大阪の名門ホテルのレガシーとは、135億円大改装に込めた想い

14時間前

「リーガロイヤルホテル 大阪 ヴィニェット コレクション」の人気スポット「メインラウンジ」

(写真11枚)

「賓客を迎えるための迎賓館」として1935年に大阪の地に誕生してから、国賓や皇室、政財界の要人が利用してきた大阪・中之島の老舗ホテル「リーガロイヤルホテル」(大阪市北区)が大改装をおこない、「リーガロイヤルホテル大阪 ヴィニェット コレクション」として、4月1日にグランドオープンした。建て替えではなく、135億円をかけたリニューアルを選択した理由とは?

◆ 創業90年…建て替えを回避し、総額135億円大リニューアル

その理由には、創業から90年におよぶホテルの「歴史の継承」への強いこだわりがあった。その想いは、実際のデザインにどのように反映されたのか。インテリアデザイナーと、新しいホテルの顔となるアートを製作した作家たちとともに、細部までこだわり尽くしたホテル内をめぐった。

「リーガロイヤルホテル 大阪 ヴィニェット コレクション」で細尾真考氏、松浦竜太郎氏、川尾朋子氏にそれぞれ話を聞いた

今回のリニューアルは「日本の伝統美と水の融合」をコンセプトに、約1000室ある客室やメインロビー、レストランなど全面的におこなわれた。デザインを担当した「乃村工藝社 RENS」の代表・松浦竜太郎氏は、「ふたつの川に挟まれた立地とその魅力、日本を代表する建築家・吉田五十八氏の『日本の伝統美』を取り入れた設計を尊重しながら、その関係性を深めたいと考えました」と説明。

緞通「万葉の錦」、柱の鳥模様金蒔絵など、レガシーが多く残る1階レセプション「リーガロイヤルホテル 大阪 ヴィニェット コレクション」

具体的には、メインロビーは新館開業時に敷いてあった緞通「万葉の錦」を復活させ、柱の鳥模様金蒔絵を残す形で、既存の建築を尊重。一方で、レセプションは壁を抜き7メートルセットバックさせ、ゆったりとした空間を生み出した。このレセプションの背景には、金箔のきらめきと伝統的な技法「ふくらし織」が印象的な西陣織の屏風を設置し、おもてなしの心を表現した。

1階レセプション「リーガロイヤルホテル 大阪 ヴィニェット コレクション」
1階レセプション「リーガロイヤルホテル 大阪 ヴィニェット コレクション」

◆ 万博のパビリオン外壁で注目される西陣織の老舗ともコラボレーション

この屏風を製作した西陣織の老舗「HOSOO」(京都市)は、世界的なラグジュアリーブランドとのコラボや、最近では「大阪・関西万博」の「飯田グループと大阪公立大学共同出展館」の外壁にも挑戦しており、そのインパクトも含め話題になっている。

1階レセプション「リーガロイヤルホテル 大阪 ヴィニェット コレクション」
1階レセプション「リーガロイヤルホテル 大阪 ヴィニェット コレクション」

同社の代表取締役社長・細尾真考氏は、「レセプションの屏風は全て繋がるように設計していて、1枚のアートピースになっています。複雑なレイヤー構造になっているので、見る角度や光の当たり方で表情が変わる。150センチ幅が織れる織り機を開発してから、挑戦を繰り返してきた集大成のようなものになった。カーペットの『万葉の錦』と調和させる形で、水の躍動感を表現し、この先50年、100年しっかり残っていくようなものづくりをさせていただいた」と語る。

1階レセプション「リーガロイヤルホテル 大阪 ヴィニェット コレクション」
1階レセプション屏風をじっくり見てみる「リーガロイヤルホテル 大阪 ヴィニェット コレクション」

実際に屏風に近づいてみると、一見織物とは思えないような複雑で立体的な模様が浮かび上がり、金箔の煌びやかさも加わる。遠くから見るのと異なる伝統技法の表情は、日本のラグジュアリーホテルの新しい顔として、堂々とした存在感を放っていた。

◆ リニューアルならではの苦労も…約1000室の異なる寸法の客室

また客室は、川の水面の光の煌めきを表現したカーペットを敷き、ホテルのコーポレートカラーである「ロイヤルグリーン」を基調にまとめられた。水面に浮かぶように置かれたベッドには、手仕事で織られた波打つ織物に表情のあるラインが流れるヘッドボードが設置された。これは書家・川尾朋子氏の水と光を表現した作品の画像を高解像度で転写したもの。筆の動きに緊張感がありつつ、淡い色合いで水辺のくつろいだ雰囲気も感じられる。

ヘッドボードが設置された客室
手仕事のヘッドボードが設置された客室「リーガロイヤルホテル 大阪 ヴィニェット コレクション」

川尾氏の作品を選んだ理由について松浦氏は「水の力や躍動感を表現するのに書は適したものだし、世界からお客様を迎え入れるホテルでは、やはり日本の文化を知ってもらいたかった」と話す。

ヘッドボードは、にじみやかすれが、水を表現「リーガロイヤルホテル 大阪 ヴィニェット コレクション」

川尾氏は「すべての作品にひとつの点が打ってあるんですけど、そこだけが筆が紙に着地している部分で、ほかはすべて空中で筆が動いているときの墨の滴りによってできています。2009年から空中での筆の動きを可視化する『呼応シリーズ』という作品を作っており、ふたつの点を結ぶ空中の動きという意味から、ホテルに滞在して次に行くという、明日や未来への希望を皆さんに持っていただきたいと思い製作しました」と、デザインに込めた想いを語った。

川尾氏が作品を解説「リーガロイヤルホテル 大阪 ヴィニェット コレクション」

松浦氏によると、今回のプロジェクト、難しい部分も多かったそう。実は、1000室ある客室は1室ずつ天井高さや梁の位置、寸法が異なっていたため、360度カメラで全室撮影し1000室分全ての図面をひいたという。それにあわせ、ヘッドボードもすべて異なるサイズで制作するという、苦労もあった。それでも「このホテルの歴史と土地を含めた魅力、日本の伝統文化を、宿泊体験の中で感じていただきたいと、プロジェクトを進めてきた」と振りかえる。

「リーガロイヤルホテル 大阪 ヴィニェット コレクション」
「リーガロイヤルホテル 大阪 ヴィニェット コレクション」の客室

ホテル広報担当者は、「今回のリニューアルで『ロイヤルらしさ』というものがどのように完成するのか、一番気になるところでした。しかし、これまで培ってきたもの、継承して残していくもの、進化していくもの・・・それぞれがバランスよく融合された素晴らしいものになりました。お客様にもとても好評です」と、グランドオープンから1カ月で、すでに手応えを感じていると明かした。

グランドオープンにあたり正面玄関も 「リーガロイヤルホテル 大阪 ヴィニェット コレクション」にかけ替えられた(2025年4月1日)
グランドオープンにあたり正面玄関のホテル名も「リーガロイヤルホテル 大阪 ヴィニェット コレクション」にかけ替えられた

「リーガロイヤルホテル大阪 ヴィニェット コレクション」は、インターコンチネンタルホテルなどを運営するイギリスの大手ホテルグループ「IHGホテルズ&リゾーツ」のブランド「ヴィニェットコレクション」に日本で初めて加入。『大阪・関西万博』やIRなどで盛り上がる大阪における集客を目指している。

取材・文・写真/太田浩子

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