重さ11.75キロ、万博の「重すぎるスタンプ」に込められているのは?

3時間前

「重すぎるスタンプ」はスタンプ用紙のセットも全身を使って行う(2025年7月22日/大阪・関西万博)

(写真7枚)

開催中の『大阪・関西万博』で人気のスタンプ集めのなかで、「異色のスタンプ」として話題になっているのが「重すぎるスタンプ」だ。このスタンプの重さは11.75kg。小学校低学年くらいの子どもでは、ひとりでは押すのが難しい。この万博で最も重いスタンプは、なぜ生まれたのか? 担当者に設置の経緯を聞いた。

「重すぎるスタンプ」が設置してある場所は、西ゲート近くにある白い流線型の建物「サステナドーム」で、筆者が訪れた7月中旬にはスタンプに15組ほどが列を作っていた。スタンプは床置きで、これまでみてきたスタンプの中でダントツに大きい。危なくないようにアクリルパネルで覆われたスタンプの上部には、自転車のハンドルのような両手で握れる持ち手がついている。

(2025年7月22日/大阪・関西万博)
「サステナドーム」内にはファミリーなどを中心に行列が(2025年7月22日/大阪・関西万博)
(2025年7月22日/大阪・関西万博)
こちらには、公式スタンプパスポート対応の通常スタンプも存在している(2025年7月22日/大阪・関西万博)

紙をセットしてスタンプの下に差し込む。厚みのある紙はうまく入れられないので、無料でもらえる専用紙「謎解きMAP」を利用するのがおすすめ。足のマークに合わせて両足を広げてしっかり立ち、11.75kgのスタンプを持ち上げて紙の上に移動。ハンドルをおろすとスタンプが押される。ハンドルをまた持ち上げて元に戻して紙を引き出したら完成だ。

小学5年生がトライ!両足をしっかりひろげて、一人でもスタンプを押せました(2025年7月22日/大阪・関西万博)

このとき、小学5年生と1年生の兄弟がスタンプに挑戦していた。お兄ちゃんは、軽く持ち上げてスタンプを押していたが、弟はなかなか持ち上がらず、お兄ちゃんに手伝ってもらった。ふたりで協力して一緒に押せるスタンプは、万博会場内でおそらくココだけだろう。

小学1年生ひとりには重すぎるので、5年生のお兄ちゃんと力をあわせてスタンプに挑戦(2025年7月22日/大阪・関西万博)

◆ 「子どもたちに楽しく最先端の環境技術に触れてほしい」建設会社の思い

なぜこのようなスタンプを設置したのか。建設会社「鹿島」(東京都港区)の広報担当者に聞いた。

──なぜ万博で「重すぎるスタンプ」を設置されたのですか?

経緯は大きく2つあります。ひとつは「サステナドーム」の建設には、コンクリートの中にCO2を固める特別な技術を用いた最先端のコンクリート「CO2-SUICOM(R)」(以下スイコム)が用いられていることです。弊社を含めた、国や企業50社以上が協力し開発したこのコンクリートに、万博で関連した企画を実施したいという想いがありました。

「重すぎるスタンプ」のある「サステナドーム」(2025年7月22日/大阪・関西万博)

もうひとつはドームが子どもたちにSDGsや環境問題を考えてもらう場であることです。ドームではSDGs、脱炭素、資源循環、自然環境の4つのテーマで、子どもたちを対象にしたさまざまな体験型プログラムが実施されています。このことから、子どもたちに楽しく最先端の環境技術に触れてほしいと考え、スイコムを用いたコンクリートスタンプ、「重すぎるスタンプ」を設置しました。

──コンクリートがCO2を吸い込むのですか?

スイコムは、コンクリートが固まる過程でCO2を吸い込み、コンクリート内部に固定する環境配慮型のコンクリートになります。

──CO2の排出量を削減する新しいコンクリートなのですね。ちなみに、スタンプの重さ11.75kgに意味はありますか?

コンクリートでダムなどの巨大インフラを作るときに、直径15cm、高さ30cmの円柱サンプルをつくり強さなどを試験します。今回はそのコンクリートをスイコムでつくり、印面をつけてスタンプにしました。

完成品の重さを測ったところ、11.75kgとなりましたので、そのままの数字を使っています。なお、このコンクリートの円柱をつくる際に約100gのCO2を中に固定しています。それを含めた重さが11.75kgとなっています。

(2025年7月22日/大阪・関西万博)
11.75㎏の数字が記載されている(2025年7月22日/大阪・関西万博)

──スタンプのコンクリートのなかにCO2が固定されているのですね。そう考えてスタンプを押すと、普通のスタンプとはまた違った気持ちになります。

ドーム内ではスタンプが押せる「謎解きMAP」を配布しており、お持ち帰りいただくことができます。実は、スタンプの印面が謎解きのヒントにもなっています。スタンプは、一人で挑戦するも良し、二人で協力して持ち上げるも良し。力自慢の挑戦者を、お待ちしています。

取材・文・写真/太田浩子

  • LINE

関連記事関連記事

あなたにオススメあなたにオススメ

コラボPR

合わせて読みたい合わせて読みたい

人気記事ランキング人気記事ランキング

写真ランキング

関連記事関連記事

コラム

ピックアップ

エルマガジン社の本