誰袖劇場に陰キャ武士、多彩なキャラにSNS湧く【べらぼう】

7時間前

『べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~』第23回より。松前藩主の弟・松前廣年(ひょうろく)と駆け引きをする花魁・誰袖(福原遥)(C)NHK

(写真7枚)

横浜流星主演で、数多くの浮世絵や小説を世に送り出したメディア王・蔦屋重三郎の、波乱万丈の生涯を描く大河ドラマ『べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~』(NHK)。6月15日の第23回「我こそは江戸一利者なり」では、重三郎の将来の妻・ていが初登場。会う前から重三郎を拒否という異例の状況はもちろん、花魁が仕掛けるハニートラップや、新たな陰キャ武士の誕生にもSNSが湧いた。

■ 蔦重が大ブレイク!日本橋を目指す…第23回あらすじ

蔦屋の出した本が次々に当たり、重三郎は「江戸一の利者」として大人気となる。しかしその勢いは、地方まで広まってないことがわかった。須原屋市兵衛(里見浩太朗)に相談すると、多くの人に助言されたように、日本橋に店を出すことを勧められる。市兵衛は、今日本で一番おもしろい本を作る重三郎が、日本橋から全国に本を売り出すことで、平賀源内(安田顕)が望んだ、本を通じて日の本を豊かにするという願いが叶えられると説く。

『べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~』第23回より。(C)NHK
『べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~』第23回より。書物問屋の主人・須原屋(写真右、里見浩太朗)から日本橋への出店を勧められる重三郎(写真左、横浜流星)(C)NHK

その頃、吉原の常連だった和泉屋(田山涼成)の葬儀で、「吉原者」との同席を拒んだ参列者により、吉原の人々は雨のなか庭に座らされることになった。それを知った重三郎は、「吉原を任せた」という瀬川(小芝風花)の言葉を思い出すとともに、喜多川歌麿(染谷将太)の「どう転んだって、俺だけは隣にいっからさ」という励ましに、日本橋に店を出すことを決意。女将・てい(橋本愛)が売りに出している、地本問屋「丸屋」に目をつけた・・・。

■ 3度目の「主人公の妻」役、橋本愛が初登場

今週の『べらぼう』は、現役の力士(若元春・遠藤・錦木)が登場したり、カモ平こと長谷川平蔵宣以(中村隼人)が久々に登場したりと、なかなかにトピックの多い回だったけれど、やっぱり一番盛り上がったのは、将来の重三郎の妻・ていの初登場! 2018年の『西郷どん』、2021年の『青天を衝け』と、4年ぶり3度目の主人公の妻役となった橋本愛の、ゴツいメガネのビジュアル、凛とした口調、会話にさり気なく『礼記』を引用する博識ぶりという、キャラの立て方がすでに完ぺきだ。

『べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~』第23回より。(C)NHK
『べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~』第23回より。宴会で力士たちと盛り上がる重三郎。写真左から、信濃の豪商・熊野屋(峰竜太)、関取(錦木)、関取(遠藤)、重三郎(横浜流星)、関取(若元春)(C)NHK

ラスト近くのほぼ1分だけという登場ながらも、SNSでは「クセ強メガネ橋本愛ちゃんキター!!」「見える!『メガネ外すと美人』という蔦重の台詞に反応して暴れる『眼鏡過激派』の姿が!」「相変わらず橋本愛さんは声だけでも存在感がすごい」などの大きな反応があったが、蔦屋のせいで店の売り上げが落ちたとか、婿養子の旦那が吉原で散財したなどの恨みから、よりによって「蔦屋にだけは売らん!」という宣言を出してしまった。

『べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~』第23回より。(C)NHK
『べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~』第23回より。店舗の売却について話す地本問屋・丸屋の女将・てい(写真中央、橋本愛)(C)NHK

この思わぬ展開に「ていさん! 初っ端から蔦重嫌いなの!?」「指名拒否」「超マイナス感情から、なぜか夫婦へ。ラブコメの導入としては、完璧」「真のヒロインは主人公への好感度最底辺から始まる。みんな知ってるね」とワクワクする声が上がった一方、重三郎には「なにがあっても側にいる」と宣言する歌麿がいるだけに「既に歌麿が蔦重の女房として完成しているので、正直ここに女が入る隙間なんか全く見えない」「蔦重と歌麿の間にていさんどうやって入り込むん?」と、三角関係の誕生に不安を漏らす人も存在していた。

