55年前の万博も今も…「スタンプ帳」に夢中、人気の背景は?

大人気となっている「公式スタンプパスポート」、その魅力とは?
「限定スタンプ押すのに2時間並んだ」「今日だけ!」「新しいスタンプありました」…SNSで飛び交う『大阪・関西万博』(会場:夢洲、以下万博)のスタンプ情報。
もしかすると、リピーターを増やしているのは、スタンプのおかげ!?と思うほど、スタンプに情熱を傾ける人々が続出している万博。今回『2025年日本国際博覧会協会』と、企画した「シヤチハタ株式会社(以下シヤチハタ)」(本社:愛知県名古屋市)に取材した。

■デジタルVSアナログなスタンプ、人気なのは?
今回の万博では、気軽にスマホでできるデジタルと、スタンプ帳などが必要なアナログなスタンプがあるが、来場者の様子を見ていると圧倒的に人気は後者。昨今はデジタル化へ移行しているのかと思いきや…だ。
スタンプ帳は、古いパスポート、お気に入りのノートなどを使用する人がいるなか、事前に「公式スタンプパスポート」を準備する人も多い。「エディオンなんば本店」(大阪市中央区)にある『2025大阪・関西万博オフィシャルストア』での6月の商品ランキング(※1)では、スタンプ帳「公式スタンプパスポート」(1100円、以下スタンプパスポート)が1位に。同店来店者の約10人に1人が購入している計算になるそうだ。
振り返れば、1970年の『日本万国博覧会(大阪万博)』でもスタンプ帳は人気を集めた。その際にインクを付けるスタンプ台が必要ないことが、画期的と話題となった「Xスタンパー」。55年の時を経て、改めて注目の的に。

まず、『2025年日本国際博覧会協会』の担当者に現状のスタンプ人気について聞いた。
■万博内外、現在の公式スタンプの数は…?
会場でのスタンプパスポートでの人気について、「想定以上に好調な売れ行きとなっており、会場内各店共に毎月売り上げのランキング上位の商品となっております」と『2025年日本国際博覧会協会』の広報担当者。
現在公式スタンプとして登録されているものは会場内外で213種類。加えて独自でスタンプを作成し、設置しているパビリオンも。非公式スタンプを含めるともはやコンプリートは不可能ではないかというほど。
今後の状況についても、「パビリオン・施設から公式スタンプラリーへの参加希望があれば、増える可能性はございます」と、これからも設置場所が増加しそうだ。
広報担当者は、現地での様子を日々視察するなかで、「お子さんと親御さんがスタンプを一緒に押している姿を良くお見受けします。ご家族で体験を楽しめるのも人気の理由ではないかと。多少のズレやかすれがあったり、押印する場所も人それぞれなので、個々人の想いが詰まった1冊ができていく面白さもあるかと思います」と推測する。

実際、パビリオンを出るときに、必ずスタンプ帳を押印する列ができ、押していない人はほぼいないのではないか?と感じるほど。スタッフが「スタンプは入り口にあるので、押す人は最初に押してください」「ここから出ると、スタンプを押しに戻れません」などの注意を促していることからも、スタンプの場所を聞く人や、押し忘れたから再入館したいという声がかなりあったのではないかと思う。
40代女性の来場者に聞くと、「最初はたまたま持っていた紙に押して、それで満足していたのですが、3回目にして、やはり記念に…と思ってスタンプパスポートを買いました。ついでに、まだ来場していない親戚の分もまとめ買い。スタンプを見つけたら押してしまうので、まだ行ったことがないパビリオンということもありましたが、増えるのはうれしいですね」。
■55年前も人気、今回はどのように進化?
今回、スタンプが気になり出したのは、列ができているほど人気というのもあるが…。調べていくと55年前の万博の際に、スタンプ台がいらない!と画期的なスタイルで「シヤチハタ」の「Xスタンパー」が話題になっていたとのこと。それが今改めて人気とは!
はたして当時とまったく同じものなのだろうか? 何が変わったのだろうか?
その「Xスタンパー」を手がけるのは、創業100年、ハンコでおなじみ文具印章メーカーの「シヤチハタ」。今回の万博で使用されているスタンプや、スタンプラリー人気の背景について、広報担当者に取材した。
万博公式スタンプは、監修元のデザインを極力守りながら、必要に応じて同社がデザインを調整。そして、約3000回も鮮明に押すことができる最新の技術を取り入れた初登場モデルのスタンプを使用。つまり、アナログなスタンプの最先端!
これまで「Xスタンパー」は、会社などの住所印や、ネーム印など事務作業の場で活躍する印象でしたが、「万博の『公式スタンプラリー』という一大イベントに参加することになり、『押したくなる』『持ちたくなる』『楽しい』を創出するデザインを目指しました。また、イベントでのスタンプは記念になりますので、『キレイな印影』にこだわりました」と広報担当者。

