万博のパビリオン73館、スケッチで制覇「心躍る半年間だった」

2時間前

大阪市在住の高早翠香さんが約半年で描き上げた、万博パビリオンのスケッチの一部(写真提供:高早さん)

(写真17枚)

4月にスタートした『大阪・関西万博』が今日、10月13日にフィナーレを迎える。会場内には、動画・写真撮影や、スタンプ収集、グッズ購入などさまざまな形で思い出が・・・そのなかにはパビリオンを「スケッチ」という形で残した71歳の女性も。なぜ、今あえてスケッチだったのか?を取材した。

4月の開幕時から描き始め、現地でスケッチし描いたパビリオンは計73館。独自性の高いデザインが特徴的な「タイプA」パビリオンは全て制覇した大阪市在住の高早翠香さん。

3年前からパビリオンのスケッチに挑戦すると決めていたという高早さん。マルタ館にて
3年前からパビリオンのスケッチに挑戦すると決めていたという高早さん。マルタ館にて

◾️「タイプA」パビリオンを全てスケッチで制覇

もともと絵を描いており、普段は水墨画や墨彩画が得意ジャンルという高早さんは、万博開幕から約半年にわたってパビリオンをスケッチしてきた。

そのコツコツ描きためたスケッチを、高早さんの娘さんがSNSの「インスタグラム」や「スレッズ」に投稿したところ反響があり、高早さん自身もSNSで投稿を始めるきっかけに。

通期パスを購入し、連日35度を超える酷暑でも会場に通ってスケッチを続けてきた高早さんだが、そもそもなぜパビリオンを絵に残しはじめたのか。閉幕も迫った10月8日、万博会場内にて高早さんの「インパク(万博に入場すること)」に密着した。

バーレーン館をスケッチする高早さん。「周囲を気にしたら集中が切れる」ということで、いかにスケッチに没頭できるかがコツだとか
バーレーン館をスケッチする高早さん。「周囲を気にしたら集中が切れる」ということで、いかにスケッチに没頭できるかがコツだとか

◾️「パビリオンスケッチ」は3年前から決めていた

──パビリオンのスケッチを始めたきっかけは?

前回(1970年)の万博での思い出が大きいですね。その時は高校生で、友だちとスケッチをした記憶があります。また製材業営んでいた私の父がパビリオンに関わっていて、「受注して出荷した材木がどんなパビリオンの建築に使われたのか、この目で現物を見たかった」と話していて。

その影響もあって、今回の万博では開催時期も参加国も会場のレイアウトも何も決まっていない、3年くらい前から、「絶対に万博パビリオンのスケッチに行こう」と決めていました。

そして全部描くなら短い時間で素早くスケッチする技を習得せなあかん、ということで、大阪メトロの各駅で降りて、その周辺の風景をスケッチする練習を始めて・・・1年ほどかけて全100駅を描いて、万博スケッチに備えました。

スケッチ終わり、チェコの屋上レストランにて。高早翠香さん(右)と娘の真弓さん(写真提供:高早さん)

──3年も前から! 準備段階から凄まじい努力が感じられます。1枚を完成させるのに、どれくらい時間がかかるんでしょうか。

現場では元絵を描いて、家に持ち帰ってから人物を描き加えたり、修正します。そのあとは元絵をコピーをして仕上げるから、そこからは失敗しても気楽なんですよ。

だから現場のスケッチは30分くらいで終わらせるけど、繰り返しコピーしたり修正をするから、仕上げるまでは数時間くらいかかることもありますね。

着色はカラーマーカー「コピック」を使用。現場のスケッチは約30分ほどで書き上げ、残りは自宅で完成させるという
着色はカラーマーカー「コピック」を使用。現場のスケッチは約30分ほどで書き上げ、残りは自宅で完成させるという

──コンパクトチェアも持参されていますが、立ちながら描くこともあるんですね。

パビリオンによっては、立たないと見えないですからね。それは大阪メトロのスケッチでも学んだこと。あと、大屋根リングの上から見るのがいいパビリオン、下から見るといいパビリオンがあるんですよ。

大屋根リングの上から見るのがいいパビリオンのひとつが、ルクセンブルク館だそう
大屋根リングの上から見るのがいいパビリオンのひとつが、ルクセンブルク館だそう

それに外観が映像やプロジェクションマッピングで切り替わるタイプのパビリオンもあるので、写真をたくさん撮っておいて一番キレイに見える写真、いい角度の写真を選んで参考にしてます。

人が多くなってくるとスケッチする場所や写真を撮る場所が確保できなくなるし、夏の間は、陰がある場所を探しながらっていうのも一苦労でしたね。

マルタ館をスケッチする高早さん。このパビリオンは描く場所を確保するのが難しく、立ったまま描いたそう
マルタ館をスケッチする高早さん。このパビリオンは描く場所を確保するのが難しく、立ったまま描いたそう

──これだけパビリオンに向き合っていると、愛着も湧きそうですね。

とにかくタイプAは全部描けたのでよかったです。最初見たとき、「null2」とかどうやって描いたらええんやろと思いました。

どの国のパビリオンも独創的で輝いていましたが、私が一番好きなのはスペイン館。夜のライトアップで、またガラッと雰囲気が変わっていいんですよ。スケッチする時は、手元が明るくないと駄目だから夜はできないんやけどね。

パビリオンの建築美がすごいから、中に入らなくても楽しめるのがすごいと思います。

高早さんの万博パビリオンスケッチの一部
高早さんの万博パビリオンスケッチの一部

◾️ どっぷり万博にはまった心躍る半年間

──(10月8日時点で)今や入場できる人も限られていますが、どれくらい万博に行きましたか?

スケッチ目的の日は25回くらいかなぁ。家族や友だちと来た日も入れると30回以上通いました。

通期パスを買ってるし、「慌てて入らなくてもいつでも予約して入れるわ」って思ってたけれど、すぐに「こらあかんわ、パビリオンも行っとかな!」って思いました。完全予約制のパビリオンから先に行っておいて良かったです。

この万博で学んだことは、「とにかく早く」ですね。人生グズグズしてたら、あっという間。

高早さんはデザインの自由度が高い「タイプA」パビリオンを73棟スケッチした
高早さんはデザインの自由度が高い「タイプA」パビリオンを73棟スケッチした

──タイプAの73棟を描き終えた段階でスケッチはストップしているそうですが、最後にスケッチしたい風景はありますか。

もうスケッチは終わってるんですが、ミャクミャクを描こうかなって。東ゲートは人が多すぎて描けなかったけど、西ゲートにある、寝てるミャクミャク像は近くに陰もできてて描きやすかったので。あとは色を塗って、インスタグラムとスレッズに投稿して終わりです。

投稿のたびに、「熱中症に気を付けてくださいね」「毎回楽しみにしています」など心温まるコメントをたくさんいただきました。どっぷり万博にはまった心躍る半年間でした。

高早さんのこれまでの万博パビリオンスケッチは、インスタグラムのアカウント「@suikou.t」で見ることができるほか、10月30日まで大阪・堺筋本町の和紙・色紙専門店「誠華堂」の店頭に展示されている。

取材・文/つちだ四郎 写真/Lmaga.jp編集部

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