万博で続出「コーヒーの飲み比べ」、プロが選ぶレアな国は?

6時間前

「UCCコーヒーアカデミー」の学長兼コーヒー博物館の館長・栄秀文さんと万博へ!

(写真27枚)

「これまで飲んだことない味」「まじでうまかった」「制覇が難しい」「コーヒーだけ飲みに行く」とSNSで話題になるほど、「コーヒー」の飲み比べを楽しむ人が続出している『大阪・関西万博』(会場:夢洲)。ブラジルやコロンビアなどは日本でも有名だが、ほかの国は? 国ごとにそんなにも差があるものなのだろうか?

日本はコーヒー消費量世界4位(2021年)と、世界から見てもかなりのコーヒー好きとあって、今回のコーヒーの盛り上がりも納得。万博内ではコーヒーを提供するスポットが数え切れないほど多いが、気になるのは、普段は飲めないレアコーヒーだ。

神戸のコーヒーメーカー「UCCジャパン」が開催するコーヒー教室「コーヒーアカデミー」の学長兼コーヒー博物館の館長・栄秀文さん
神戸のコーヒーメーカー「UCCジャパン」が開催する「コーヒーアカデミー」の学長兼コーヒー博物館の館長・栄秀文さん

今回、神戸のコーヒーメーカー「UCCジャパン」(本社:神戸市中央区)が開催するコーヒーの教育機関「UCCコーヒーアカデミー」の学長兼コーヒー博物館の館長・栄秀文さんに現地でセレクトして、解説してもらった。

(1)サウジアラビア王国:スパイス香るサウジコーヒー

サウジアラビアパビリオンの外観(4月9日撮影)

栄さんが万博だからこそ楽しめるコーヒーとして最も楽しみにしていたのは、「サウジアラビアパビリオン」のサウジコーヒー(デーツ付き。カフェのみの利用も可能)。日本でも飲めるところはほとんどないのだとか。

サウジアラビア館のカフェでコーヒーを淹れる様子
サウジアラビア館のテイクアウト用カフェ「IRTHカフェ」でコーヒーを淹れる様子

館内でスタッフが淹れてくれたのは、なんと黄金色のコーヒー。私たちが知っているコーヒーとは全く見た目も香りも異なり、味の想像がつかない。飲んでみるとカルダモンやクローブなどのスパイスの香りが、コーヒーよりも強く、スパイスの効いたお茶のようだった。

コーヒーとは思えない黄金色が特徴
コーヒーとは思えない黄金色が特徴

作り方も私たちが知っているコーヒーとは異なり、砕いたコーヒー豆をクローブ、カルダモンと20分ほど煮込み、最後にサフランを入れる。豆はかなり浅煎りを使っているのも重要なポイントだそうだ。

サウジアラビアパビリオンのスタッフと!
サウジアラビアパビリオンのスタッフさんたちと!

【栄さん講評】浅煎りのコーヒーにカルダモンやサフランを入れた独特の風味のコーヒー。苦味は弱く、ほのかな酸味の中に甘味を感じる喉越しもスッキリした味わいです。コーヒーはその昔、薬として珍重されていましたが、まさに体に染み渡る感じでした。

サウジアラビアのコーヒー(栄先生&Lmaga.jp調べ)
サウジアラビアのコーヒー(栄先生&Lmaga.jp調べ)

(2)ノルディックサークル:大阪で味わえるのはレア?