スタンプは、子どもはもちろん大人も、キレイに押したいと思うと力みすぎることがある。そのためキレイな印影というのが難しいそう。
「従来の商品は、かけた力がそのまま印面に伝わってしまうので、滲んでしまったり部品の薄い部分が破損したりしていました。今回、内臓のバネを工夫し、印面をー定の力で捺せるようにしましたので、かける力に関わらずキレイに押せるよう工夫をしました」
また、1日に相当な人数が押しているため、インキ切れも気になるところだが、その対策も万全だ。

「カートリッジ式のインキ交換方式を採用し、パビリオンのスタッフの方にも簡単にインキ交換ができる仕組みを取り入れております。また、毎日スタッフが巡回し、スタンプのメンテナンスおよび印影の鮮明さを確認して、インキ交換のタイミングを見定めいています」
つまり毎日、スタッフが巡回し、会場内にある213個のスタンプすべてを確認するということだ。会場の東ゲートから西ゲートまで移動するだけでも約30分と思えば、同社の本気が伝わってくる。
■愛知万博で誕生したスタンプが進化
通常のスタンプ以外にも、今回人気となっているのがスタンプパスポートのみで楽しめる「重ね捺しスタンプ」。その名の通り、スタンプを重ねていくことで、1つの絵が徐々に完成していく。
こちらの前身は、2005年の『愛知万博』に同社が出展した際に、ワークショップで企画した「浮世絵スタンプ」。浮世絵の摺師が、1色ごとに版木1枚を使って色を加えていく工程をスタンプで体験できるというものだった。
「当時、初お披露目となり、来場者の皆様から大変好評いただきました。その後、企業や自治体の各種イベントとも相性が良いことから、改良を重ね、2017年から『重ね捺しスタンプラリー』として受注を開始しています」

その後順調に人気を獲得し、今回の万博でも「重ね捺しスタンプラリー」が登場。葛飾北斎の傑作のひとつ「神奈川沖浪裏」をイメージした構図で、ミャクミャクがサーフィンしているデザインに。色を重ねることで奥行きがある絵とあって、完成した姿がうれしくてSNSに公開する人も。
「大阪・関西万博をきっかけにスタンプラリーに関するお問い合わせも増えています。今回の万博が、当社の技術を多くの方に知っていただく機会となりとてもうれしいです」

■日本人は昔からスタンプ好き!?
それにしても、今、なぜ、スタンプラリーがこんなにも人気なのだろうか? 「シヤチハタ」の見解を聞いた。
「昔から日本国内では、お遍路や御朱印帳など、スタンプをコレクションする文化が浸透しており、その機会が多いことは確かだと思います。
一方、海外からの観光客の方も、大阪・関西万博でスタンプを集めて回ることや、観光地でも御朱印、御城印などをコレクションされている姿をたくさん拝見していると、国内・海外問わず、世界中の方に楽しんでいただけることがスタンプラリーの魅力だと考えています」
訪れた記念を残したいという思いは、室町時代の霊場巡拝にまで遡るという。その後、明治になると「鉄道」と「郵便制度」が導入されることで、各搬送拠点の流通を証明する「消印」を集める“スタンプ収集家”が誕生。その時期に創業したのが「万年スタンプ台」を開発した現シヤチハタの前身「舟橋商会」だ。
1970年の大阪万博で、各パビリオンが独自のスタンプを設置した「スタンプコレクション」。当時絶大な人気を誇り、その際に「シヤチハタ」も「Xスタンパー」で大きく貢献。その後にスタンプラリーという名となり、人気を博していったのだそう。

実際、「シヤチハタ」の調査によると、スタンプの設置箇所が多いと、参加している店への立ち寄りが増えるという結果も出ている。例えば、同じ店舗数の条件のもと、ラリーポイントが5カ所の場合は、4.72件、15カ所であれば、6.07件に。
ラリーを行うことで「知らなかった店を発見」(38.6%)、「入ったことのない店に入った」(35.1%)、「入ったことのないエリアを訪れた」(23.9%)(以上、ラリー参加者による回答)。世界が広がるきっかけになり、ほかにも滞在時間が長くなる、満足度が上がるといった効果も。
そう考えると、知らなかったパビリオンや行く予定がなかった場所に行くきっかけとなり、やはり万博のリピーター率を上げていると思わざるを得ない。
実際、スタンプパスポートの空きページを見ていると、もう少し埋めたいという気持ちになり、さらにはコンプリートしたいという思いへとつながっていく。
■万博のデジタルラリーも、実はすごい!
デジタルスタンプラリーでは、「シヤチハタ」が、デジタルスタンプラリー事業者に、リアルスタンプの印面データを提供しており、同一のデザインを集めることができる。
このデジタルのスタンプは、NFT(Non-Fungible Token=非代替性トークン)という複製不可能なデジタルデータで、写真データのように複製したり、メールなどで送信できないシステムになっている。資産的価値があると言われ、実際にNFTでのアート売買がおこなわれるなど、注目を集めている。

