万博で働く日本推しアルトゥルさん直撃「立ち仕事にダイソーのローラー」

11時間前

右が万博のバルトパビリオンで働く日本推しアルトゥルさん。バルト館マスコット、パラビちゃんと今話題の例のミャクミャクもこの時は確かにいた(撮影4月22日、大阪・関西万博)

(写真9枚)

パビリオンに入るとすぐ、『大阪・関西万博』の公式キャラクター・ミャクミャク、きのこがモデルのパラビちゃん、そして気さくなスタッフたちが訪れた人たちを迎えてくれる…そんなラトビアとリトアニアの2カ国共同運営の「バルト館」で働くひとりが、「日本推し」で知られ、約47万人のXのフォロワーを持つ、ラトビア出身アルトゥルさんだ。編集部は彼を直撃インタビュー。

アルトゥルさんのインタビューをお送りする前に、直近の出来事にも触れたい。「ハーブの香りの癒しパビリオン」として、評判になっていた平和なこのパビリオンで、5月16日に冒頭で紹介したミャクミャクが盗まれるという事件が起こる。SNS上に、驚きとともに「早く返して」の声が多数上がった。そんな中、善意の人たちが、バルト館に新たなミャクミャクをプレゼントするという現象が発生。悲しいでき事ながら、「癒しのバルト館」らしい、ほっこりエピソードに今、注目が集まっている。

そんな話題の「バルト館」で働くアルトゥルさん。万博が開幕の4月13日、「我が名はアルトゥル!!!!大阪万博のバルト館でスタッフをしておるもの!!!」とスタッフになったことを知らせるXの投稿に、およそ8.5万の「いいね」が付き、「万博全く興味なかったけど俄然行ってみたくなった!」「万博の人事担当有能すぎるやろ・・・」など歓迎のリプライが相次いだ。「日本推しラトビア人」のアルトゥルさんがどうして万博で働くことになったのか、じっくり話を聞いた。

◆ 倍率は26倍、ラトビアの万博スタッフは狭き門…移住も視野に入れた真剣滞在

右が万博のバルトパビリオンで働く日本推しアルトゥルさんと仲間たち(撮影4月22日、大阪・関西万博)
左から2番目、万博のバルトパビリオンで働く日本推しアルトゥルさんとバルト館の仲間たち(撮影4月22日、大阪・関西万博)

──アルトゥルさんは、万博のバルト館でガイドスタッフをされていますが、ここで働こうと思ったきっかけを教えてください。

きっかけは、自ら応募して、何度も面接受けて、試験に通った・・・という形なんです。なんで応募しようと思ったかというと、私にとってこれは、ずっと楽しみにしてたチャンスなんです。

万博そのものを楽しみに、というのもありますが、こういう風にたくさんの日本の方にラトビア、リトアニアのこと、知ってもらう機会を作りたいとずっと思っていて。こういう文化交流できるのは、めちゃくちゃいいなと。

また、もう1つ理由があって、今まで日本には、観光客としてしか来たことなくて、毎回長くても滞在は2、3ヶ月。だけど、今回は9ヶ月弱滞在できる。いつもSNSに投稿しているネタは、外国人目線で見た日本なので、分かってもらえるかと思うんですが、日本に来るたび「日本ってこんないいところだったんだよね~!」ってなるんですよ。

だから、長く日本にいるとそんなことが全部当たり前になっちゃうのか、それとも、やっぱり長くいても日本はいい!って思えるのか・・・。もしそうだったら、ジョージアから日本に移住してもいいなと思っていて。今はそのお試し期間。9カ月あれば、日本を味わう期間は、充分にあるかと。

──そういう移住計画もありつつの、日本滞在なんですね。ちなみに、このスタッフ募集はどこで見つけられたんですか?

ラトビア政府のラトビア投資開発庁(LIAA)で募集があり、当時ジョージアに住んでいましたが、オンラインで試験を受けました。160人ほど応募があって、6人だけが選ばれたという、非常にコンペティティブな環境だったみたいです。

──ラトビア政府に選ばれし、精鋭6人がここで働いているということなんですね。

そうみたいです。一緒に働くメンバーは、みんな日本語がとても上手で、努力している人ばかり。すごく丁寧に仕事をしていて、一緒に働けるのがとてもうれしいです。

これは、ラトビア人のガイド6人の話ですが、それ以外にもバルト館は、リトアニア人のガイドスタッフ6人、そして業務のスタッフ2名、そして館長というメンバーで運営しています。

パビリオン内には市われるスペースも(撮影4月22日、大阪・関西万博)
パビリオン内には座れるスペースも(撮影4月22日、大阪・関西万博)

◆ バルト館での勤務の疲れを、ダイソーのアイテムで癒やす!?