ノルディックサークル
ノルディックサークル

北欧で親しまれているスペシャルティコーヒーが味わえるのは「ノルディックサークル」(北欧パビリオン)の3階にあるレストラン。こちらでは2012年に東京へ進出したノルウェーの「フグレンコーヒー」のコーヒーが楽しめる。大阪でも同店のコーヒーが楽しめるとあって、開催前からコーヒー好きの間で驚きの声が上がっていた。

ノルディックサークル2階のカフェ。HAYのインテリアなどが並んでいてオシャレ
ノルディックサークル3階のレストラン。HAYのインテリアなどが並んでいてオシャレ

今回飲んだのはホットのホンジュラス、アイスのケニアの2種類のコーヒー。どちらも浅煎りでフルーティな酸味と香りが際立っていた。

ノルディックサークルのアイスコーヒー(850円)。この日の豆はケニア
ノルディックサークルのアイスコーヒー(850円)。この日の豆はケニア

これらのコーヒーに合わせて楽しめるのは、現地で2〜3月のみ楽しめる「セムラ」や、卵やバターをふんだんに使った「カレリアンピーラッカ」など北欧の軽食類。どちらもコーヒーと相性抜群かつ日本ではなかなか出合えないので、コーヒーと一緒に注文するのがおすすめだ。

北欧で2〜3月のみ楽しめるというスイーツ「セムラ」とともに
北欧で2〜3月のみ楽しめるというスイーツ「セムラ」とともに

カフェのみの利用も可能で、15〜16時はカフェメニューのみ利用可能。アイスコーヒーとシナモンロールはパビリオン前にあるカートでも購入できるのがうれしい。

ノルディックサークルのカフェでコーヒーについて語る栄さん
ノルディックサークルのレストランでコーヒーについて語る栄さん

【栄さん講評】柑橘系の明るい酸味(飲みやすい酸味)が特徴のバランスの良いスッキリとした喉越し。風味も良く口の中にフレーバーが長く残る味わいでした。コーヒー単品でもいけるし、お店でお薦めの北欧スイーツとの相性もばっちりでした!

北欧のコーヒー(栄先生&Lmaga.jp調べ)
北欧のコーヒー(栄先生&Lmaga.jp調べ)

(3)ブルンジ:スモーキーで大人の味わい

コモンズA館にある「ブルンジ」。カヌレパフェが大人気!
コモンズA館にある「ブルンジ」。カヌレパフェが大人気!

東アフリカの内陸部に位置するブルンジ。コモンズA館には「ブルンジ」のテイクアウト専用ブースが設けられている。

ブルンジのコーヒー。かなり濃い色と味わいが特徴
ブルンジのコーヒー。かなり濃い色と味わいが特徴

ここで楽しめるのは深煎りで重厚感のあるコーヒーで、色合いもしっかりとした黒が特徴だ。飲んでみると、ガツンとしたスモーキーな香りや苦味を感じられ、一気に目が醒めるような味わい。午後の眠い時間帯の仕事中などに良さそうだ。そのほか、タイミングが良ければSNSで話題沸騰中のカヌレが乗ったパフェなどのスイーツも楽しめる。

栄さん講評:ガツンとした苦味が強く酸味は弱め、コクがありながらもほのかな甘さを感じるコーヒー。

ブルンジのコーヒー(栄先生&Lmaga.jp調べ)
ブルンジのコーヒー(栄先生&Lmaga.jp調べ)

(4)ボリビア:チャランゴの音色とともに楽しむ一杯

ボリビアのコーヒーを求めて多くの人が列を作っていた
ボリビアのコーヒーを求めて多くの人が列を作っていた

おなじくコモンズA館でゲリラ的にコーヒーを提供しているのは南米「ボリビア」。コーヒータイムの前後にはチャランゴという弦楽器の演奏と歌で訪れた人を楽しませてくれる。こういった音楽やダンスなどの文化、人との触れ合いの時間とともにコーヒーが楽しめるのが万博ならでは。

不定期で振る舞われるボリビアのコーヒー
不定期で振る舞われるボリビアのコーヒー

コーヒーは中深煎りでコーヒーらしいしっかりとした味わいと飲みやすさが両立していて、馴染みのある味わいに感じた。提供は不定期なので、出合えたらラッキー。

ボリビアのスタッフからコーヒーを受け取る栄先生

【栄さん講評】フルボディの赤ワインのような風味とコクがありながら喉越しは良く、ほのかにオレンジのような甘い酸味が感じられるコーヒー。

ボリビアのコーヒー(栄先生&Lmaga.jp調べ)
ボリビアのコーヒー(栄先生&Lmaga.jp調べ)

