閉館「味園」赤犬メンバーが語る…2階でバー営み地下でライブ

『第68回全日本赤犬歌謡祭 ~さよならユニバース。そして 地球(テラ)へ 』(2025年2月23日・味園ユニバース)
2011年3月にキャバレーとしての営業を終了後、ライブホールとして運営されてきた「味園ビル」地下の「ユニバース」。2024年末で閉鎖となった同ビル2階の飲食店フロアとともに、関西のカルチャーに大きな影響を与え、ライブ終演後にそのまま2階でバー巡りという時間を過ごしたした人も多いことだろう。
多くのアーティストによる名演が繰り広げられてきた「ユニバース」に、最も多く出演したと思われるのが、「エンターテインメントの卸問屋」の異名を持つ大阪の13人組バンド「赤犬」だ。キャバレー営業終了後、最初に「ユニバース」でライブイベントをおこない、定期的にワンマンライブを開催してきたことから、赤犬は、まさにライブ会場としての「ユニバース」の歴史を知る生き証人といえる。

今回は、惜しまれつつ閉館する「ユニバース」と「味園ビル」の魅力を後世に伝えるべく、赤犬メンバーによるトークを前後編でお届け。まずは、「味園ビル」=「レジャービル千日二番街」でバー「マンティコア」を営業していたベース・りしゅうとメインボーカルを務めるタカ・タカアキが思い出話に花を咲かせる。

◆ 2000年代初頭、まだ薄暗かった味園ビルの片隅で…

──今回はりしゅうさんにお越しいただき、2024年末まで営業されていたバー「マンティコア」のお話を中心に伺いたいと思います。本題に入る前に、まず、「マンティコア」との縁も深いという、タカさんとの出会いについて教えていただけますか。
りしゅう: 赤犬メンバーの大半が所属していた大阪芸術大学の軽音楽クラブの先輩・後輩という関係ですね。僕が3年生の時にタカが入学してきました。在学中からよく遊んでいて、もう、かれこれ30年の付き合いですね。
タカ・タカアキ(以下:タカ):軽音部員は、先輩の紹介で大道具のバイトに行くことが多くて、そこでもよく一緒になっていました。

──お二人は、モーニング娘。の応援団体から発展したユニット「恋愛研究会。」にも在籍されていたんですよね。
タカ: そうですね。関西インディーズシーンの中で、誰に求められるでもなく自由気ままなに活動していたのですが、リーダーの劔樹人さんが描いた実録コミック『あの頃。』が一部で話題になりまして。松坂桃李さん主演で映画化されるという、いまだもって謎な現象も起きました。
りしゅう: 僕、コミックには出ているのですが、映画ではカットされて、いないことになってます(笑)。
──そうでしたか!・・・そのお話詳しく聞きたいところですが、今日は「恋愛研究会。」については置いておいて。そんな、りしゅうさんが「マンティコア」をオープンされたのは、タカさんが赤犬に2代目ボーカルとして加入する前ですか?
りしゅう: タカの加入が2010年で、「マンティコア」のオープンが2007年の7月7日だから、店のほうが3年ほど早いですね。

──お店のオープンの前、「味園ビル」にはお客さんとして通われていたということで、いつ頃からでしょうか?
りしゅう: 2004年ぐらいだったかな。僕らの友人で「BABY Q」というダンスパフォーマンスグループを率いていた東野祥子(煙巻ヨーコ)が「CAFE Q」というバーをやっていたので、たまに遊びに行っていました。
「CAFE Q」はほどなくして閉店するのですが、その後、深夜喫茶「銭ゲバ」(現在は味園から約2分の場所に移転)など、今でも付き合いのあるお店が次々とオープンして、頻繁に通うようになりました。当時は針中野に住んでいたので、自転車で30分ぐらいかけて行ってました(笑)。
タカ:僕は2006年ぐらいに「銭ゲバ」に行ったのが始まりですね。
──そんななかでご自身で「マンティコア」を始めようと思ったきっかけは?
タカ:僕は2002〜2005年にアメリカ村の「三ッ寺会館」にあるバーで働いていたのですが、それを見て「タカにできるなら自分にもやれるんじゃないか」と思ったそうですよ。
りしゅう: そんな失礼な言い方してないと思うねんけどなあ(笑)。当時、僕は個人でWeb制作の仕事もやっていて、二足のわらじ状態だったんですけど、ミナミに自分の店があれば作業やお客さんとの打ち合わせに使えるし、夜はそのまま飲めるし、いろいろ便利だなと思ったんです。
◆ 破格の条件で「味園」でバーを開店、店舗を掃除するとまさかの…!?