──実際に万博会場のバルト館で働いてみてどうですか? イメージしてたのと違ったとか、いい部分も悪い部分もあると思うんですけど。

結構ラトビアに期待してたんですよ。このパビリオンできる前から、頑張ってもらわないと困ります、って思って。でもその期待を超えてきました。ラトビア、リトアニア2つの国が、自然がものすごく豊かで、同時にイノベーション、テクノロジー頑張っているよ、っていうことも、しっかり伝わるパビリオンになっていると思います。

自分としては、面接を受けているときから、働くには日本語ペラペラじゃないと、ダメなのかなってやってけないのかなと心配していました。日本の大学で学んでいたスタッフもいるなかで、わたしは独学で日本語を勉強したんです。スタッフの日本語レベルはそれぞれですが、来てくれたみなさんに、しっかり伝えようって毎日みんなと一緒に努力しています。

ラトビア、リトアニアポーズで撮影(撮影4月22日、大阪・関西万博)
ラトビア、リトアニアポーズで撮影(撮影4月22日、大阪・関西万博)

──そうですね。私も回ってみて、バルト館のスタッフみなさん、積極的に話かけてくださって、コミュニケーションをとるのが楽しかったです。

あとは、私が立ちっぱなしの仕事が15年ぶりなので、それがちょっと大変。でも、人間なんてすぐに慣れると思うので、もうすぐこれにも慣れると思いますね。

──立ちっぱなしは確かに大変。今はどのような勤務形態なんですか?

週1か2のお休み以外は、早番7時間、遅番7時間でローテーション勤務です。でも、イベントがあったり、偉い人がくるときは、開館から閉館まで1日中頑張るってことも。そんなとき、足の痛みは、ダイソーで買ったローラーでマッサージして、しっかりケアして・・・癒やされています。

◆「日本のみなさん、自然豊かなラトビア、リトアニアを好きになって!」

アルトゥルさんが、調べながら漢字を含むメッセージを書いてくれた(撮影4月22日、大阪・関西万博)
筆者もアルトゥルさんと一緒に木を植える体験をしてみた(撮影4月22日、大阪・関西万博)

──「アルトゥルさんいますか?」ってバルト館にきてくれる人も多いそうですね。先ほども老若男女たくさんの人と記念撮影をされていました。

会場にたくさんあるパビリオンの中で、わざわざバルト館に来てくれるのがうれしいです。私がいるのをきっかけに来たけど、「バルト館とても良かったよ」って言ってくれる人も多くて。日本のみなさんに、このパビリオンを通じて、自然豊かなラトビア、リトアニアを知ってもらい、好きになってもらいたいです。

アルトゥルさんおすすめのハーブも展示(撮影4月22日、大阪・関西万博)
アルトゥルさんおすすめのハーブも展示(撮影4月22日、大阪・関西万博)

──一方でSNSで、「万博で働くのを知ってがっかり」というような声もあって、落ち込まれたとか。

僕がメロンパン好きだけど、嫌いな人がいるように、考えは人それぞれだとは思います。みんな同じでなくても大丈夫だし、反対する人がいるのも仕方がない。でも、わたしは、各国の人たちと文化交流できる素敵な企画だと思っていて、この万博を推してます。

パビリオンに来た人たちと交流して、「アルトゥルさん、がんばってください」って言ってもらえると、本当にがんばれる。SNSでも勤務予定をアップしていますので、もしも絶対会いたいと思ってくれている人はそちらもチェックしてほしいです。

バルト館は派手な映像があるというわけではないけど、スタッフと一緒に、木を植えたり、メッセ―ジを書いたり、という体験をしましょう。会場でいろいろ見て歩いて疲れた、癒やされたい、というとき、ぜひ来てみてください。

来館したたくさんの人と記念撮影。頑張ってくださいね、と来場者に励まされ(撮影4月22日、大阪・関西万博)
来館したたくさんの人と記念撮影。頑張ってくださいね、と来場者に励まされる一幕も(撮影4月22日、大阪・関西万博)
アルトゥルさんが、調べながら漢字を含むメッセージを書いてくれた(撮影4月22日、大阪・関西万博)
アルトゥルさんが、調べながら漢字を含むメッセージを書いてくれた(撮影4月22日、大阪・関西万博)

今回の滞在中に、大阪や関西でやりたいことや行きたいところ、食べたいものがたくさんあるというアルトゥルさん。実は関西で唯一、滋賀にはまだ一度も足を踏み入れたことがなく、近々訪れてみたいのだとか。これからバルトパビリオンに行く計画をしている人は、アルトゥルさんに関西のとっておき情報を伝えてみては?

また5月20日には、アルトゥルさんの母国ラトビアのナショナルデーのイベントが万博会場各所でおこなわれる。記念式典やパレード、1日限りのワークショップやステージなどを予定。詳細は公式サイトで確認を。

取材・文・写真/Lmaga.jp編集部

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