万博マップにない「幻の施設」初公開…もう1つの大屋根リングが存在した

6時間前

迎賓館から大屋根リング、シャインハットが見える(10月15日/大阪・関西万博/Lmaga.jp撮影)

(写真20枚)

『大阪・関西万博』の公式マップに記されていない「幻の施設」が、万博閉幕後の10月15日、メディアに初公開された。その場所は、会場内の最上級施設として、数多くの国内外の賓客をもてなしてきた「迎賓館」。警備上の問題もあり、高い黒塀に囲まれ、これまで目にできなかった施設の全貌が、明かになった。

(10月15日/大阪・関西万博/Lmaga.jp撮影)
一面を黒い壁に覆われた謎の施設の正体は「迎賓館」(10月15日/大阪・関西万博/Lmaga.jp撮影)

施設内では、建物のデザインをはじめ、「大屋根リング」を意識した料理やアート、公式キャラクター・ミャクミャクをイメージした、おもてなしアイテムの数々を見つけることができた。

(10月15日/大阪・関西万博/Lmaga.jp撮影)
アーティスト・川人綾氏による作品が印象的な「ダイニングルーム」。赤を基調とした内装で、最大30名まで利用が可能(10月15日/大阪・関西万博/Lmaga.jp撮影)

■ 監修は建築家・藤本壮介氏。大屋根リングのような回廊&池でVIPを魅了…

東ゾーン・EXPOナショナルデーホール「レイガーデン」と、EXPOホール「シャインハット」の間に位置する同館は、「大屋根リング」を設計した建築家・藤本壮介氏がデザインを監修。

(10月15日/大阪・関西万博/Lmaga.jp撮影)
黒い巨大な箱のような外観が目を引く、万博の迎賓館。各国代表団が使用したレンジローバー、BMWなど、万博仕様の車両も並ぶ(10月15日/大阪・関西万博/Lmaga.jp撮影)

コンクリートがベースのモダンな造りながら、自然光や和素材を取り入れ、「日本の美」が凝縮された空間が魅力。日本の皇族をはじめ、万博会期中に開催された「ナショナルデー」「スペシャルデー」で世界中から訪れた国王4名、大統領24名、首相15名など、賓客を接遇するために約半年で165回使用され、日本文化の発信にも貢献した。

呈茶は表千家・裏千家・武者小路千家が週替わりで担当し、海外VIPらをもてなした
呈茶を表千家・裏千家・武者小路千家が週替わりで担当し、海外VIPらをもてなした(10月15日/大阪・関西万博/Lmaga.jp撮影)

建物は、床面積・約4600平方米の平屋建てで、エントランス横には各国代表団が使用したBMWなど、万博仕様の車両がズラリ。

(10月15日/大阪・関西万博/Lmaga.jp撮影)
エントランスから各部屋をつなぐ回廊&中央の池。円形に見える空が、大屋根リングを彷彿とさせる(10月15日/大阪・関西万博/Lmaga.jp撮影)

館内へ一歩足を踏み入れると、ガラス張りの回廊が広がり、中央の池と1本の柳が一気に非日常空間へと誘う。池上の空、そして水面に映る空が円形に見え、万博の象徴・大屋根リングと呼応するデザインが目を引く。

■ 呈茶のおもてなし、ミャクミャクっぽい特製デザートが好評…貴重なアート作品も

賓客が記帳するレセプションエリア。和紙アーティスト・川原隆邦氏が毎月、日本各地をテーマに制作した作品が展示され、生け花は各流派が季節に合わせた花を展示
賓客が記帳するレセプションエリア。和紙アーティスト・川原隆邦氏が毎月、日本各地をテーマに制作した作品が展示され、生け花は各流派が季節に合わせた花を展示(10月15日/大阪・関西万博/Lmaga.jp撮影)

エントランスのレセプションエリアでは、富山県出身の和紙アーティスト・川原隆邦氏による作品や生け花、松の盆栽がお出迎え。回廊の先には、式典までの控え室として使われた「夢洲」「咲洲」「舞洲」の3部屋が備えられている。

(10月15日/大阪・関西万博/Lmaga.jp撮影)
立派な盆栽が出迎えてくれる(10月15日/大阪・関西万博/Lmaga.jp撮影)

海外VIPの到着時には、三千家が週替わりで呈茶のもてなしも。海外でも大人気の抹茶だけに、各国代表団からの要望は全体の7割にものぼった。

賓客の控え室、3部屋の中で1番広い「夢洲」。窓下部からは日本庭園を望める
賓客の控え室、3部屋の中で1番広い「夢洲」。窓下部からは日本庭園を望める(10月15日/大阪・関西万博/Lmaga.jp撮影)
取材時にもてなしてくれた(左から)「裏千家」今日庵 業躰部の松井宗豊さん、「裏千家」淡交会大阪東市部幹事長の矢野宗瑶さん(10月15日・大阪市内)
取材時にもてなしてくれた(左から)「裏千家」今日庵 業躰部の松井宗豊さん、「裏千家」淡交会大阪東市部幹事長の矢野宗瑶さん(10月15日/大阪・関西万博/Lmaga.jp撮影)

