「歩いてお腹空かせる」意味ある? 専門家のアドバイスもとに検証

「歩いてお腹空かせる」って意味ある? 満腹になったあと、御堂筋を歩いてみた
「お腹空かせたいからちょっと歩こか!」というフレーズを口にしたことはないだろうか。筆者は使いがちなのだが、たとえば飲み会がひと段落したあと、もうちょっと喋りたいと2軒目にくり出そうとするも満腹だな、という時などに使う。
正直なところ、ちょっとした気休めというか自分への言い訳のような感覚で使っているので、その効果はあまり信じていないのだが、実際のところどうなのか? そんな素朴な疑問を「新百合ヶ丘総合病院予防医学センター」の消化器内科部門部長・袴田拓先生にぶつけてみた。
■「お腹を空かせるため歩く」は意味ある? 専門家の見解は
──さっそくなのですが「お腹を空かせるために歩く」というのは、やる意味はあるんでしょうか?
結論から言いますと、有効だと考えられます。
──そうなんですね! それはどういった仕組みで有効なんでしょうか?
まず、「お腹が空く」とは人が食事をし消化吸収し、血糖値が上がったあと下がると、それを脳の視床下部にある摂食中枢が感じ取り空腹を覚える・・・というのが基本的なメカニズムです。
例えばカツ丼などをお腹いっぱい食べて一息つくとすると、その時点ですでに消化吸収活動は始まり、血糖値が上がり始めていることになります。この時、膵臓からインスリンというホルモンが分泌され、筋肉などに糖分の来訪を告げます。
すると筋肉から「GLUT4(グルットフォー)」という分子が糖分を迎えに出てきて、エネルギー源としてどんどん取り込み始めます。そして血糖値はピークを越え次第に下がりだし、一定の範囲に落ち着く頃には空腹を感じ始めるのです。
──なるほど、その「GLUT4」という分子の働きが空腹に関わっているんですね。
そういうことになります。この「GLUT4」ですが、実はインスリンの刺激がなくても活性化し糖分を吸収してくれる場合があります。それが歩行など運動による「筋肉刺激」なのです。
ですので、できるだけ早く血糖値を落ち着かせお腹を空かせたいなら、極論を言うと「歩きながら食べる」のが一番いいのかもしれません(笑)。しかし、それではお行儀が悪いということになりますので、「食べ終わったらすぐに歩き始めましょう」というのが妥当な見解といえるでしょう。
──なるべく早めに歩き始めるのがポイントなんですね! ちなみに、どう歩いたらより実感を得られるのか、コツのようなものがあれば知りたいんですが・・・。
「何分、もしくは何歩以上歩いたらお腹がすくか?」というのは、何をどれだけ食べたか、消化能力、筋肉量などの個人差が影響するため、一概には判断できません。
また、「GLUT4」を刺激するため早歩きで歩けばそれだけ早くお腹がすくかというと、ある程度まではそういう可能性はありますが、あまりにもムキになって早く歩くと交感神経が活発化して消化能力が下がり、逆効果になる可能性もあります。
■ お腹を空かせるため・・・なんばから梅田まで歩いてみた
というわけで、「お腹を空かせるために歩く」というのはどうやら本当に意味のある行動らしい。とはいえ今までも半信半疑ながらやっていた行動なので「ほんま!?」という驚きが強い。ということで、袴田先生が教えてくれた「食べ終わったらすぐ歩く」「無理しない程度に早く歩く」というポイントを抑えて実際に試してみました。

まずは普段と同じシチュエーションを再現すべく、なんばの居酒屋を訪れた。事前に聞いていた「食べ終わったらすぐ歩く」を実行しやすいように、レジ横のカウンター席を確保する。まず最初に、ジンジャーハイボールと里芋のおでんを注文。さらに、ぼんじり、とり天、たこから、ポテトサラダを追加でオーダーした。正直なところ1杯目を飲み干したところで早々に満腹感を覚えていたが、可能な限り普段の飲み会の状態に近づけるためグレープフルーツサワーと出汁割りを追加で頼んだ。

もう充分というほど食べた!と判断したところで、お会計を済ませすぐさま店を出る。ひとまずお店がある南海・なんば駅付近から出発。「無理をしない程度に歩く」というルールを守るため、まずは人が多く混雑した戎橋筋商店街の中を歩いていく。そのまま長堀橋、北浜と順調に歩き続けていくと、その時点で歩き始めて約40分が経過していた。そして淀屋橋に到達。そのころになると、満腹感は置いておいて酔いは醒めてきた。


せっかくだからと歩き進め、梅田に到着したところで終了。距離は約5km、時間にして約1時間11分という長めの散歩となった。なんばから梅田まで歩き終えてみて、苦しいくらいの満腹具合だったお腹がほんの少し余裕を取り戻し、「デザートくらいなら食べられるかな・・・」とまで回復することができたのが率直な感想だ。
劇的な変化ではないものの、これまでなんとなくやってきた行為は決して無意味ではなかったのだと再確認できた。皆さんも、ぜひ2軒目に向かうときは試してみてほしい。
取材・文・写真/つちだ四郎
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