大人の漫才ができない!? 今年73歳 ザ・ぼんちの魅力…令和も「ボケで笑わせる」を貫く

単独公演「ザ・ぼんち芸道55周年記念単独ライブ~漫才はとまらないッ~」より(10月26日 大阪市内)
連日、大きな笑い声で包まれている笑いの殿堂「なんばグランド花月」(大阪市中央区)。しかし、10月26日に開催された漫才コンビのザ・ぼんちによる単独公演では「なんばグランド花月が揺れた」と表現しても過言ではないほど、笑いのうねりが起きていた。(取材・文/田辺ユウキ)
■ 今年73歳に、全盛期を更新し続ける2人

ザ・ぼんちは1972年、ぼんちおさむ、里見まさとで結成。1980年代の漫才ブームではアイドル的人気を博し、シングルリリースした曲「恋のぼんちシート」(1981年)の大ヒットを受けて日本武道館公演も実現させた。1986年に一時解散したが、2002年に再始動。2025年実施の16年目以上の漫才師を対象とした『THE SECOND~漫才トーナメント2025~』ではグランプリファイナルまで勝ち進むなどし、バラエティ番組にも多数出演。全盛期を更新し続けている。
個人的な話だが筆者も2025年、いろんな芸人のネタを見てきた。そのなかで、涙が出るほど大爆笑したのは『THE SECOND~漫才トーナメント2025~』のグランプリファイナル、そして準決勝にあたる「16→8」でのザ・ぼんちの漫才だった。テレビ中継や配信での鑑賞でそれだけ笑ったので、現場では相当な爆発力だったと思われる。

そんな爆発力を体感できたのが26日の単独公演だった。この日のザ・ぼんちの漫才もまた、2025年の個人的なベストになった。つまり、筆者のベストの上位のほとんどがザ・ぼんちなのだ。

公演を見ていて「どうしてこんなにおもしろいのか」と考えていた。興味深かったのはツッコミの里見の存在だ。近年の漫才は「ボケで笑わせる」というより、「ボケを跳ね返りとしてツッコミで大きく笑わせる」が主流になっている。ボケとツッコミの役割の曖昧化…いや、「ボケの存在とはなにか」と再定義が必要に思える状況になっている。そんななか、ザ・ぼんちは徹底的に「ボケできっちり笑わせる」を貫く。
里見を観察していると、ボケのおさむのパートでどのように笑ってもらえるかにこだわってパフォーミングしているように思える。一方で、おさむは一つのボケがウケたらどんどん乗っていってそれで進めて行こうとするのだが、里見は少しでも客のウケが弱まったように感じたら、スパッと切り上げて次の展開へ運んでいく。状況の見極めが絶妙に上手く、笑いの尻すぼみを起こさせない。だから、ザ・ぼんちのネタは爆笑が途切れない。

あと、おさむのボケの独壇場になっている場面では、里見は絶対に前に出ない。時には一歩引いて腕を組んだりし、おさむの様子を見ている。おさむを泳がせるだけ泳がせて、バテる寸前で次へいく。100%になると電池切れになりかねないが、そうならず、おさむのテンションが常に99.9%のギリギリのラインで持続できているのは、まさしく里見のコントロール術によるものだろう。

ちなみにそういうときのツッコミの言葉の一つに、「(お客に対し)みんな、こんなんよう見ますね。怒ってもええねんで」というものがあった。これほど的確で、マイルドで、客の気持ちにも寄り添い、なによりボケの笑いを打ち消さないツッコミはなかなかないのではないか。
公演のゲストで、おさむとコラボ漫才に臨んだ黒田有(メッセンジャー)は、準備していたネタの通りにはまったくいかず、序盤から自由奔放に振る舞うおさむにタジタジに(なんならコラボ漫才のスタート時も、おさむが「お腹が痛い」とトイレへ行ってしまい、黒田が一人で出てくるはめになっていた)。いきなり「怒ったぞー!」と言い出すおさむに、黒田から「ちゃいますやん!」と本音のツッコミまで飛び出した。そして黒田は「まさと師匠はすばらしい。無理ですもん」と、「猛獣使い」と称される里見の手腕に敬礼した。この黒田の感想が、ザ・ぼんちの漫才の驚異性を象徴的に言い表していた。

もちろん、ザ・ぼんちの漫才の肝であるおさむの暴走ぶりにも触れておかねばならない。若手たちがワードチョイスで勝負する「聞かせる漫才」が増えるなか、台詞を聞き取れなくても笑えるのはおさむにしかできないものである。ザ・ぼんちはまさに「見せる漫才」。そういうおさむのエネルギーがあるからこそ、里見の冷静さが光る。

公演中、暴れ回って笑わせるおさむに、里見が「大人の漫才をしよや」と口にして拍手笑いが起きる一幕があった。ただいつまで経っても「大人の漫才」ができないからこそ、ザ・ぼんちは若手にまじって舞台に立ち、そして新しいネタを作り続けているのだろう。

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