです。気づいたら親が上に乗って押さえつけられてた」

「大人(20歳くらい)も1人になるな。自分は迫りくるもの(幻覚)に仕分けしろ(幻聴)って言われた。親がなだめてくれたけど、指示者(幻覚主)じゃないから無視してた。途中で寝ていいよって言われたから(幻聴)、親に宣言して寝た。飛び降りろって言われたら飛び降りてた。鍵開けろって幻聴来たらまじで終わる」

「私、30でインフルになった時、家から飛び出したことある。大人でもなるぞ」

※1)大阪府感染症情報センター「インフルエンザ定点あたり患者数」
※2)厚生労働省「インフルエンザ脳症ガイドライン」

取材・文/はやかわ リュウ

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