女中の月収は現代の80万円…『ばけばけ』はなぜ「お金の価値」をきっちり描くのか

『ばけばけ』第30回より。ヘブンの新居の前にいるトキ(髙石あかり)(C)NHK
今週放送された連続テレビ小説『ばけばけ』(NHK総合ほか)第6週「ドコ、モ、ジゴク。」では、ヘブン(トミー・バストウ)が一軒家を借りたため女中が必要となった。錦織(吉沢亮)はトキ(髙石あかり)に「ヘブン先生の女中になってくれないか」と頼むが、トキは「バカにせんでごしなさい。やりません」と断る。
明治時代、在日外国人の女中はラシャメン、つまり洋妾と同一視され、世間の偏見に晒されたのだ。
とはいえ、借金の取り立てが厳しくなり、夕餉の汁物にはしじみの殻だけで身が入っていないほどに困窮している松野家。さらに追い打ちをかけるように、トキは親戚のタエ(北川景子)が物乞いをしてる姿を目撃してしまう。トキはタエの三男・三之丞(板垣李光人)と会って話し、食うや食わずやという雨清水家の零落を知る。そしてトキは女中になる決意をするのだった。
■ タエが物乞いをして得た1銭玉と、ヘブンの月給100円
なみ(さとうほなみ)のように貧村から身売りされて遊郭の遊女にならざるを得なかった女性たち。外国人に雇われた女中に対する世間の色眼鏡。物乞いをするまでになってしまった没落士族の家の末路。『ばけばけ』は明治時代の闇と、時代に翻弄され、取り残された側の人々の姿を臆せずに描いている。

今週は「月給20円」というヘブンが女中としてトキに払う給金がどれほど破格だったかを描くために、さまざまな「物の値段」と「お金の価値」が描かれた。
トキとフミ(池脇千鶴)がしじみ売りで稼ぐお金が1合2銭、剥き身が4銭。母娘が1カ月かけて仕上げた絵の内職がおよそ50銭。花田旅館の女中・ウメ(野内まる)の月給は90銭。
非正規ではあるが念願の小学校教諭となったサワ(円井わん)の月給が4円。そして、タエが物乞いをして得た1銭玉。対して、ヘブンの英語教師としての月給は100円だ。

■ どれだけ困窮しているか、20円がどれだけ破格であるか
本作で「お金の問題」をきっちりと描く意図について、制作統括の橋爪國臣さんに聞いた。現在の『ばけばけ』の舞台は明治23年。その頃の貨幣価値について橋爪さんは、
「物価に比しての見立てでは、当時の1円が現在のおよそ3〜4万円と言われています。もちろん単純に掛け算をすればいいというわけではなく、今と昔では物の値段のつき方が全然違うので、多少はズレがあるのですが。トキの女中としての月給20円は単純計算すれば現在の60〜80万円、年収にすれば1000万円近くの額です。女性の地位が低く、仕事もなかった当時においては破格です」。

第6週でお金の価値を詳細に描いた意図については、
「今週は松野家も雨清水家もいちばん困窮している時期ですので、ちゃんと『困窮している』ということがわかるように描かなくてはなりませんでした。また、トキの女中としての月給20円が、当時のさまざまな『値段』と比べてどれだけの価値なのかわかるようにしました。歴史資料に記録として残っているものを参考にしながら金額を決めて、人物たちが具体的にその額を台詞で言っています」。

■ お金の価値から見える、人物の生活と生き様
さらに橋爪さんは、「トキをはじめとする登場人物たちは『ばけばけ』という物語のなかで生きています。彼女ら・彼らの生き様や生活感は、お金の価値に深く関わってくると僕は思っています。これだけの仕事をしても、これだけの食べ物しか買えないとか、そうした具体的な描写を通じて、人物たちの生活感がよりリアルに伝わるのではないかと考えました」とコメントした。
第6週のラストシーンで「ヘブン先生の女中になります」と錦織に言ったトキ。次週・第7週「オトキサン、ジョチュウ、OK?」では、どんな展開が待っているのだろうか。
取材・文/佐野華英
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