■ 「誰袖劇場」ハニートラップの実例を目撃

そしてもう一人注目を集めたのが、田沼意知(宮沢氷魚)からの身請けを目指して、松前藩の江戸家老・松前廣年(ひょうろく)にハニートラップを仕掛ける作戦を、本格的に実行に移しはじめた花魁・誰袖(福原遥)だ。今回はいよいよ琥珀の抜荷を持ちかけるものの、廣年は断固として犯罪行為を拒否。しかしそこで涙をホロリと流して、遊び慣れてない廣年の心をコロリと変えてしまうとは、その演技力の高さに震えざるをえなかった。

『べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~』第23回より。(C)NHK
『べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~』第23回より。松前藩主の弟・松前廣年の前で、涙を流して抱きつく花魁・誰袖(福原遥)(C)NHK

SNSでも「藩主の弟の江戸家老におとり捜査をしかける花魁」「気の利いたプレゼントとして原産地限定のジュエリーをあげてしまったのでこんなことに」「叱られて大きな目を潤ませて完璧なタイミングで大粒の涙・・・恐ろしい子」「ハニートラップの実例を地上波で見せてくれる大河ドラマ」「松前廣年をたぶらかす、誰袖劇場お見事でした!」などの、恐怖と称賛が入り混じったような言葉が。

さらに「ぜひいつの日か身請けを・・・」というおねだりを、抱きついた廣年に言ってるフリをして、障子越しに様子を覗き見ていた意知に投げかけるという高度なテクニックの炸裂に至っては「誰袖が意知に送る視線が怖すぎる(誘惑完了のサイン)」「見つめる先は別の人・・・怖いよ」「女の武器を余すことなく使い本命にもしっかり念を押す誰袖、恐ろしい・・・」「意知『ひょっとしてヤバい女と手組んじゃった?』」「しっかり一定の距離を保っていた蔦重大正解!!!」など、大量の冷水を浴びせられたかのような声が寄せられていた。

■ パリピな場に慣れない…陰キャ武士・佐野政言

さて、重三郎を取り巻く対照的な女性2人に混じって、今回新たに注目が集まったのが、かつて田沼意次(渡辺謙)に家系図を献上した佐野政言(矢本悠馬)だ。家系図が捨てられたことも知らず、田沼派が幕府でブイブイ言わせている波に乗れず、思い切って土山宗次郎(栁俊太郎)の宴会に参加してみたものの、立ち振る舞い方がわからずにすごすご帰っていく・・・という、恋川春町(岡山天音)とはまたと違うタイプの陰キャが誕生した。

『べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~』第23回より。(C)NHK
『べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~』第23回より。宴会で紹介される旗本・佐野政言(写真右、矢本悠馬)(C)NHK

この解像度の高い陰キャの立て続けの登場に、SNSも「佐野くーん・・・もう少しグイグイ行こうよ」「流行にも乗れないコネも作れないパリピな場に慣れない、悲しい陰キャ武士」「なんで毎週陽キャの場に馴染めない陰キャが新しく出てくるんだよ」「まさかあのニヤニヤしてた佐野政言が春町先生を超える健気不器用くんとは」「佐野さんみたいな何考えてるかわからないおとなしい人が爆発したら怖いやろ」などの声が。

『べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~』第23回より。(C)NHK
『べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~』第23回より。父・佐野政豊(写真右、吉見一豊)と屋敷の桜を見上げる旗本・佐野政言(写真左、矢本悠馬)(C)NHK

そして視聴者の予想通り、この後佐野さんはとんでもない爆発を見せて、日本の歴史に名前を残すことになるのだけど、そんな彼に重三郎がサラッと声をかける描写が、思いがけない歴史の交錯を見るような思いがした。なにげなく会話を交わした相手が、実は自分たちの運命を大きく変えることになり、そして重三郎はおそらくその人物が、この日背中を押した控えめな武士だったなどと知ることはないと思われる。

この先の歴史を動かす重要人物が、気付かないうちに自分のすぐ隣にいる。支配階級が主役だと、これは割と当たり前の現象だけど、庶民が主役の大河ドラマだと、これほどドラマティックに感じられるのかという発見があった。この先もまた、重三郎にはそういう出会いがポツポツとあると思われるから、引き続き期待していきたい。

大河ドラマ『べらぼう〜蔦重栄華乃夢噺〜』はNHK総合で毎週日曜・夜8時から、NHKBSは夕方6時から、BSP4Kでは昼12時15分からスタート。6月22日の第24回「げにつれなきは日本橋」では、重三郎が江戸の中心・日本橋に店を構えるため、吉原の主人たちも巻き込んで奔走するところが描かれる。なおこの日は選挙特番のため、NHK総合の放送は夜7時14分からスタート。

文/吉永美和子

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