「大阪・関西万博ならではの施策として、リアルのスタンプラリーだけではなく、デジタルスタンプラリーの実施検討を行う中で、近年話題にはなっているが、まだ耳慣れないNFTの周知・普及も兼ねて、導入を決めました」(2025年日本国際博覧会協会・広報担当者)
今回はアプリ「EXPOデジタルウォレット」をダウンロードすればだれでも参加可。スタンプ台の横にあるQRコード(時折、ないパビリオンもある)を読み込めば、ダウンロードできる。
ただ、周囲の万博好きに聞くと、「気づいたことないです。スタンプを押しているときに、QRコードを読み込んでいる人を見たことないような…」。
そこで、知ってほしいのがNFTのメリット。スタンプ帳が必要なく、スタンプ列にほぼ並ぶ必要もなく、行った順番にたまっていくため、どの順序で行ったのかも振り返りやすい。
しかもキャンペーンなどによってアプリ内のポイントが増え、限定グッズが当たる「ミャクミャク☆チャレンジ」に必要な抽選券をもらえることができる。

ただ、他人に見せて会話の糸口になることや、ページが埋まっていくという充実感はない。また、非公式のものは当然NFTが準備されていないので、押したくても押せないというデメリットも。
ちなみに、万博が終わってアプリの更新がなくなった後が気になるが、デジタルスタンプラリー「ミャクーン!」は万博終了後には各社の後継サービスで引き続き閲覧できる予定。
また同様に集めることができる、パビリオン、自治体、企業等とのコラボによるSBTスタンプラリーについては今後利用者への案内があるとのこと。
今後もスタンプ帳と同じように振り返って見ることができるので、もしもスタンプを押すのに並びたくないと思っている場合は、一度試してみてはいかがだろうか。
■今後も進化するスタンプラリー!?
今回、アナログなスタンプの魅力を改めて打ち出した「シヤチハタ」は、デジタル化も進めており、今年春に登場したのは「シヤチハタサウンドスタンプラリー」。
こちらは「音を集める」スタンプラリー。指定のサイトで、音をスマホで読み取ることによって、デジタルのスタンプを入手できる。その場にさえいれば、並ぶ必要がまったくなく、企画側もスタンプ台用のテーブルなどを準備する必要がない。
現在、名古屋鉄道瀬戸線開業120周年を記念して初採用され、駅でのアナウンスを集めることができるとあって好評に。こちらは8月31日まで開催中だ。
技術はさまざまな形で進化しつつ、時代を経ても、現地へ行って集めるという魅力が変わらないスタンプラリー。心を惹きつけてやまない理由について、「シヤチハタ」の担当者はこのように語ってくれた。
「魅力はやはり『思い出が手元に残る』点だと考えています。印影として、訪れた場所や時間が残せる点はもちろんですが、スタンプを押す行為そのものがメモリアルな体験として、体験者の思い出に残ることもアナログのスタンプラリーならではの魅力です。
また、印影の鮮明さやイラストが完成することへのワクワク感もアナログならではだと感じています。特に、大阪・関西万博の公式スタンプは印影がとても繊細に表現されていたり、重ね捺しスタンプラリーを全て集めて完成作品を見るワクワク感があったりと、ご自身で会場内を回って押すことで得られる感動があるのではないかと感じています」
なかには集めることに夢中になりする人を狙って、メルカリなどでレアものスタンプやコンプリートしたセットを販売する人も。ただ手を出す前に、それが、「思い出」になるのかどうか考えて欲しい。
今からでも、スタンプラリーは遅くない!?
そして、もう万博期間も半分を過ぎたとあって、今さら遅いのでは?と思ってしまうかもしれない…。だが、みんなが嬉しそうにいそいそと押す姿を見ていたら、半日過ぎたあたりで欲しくなってくる可能性が高い。
もしも、ご自身が何かしらのコレクター、推し活、御朱印を拝受することに、夢中になった経験があるのであれば、後悔がないようにスタンプ帳の準備をお勧めする。
(※1)2025 大阪・関西万博 オフィシャルストア エディオンなんば本店 ※累計販売数量ベース、すべてミャクミャク関連商品
『大阪・関西万博』
期間:2025年4月13日(日)〜 10月13日(月)
会場:大阪・夢洲
入場料:平日券…大人6000円、中人3500円、小人1500円
夜間券…大人3700円、中人2000円、小人1000円
一日券…大人7500円、中人4200円、小人1800円
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