【光る君へ】平安大河ならではの仕掛け、ヤバい兼家ファミリー

『光る君へ』第5回より、道兼(玉置玲央)に手を上げる道長(柄本佑) (C)NHK
吉高由里子主演で『源氏物語』の作者・紫式部(ドラマではまひろ)の人生を描く大河ドラマ『光る君へ』(NHK)。2月4日放送の第5回『告白』では、道長がついに「この家ヤバい」と気づくという劇的な展開の一方で、平安時代ならではの怖美しい演出にも絶賛の声が集まった(以下、ネタバレあり)。
■ 第5回あらすじ「告白」
即位後は、外叔父の藤原義懐(高橋光臣)などの親戚筋だけで周りを固め、理想の政をおこなおうとしていた花山天皇(本郷奏多)。しかし、右大臣・藤原兼家(段田安則)ら高官たちは、それを快く思わなかった。帝の寵愛を受ける藤原忯子(井上咲楽)の懐妊を知った兼家は、関白・藤原頼忠(橋爪淳)、左大臣・源雅信(益岡徹)らと結託。忯子のお腹の子を呪詛するよう、安倍晴明(ユースケ・サンタマリア)に詰め寄る。

一方、兼家の三男・道長(柄本佑)は、兄の道兼(玉置玲央)がまひろの母・ちやは(国仲涼子)を殺害した事実を知り、兼家の前で真実を問い詰める。道兼に「虫けらの1人や2人殺したとて、どうということもない」と言い放たれた道長は、思わず道兼を殴打するが、兼家がその事件をもみ消したことと「道長にこのような熱き心があったとは。これなら我が一族の行く末は安泰じゃ」と喜ばれたことに、呆然とするのだった・・・。
■ 「ヤバい奴」しかいない、兼家ファミリー
父親は出世の手段を選ばなくてヤバい、長兄は父に従順すぎてヤバい、次兄はわかりやすくヤバい。この「ヤバい奴」しかいない藤原兼家ファミリーのなかで、よくこんなにまっすぐ育ったな! と感心するしかない、三郎こと藤原道長。これまではどこか冷めた目で家族を見ていた彼が、まひろから「道兼が母を殺した」という事実を知り、ついに感情をむき出しにする様に、喝采が上がった第5回だった。

まずはまひろの告白を聞いてすぐに我が家に帰って、道兼を問い詰めた道長。道兼はそれをあっさり認めただけでなく、殺した相手を「虫けら」呼ばわりし、その原因を「俺をイライラさせたお前にある」と、とんでもない責任転嫁をする始末。これは道長じゃなくても「殴ってよし!」となるだろうし、実際SNSでも応援する声しか上がらなかった。
「視聴者代表パンチ!」「道兼どこまでも他責の男。『お前がおれを苛立たせるから』と暴力をふるう、DV男の屁理屈と同じじゃないですか」「これ以上下がることないと思っていた道兼のクズっぷりがさらに急降下」などのコメントがあった。
■ 脚本も演出も平安大河ならではの仕掛け
しかしそんな道兼を上回るモンスターっぷりを発揮したのが、やはり父・兼家だった。道兼の凶行を闇に葬ったことを平然と話し、兄弟同士が憎悪をぶつけ合ってるにも関わらず「いいねいいね、そうじゃなきゃ!」と目をギラギラさせるとか、本当に「情」ではなくて「出世の共犯者」意識がないとつながれない家族なんだなあと、なんだかつらい気持ちになってしまった。

SNSでも「道長ブチキレでめちゃくちゃ喜んでる兼家さん、マジで政治マシーン」「親父が怖すぎて道兼のヤバさが相対的にどうでも良くなるの相当だよ」「『我が一族は安泰じゃ』と言葉に出す兼家がヤバいし、良い子の道長の『将来どうなるんだ』って気持ちになる作劇がうま」など、改めて震え上がるコメントが相次いだ。
ほかには、東宮となっている自分の孫を早く即位させるため、ついに帝の后の胎児を呪詛するという、血も涙もない手段にもでた兼家。それを一度は断った安倍晴明だが、部屋の明かりが消えた御簾の向こうに、同じように呪詛を願う上流貴族たちの姿を見る・・・という劇的な演出には、こんな状況なのに思いがけず感動した人も多かったよう。

「平安最強の呪術師が異常なパワハラを受けてる」「灯りを消す事で、御簾の向こうにほかのお偉いさん方が現れる。アイデアがこの時代にしかできないものすぎてかっこよかった」「この演出思いついた人天才だわ」などの、戦慄と賞賛のコメントが並んだ。
当時は今は想像がつかないほど人間の倫理観が低かったことや、使い方次第で効果的な見せ方がいろいろできる御簾がインテリアに多用されていることなど、脚本も演出も平安大河ならではの仕掛けがたっぷり盛り込まれた回だった。ちなみに、この呪詛で寿命が削られることを危ぶんでいた安倍晴明。この時代としては超ご長寿の84歳まで生きたということは、ささやかにネタバレしておこう。
『光る君へ』はNHK総合では日曜・夜8時、NHKBSは夕方・6時、BSP4Kは昼12時15分の放送。2月11日放送の第6回『二人の才女』では、道長と距離を置こうとするまひろが、道長の兄・道隆(井浦新)が主催した漢詩の会で、のちに「清少納言」となるききょう(ファーストサマーウイカ)と出会うところが描かれる。
文/吉永美和子
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