──当時、2階の入居状況はどのような感じでしたか?
りしゅう:営業していたのは、大昔からやっていたスナックなども入れると40軒中、20軒ぐらいですかね。味園で店をやりたい人が増え始めた時期だったけど、補修が進んでいなかったり倉庫として使っていた店もあったので、貸せる物件は限られていたんです。
僕の場合は、同じフロアで居酒屋をやっていた人が「空き物件出たよ」って教えてくれて。すでに入居している人の紹介ということで、割とスムーズに入ることができました。
──「マンティコア」の前のお店もバーだったんですか?
りしゅう:レコード屋兼バーという感じのお店で、閉店から半月ぐらいしか経っておらず、ほぼ居抜きで入ることができました。ただ、そのお店も長いことやっていたスナックを引き継いで営業していたので、見えないところにうん十年分のゴミが溜まっていて掃除が大変でしたね・・・。でも、床の奥の方から500円玉が10枚ぐらい出てきたので、それはラッキーでした(笑)。
タカ:その頃は、バーだけじゃなくて古着屋なんかもありましたよね。

──入居に際して、制限や条件などはありましたか?
りしゅう:それが全然・・・むしろ逆で、入居時の保証金も不要だし、家賃もエリアを考えると断然格安。改装も自由で退去時の原状復帰も不要という、普通では考えられないような好条件だったんです。だからこそ1年でだめだったらやめて、またWeb一本でやろうと気軽な感じで始められました。
結果的にWebの仕事はフェードアウトして、店だけでやっていくことになったんですけど。まあ、でも最初の頃は客足が伸びなくて、かなり苦労しました。
──とはいえ、「ユニバース」で周年ライブを開催されるなど、「味園ビル」の中では着実に存在感を増していきましたよね。
りしゅう:7周年は『オールスター感謝祭』と題して、赤犬はじめ、オシリペンペンズやDODDODO、佐伯真有美など、普段から仲良くしてもらっている人たちに出演してもらいました。宇多丸さん(RHYMESTER)が赤犬ライブ内のクイズコーナーに出演してくださったのもありがたかったです。

10周年は「バカフェ」(WUJA BIN BINのボーカル・バが東京・中野で経営するカフェバー)と合同で、「ユニバース」での大阪編と「代官山UNIT」での東京編という2本立てで開催しました。
タカ:そして、16周年は「マンティコア」店内での赤犬ワンマンライブという。店内での赤犬ワンマンは2024年12月の暗闇ライブと、あともう1回やってるんですけど、我々がキャパに関係なく、どんな会場でもやれるということを知っていただけたかと思います(笑)。
──ところで、お店のロゴはタカ・タカアキさんがデザインされたそうですが、これはどういう経緯で?
タカ:本当に、その場にあったもので勢いにまかせて書いたんですよね。すぐに気に入ってもらえたので、「いや、ほんまにそれでいいの!?」って驚いた記憶があります(笑)。

りしゅう:僕、一応デザイン学科を卒業してるので、最初は自分で考えてたんですけど、どうもカッコつけてしまうというか、これだ!というものにならなくて。開店準備中にタカが遊びに来た時にお願いしたら、壁紙の裏に刷毛で一発で書いてくれたものがロゴになりました。
──とても力強くて、味のあるロゴですよね。
りしゅう: 個性的ですごく気に入ってるんですけど、おしゃれな感じにはしにくいなぁ・・・と(笑)。とはいえ、閉店まで変えることもなく、グッズにも使わせてもらったんですけど。タカには赤犬加入前からイベントの司会をお願いしたり、お店にバイトで入ってもらったりもして、なにかと世話になっています。
◆ 渋谷すばる主演、映画『味園ユニバース』がもたらしたもの

──赤犬がワンマンやイベント出演など、「ユニバース」でのライブをたびたびおこなうことで「味園ビル」との結びつきも深まり、2015年には渋谷すばるさん主演の映画『味園ユニバース』に本人役で出演されました。この出演は赤犬の活動やりしゅうさん、タカさんの生活になんらかの影響がありましたか?
りしゅう: 店の名前を知ってもらうきっかけになりましたね。「マンティコア」でのシーンは朝5時ぐらいに撮影したんですけど、そういったことも含めて良い思い出です。公開から1年ぐらいは「聖地巡礼」みたいな感じで、すばる君のファンが頻繁に来てくれて、17年間お店をやっていたなかで、その時期が最も忙しかったです。
タカ:僕は特に大きな変化はなかったですね。普段着の時に「赤犬のボーカルです」と言ったらいまだに驚かれるぐらいだし(笑)。でも、あの映画がきっかけで赤犬を知って、今でもライブに来てくれている人がいるのは本当にありがたいことです。普通に考えたら絶対にありえない組み合わせですし。
りしゅう: 赤犬でいえば、過去にインディーズ作品に携わってきたことはあったけど、全国公開の映画なんて初めて。ましてや出演ということもあり、撮影期間中は、みんな少なからず浮足立っていたと思います(笑)。なんにしても活動のターニングポイントになったことは間違いないですね。

(つづき)渋谷すばる、二階堂ふみ…映画のあとも続いた、その後の「物語」
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