茶道具・なつめは、よく見ると、ミャクミャクを想起させるデザイン。干菓子の色もミャクミャクにちなんでいるといい「みゃくみゃく」という名前がついた。

茶道具・なつめには大阪府の花・うめと大阪市の花・桜をあしらい、ミャクミャク風のデザインとしても楽しめる仕掛けが(10月15日/大阪・関西万博/Lmaga.jp撮影)
呈茶でいただける干菓子はミャクミャクの色をイメージした「みゃくみゃく」
呈茶でいただける干菓子はミャクミャクの色をイメージした「みゃくみゃく」茶碗はさまざまな種類があり、こちらは桜の模様のもの(10月15日/大阪・関西万博/Lmaga.jp撮影)

また、式典後の各国代表団らによる「晩餐会」で使用されたのは、最大30名までのダイニングルーム。日本の国旗に使われている赤を基調としたラグジュアリーな雰囲気で「リーガロイヤルホテル」を運営する「ロイヤルホテル」(本社:大阪市北区)が運営。

1番人気だった「和洋折衷コース」胡麻豆腐から始まり、海老の寄せ蒸し、黒毛和牛フィレ肉のポワレなど、能登と日本各地の野菜も使用(10月15日/大阪・関西万博/Lmaga.jp撮影)
1番人気だった「和洋折衷コース」胡麻豆腐から始まり、海老の寄せ蒸し、黒毛和牛フィレ肉のポワレなど、能登と日本各地の野菜も使用(10月15日/大阪・関西万博/Lmaga.jp撮影)
個人的にも訪れるほど万博が好きになったという「リーガロイヤルホテルグループ」大阪・関西万博事業推進室・料理長の渡部玲さん(10月15日・大阪市内)
個人的にも訪れるほど万博が好きになったという「リーガロイヤルホテルグループ」大阪・関西万博事業推進室・料理長の渡部玲さん(10月15日/大阪・関西万博/Lmaga.jp撮影)

文化や宗教にも配慮した洋食、和洋折衷、「なだ万」による和食(懐石)コースなどが用意され、各国の希望にあわせて提供していた。特に好評だったのは大屋根リングやミャクミャクをモチーフにした特製デザートという。

大屋根リングとミャクミャクがモチーフの特製デザートは季節の果物がたっぷり。春・夏・秋と閉幕日限定の4種が作られた
大屋根リングとミャクミャクがモチーフの特製デザートは季節の果物がたっぷり。春・夏・秋と閉幕日限定の4種が作られた(10月15日/大阪・関西万博/Lmaga.jp撮影

もう一方のバンケットルームは、レセプションなど立食で120人が収容可能。「川島織物セルコン」(京都市左京区)が現代美術家・手塚愛子氏と制作したタペストリーが圧巻だ。

(10月15日/大阪・関西万博/Lmaga.jp撮影)
レセプションなどがおこなわれた「バンケットルーム」(10月15日/大阪・関西万博/Lmaga.jp撮影)

同館と大阪にある国の重要文化財「泉布観」(1871年)をモチーフとして、明治から令和へのつながりをイメージした作品も。敢えて織りきることなく、未完成で縦糸にシャトルを指した状態で表現され、時の流れを感じさせる空間となっている。

現代美術家・手塚愛子さんがデザイン・制作監修した「川島織物セルコン」のタペストリーが空間を彩る(10月15日・大阪市内)
現代美術家・手塚愛子さんがデザイン・制作監修した「川島織物セルコン」のタペストリーが空間を彩る(10月15日/大阪・関西万博/Lmaga.jp撮影)
「泉布観」の周りには「正倉院」、「迎賓館」の周りには「法隆寺」の文様もデザインされ、悠久の歴史やつながりが、敢えて未完成に表現されている
「泉布観」の周りには「正倉院」、「迎賓館」の周りには「法隆寺」の文様もデザインされ、悠久の歴史やつながりが、敢えて未完成に表現されている(10月15日/大阪・関西万博/Lmaga.jp撮影)

■ こだわり尽くしの空間「迎賓館」、今後どうなる…?

今後の同施設の移設などは検討中といい、『2025年日本国際博覧会協会』儀典長の引原毅氏は「この迎賓館は日本の魅力や強みを印象づける役割として成功し、世界の国・地域との外交としても国際的な発信ができた。予定変更などはしょっちゅうで、毎日ギリギリ前夜まで調整を行い、当日の進行にも非常に気を使ったが、165回もの『ナショナルデー』『スペシャルデー』を事故なくやりきることができた」と振り返った。

取材・文/塩屋薫  撮影/Lmaga.jp編集部

184日間を振り返る引原毅儀典長(10月15日/大阪・関西万博/Lmaga.jp撮影)
184日間を振り返る引原毅儀典長(10月15日/大阪・関西万博/Lmaga.jp撮影)
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