(5)エチオピア:現地の儀式「カリオモン」を体験

エチオピアでおこなわれている「カリオモン」というコーヒーの儀式の様子
エチオピアでおこなわれている「カリオモン」というコーヒーの儀式の様子

コモンズB館にて不定期でコーヒーを振る舞っているのは「エチオピア」。コーヒー発祥の地で、コーヒー名産地として日本でも馴染みのある国の一つ。

エチオピアでユニークなのは、コーヒーがサーブされる際におこなわれる儀式「カリオモン」が体験できること。現地でもコーヒーを飲む際にはおこなわれている儀式で、女性が担当するのが通例だ。

コーヒー豆を砕く様子
コーヒー豆を砕く様子

エチオピアではコーヒーを飲む際には、豆を焙煎するところからスタートするのが一般的。家のキッチンで豆を煎り、焙煎した豆を砕き、お湯で煮出してコーヒーを淹れているのだそう。

エチオピアのコーヒー。小さいカップがかわいい
エチオピアのコーヒー。小さいカップがかわいい

そしてコーヒーを振る舞うときにはカップとソーサーを使用し、松脂のお香を炊くのもエチオピアの方々が日常的におこなっている「カリオモン」の大切な儀式の一部なのだと、エチオピアパビリオンでコーヒーを振る舞うフレエヒウォット・ブルハネさんが教えてくれた。こちらも提供は不定期につき、出合えたらラッキー。

フレエヒウォット・ブルハネさんと栄先生
フレエヒウォット・ブルハネさんと栄先生

【栄さん講評】ベリー系の酸味と風味がありしっかりとしたコクが感じられ飲み終わったあと、口の中でほのかな甘さを感じるコーヒーですね。

エチオピアのコーヒー(栄先生&Lmaga.jp調べ)
エチオピアのコーヒー(栄先生&Lmaga.jp調べ)

■ 万博で、本当に楽しみたいのは「アウトオブカップ」?

今回、コーヒーの講評をおこなってくれた栄さんは、「味や香りなど、カップの中の話ばかりしがちだけど、『アウトオブカップ』=カップの外でおこなわれるコミュニケーションやセレモニー、食文化、伝統などの素晴らしさも改めて感じることができました。これが体験できるのは万博ならではだと思います」と、コーヒーだけでなく文化や人との繋がりを強く感じ取ったと話す。

コーヒーを淹れる間も音楽や歌で楽しませてくれるのがボリビアならでは
コーヒーを淹れる間も音楽や歌で楽しませてくれるのがボリビアならでは

そして、「原料であるコーヒー生豆から焙煎や抽出の仕方、提供方法に加えて、五感で感じる体験をコーヒーという飲みものを通じて脈々と受け継がれてきており、これからさらに進化していく、ワクワクするようなコーヒーの未来と無限の可能性を感じました」と、これから先のコーヒー文化への期待やワクワクした気持ちを話してくれた。

半日で5つのコーヒーを巡った栄先生。「まだまだ飲みたいコーヒーはあります」とのことでした!

筆者も今回の取材をきっかけに、毎日何気なく飲んでいるコーヒーの背景を思い浮かべるようになった。また、一口にコーヒーといっても世界さまざまであることを知り、これまで以上に深くコーヒーが好きになれたように感じる。紹介したパビリオン以外にも、多くの国でコーヒーが提供されているので、ぜひ気になったパビリオンのコーヒーと、コーヒーを通して感じられる文化やコミュニケーションを体験して欲しい。

「UCCコーヒーアカデミー神戸校」では、8月9日に夏季限定特別イベント『コーヒー好き集まれ!』が実施。コーヒーの基本からおいしいコーヒーの楽しみ方まで、コーヒーのことが幅広く学べるコーヒーアカデミーいち押しのコース「ベーシックコース」(4回コース・2回コース)を、1日限定の体験版としてアレンジして開催される。

取材・文・写真/野村真帆

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