【光る君へ】源氏物語を彷彿する出会い、なのに初回から激震

2024.1.13 14:00

『光る君へ』第1回より、三郎(木村皐誠)に嘘をついたことを悔やむまひろ(落井実結子)(C)NHK

(写真5枚)

平安時代の長編小説『源氏物語』の作者・紫式部(ドラマでの名前はまひろ)の人生を、吉高由里子主演で描く大河ドラマ『光る君へ』(NHK)。1月7日放送の第1回『約束の月』では、主人公に小さな恋が芽生えたかと思うと、一瞬で地獄に叩き落とすという垂直落下な展開に、SNSは早くも騒然となった(以下、ネタバレあり)。

■ 第1回「約束の月」

教養は高いが貧しい下級貴族・藤原為時(岸谷五朗)の娘・まひろ(落井実結子)は、父の講義を横で聞くだけで内容を覚えてしまうほど、利発で勝気な少女。うっかり逃してしまった飼鳥を探しているとき、三郎(木村皐誠)という風変わりな少年と出会い、「自在に空を飛んでこその鳥だ」と諭される。彼こそが時の権力者・藤原兼家(段田安則)の三男で、のちの藤原道長だった。それ以来、2人は待ち合わせては会話を交わす仲になる。

写真左から、母・ちやは(国仲涼子)と話すまひろ(落井実結子、のち吉高由里子)(C)NHK
『光る君へ』第1回より、母・ちやは(左・国仲涼子)と話すまひろ(落井実結子)(C)NHK

為時が東宮の教育係の職を得たため、母・ちやは(国仲涼子)とお礼参りにでかけたまひろだが、三郎との待ち合わせを急ぐあまり、三郎の兄・道兼(玉置玲央)を出会い頭で落馬させてしまう。ちやはの詫びで兼家は引き下がるが、その態度を下男にからかわれたのに激昂し、まひろの目前でちやはを殺害。しかし道兼の父・兼家のおかげで今の役職を得られた為時は、事件を公にすることを断念し、まひろは無念を噛み締めるのだった・・・。

■ 『源氏物語』を彷彿、まひろと三郎の出会い

戦国時代や幕末などの、戦乱の時代を取り上げることが多い大河ドラマ61年の歴史のなかで、平安時代の貴族たちの雅な世界がテーマになるのは、実は初めてのこと。しかも主人公は『源氏物語』という功績は華々しく残っていながらも、その人生も人となりも謎に包まれている紫式部だ。その分作家・大石静の想像力で補足する部分が多くなることは予想されたが、ファンタジー性もバイオレンス性も、こちらの予想を遥かに上回る「想像」を叩きつけてくる第1回となった。

のちの藤原道長である少年・三郎(木村皐誠、のち柄本佑)(C)NHK
のちの藤原道長である少年・三郎(木村皐誠)(C)NHK

まず一番のファンタジーは、日々の暮らしにも困窮するような下級貴族の娘・まひろと、最高権力にもっとも近い場所にいる上級貴族の御曹司・道長が親しくなる可能性は、この時代にはほぼなかったということ。しかし道長が、父や兄たちと違って政に関心を持たず、むしろ庶民の風俗に興味を持っている・・・という性格付けをしたことでクリア。しかも2人を『源氏物語』の光源氏と若紫を彷彿とさせる出会わせ方をさせたことに、SNSは早速色めき立った。

「逃した雀の子を追って、若紫は光源氏と出逢う。マジか、今回の大河、そういう伏線バリバリはりまくる感じでいくのか」「後にまひろが2人の出逢いを物語に忍ばせたのだとしたら、なんと甘酸っぱいことか」「まひろの人生と源氏物語の内容リンクさせてく系かー! おもしろーい! 源氏物語読み返して備えねば」「まひろちゃんと三郎くんの平安ボーイミーツガールだけ延々と見せてくれよ」などの興奮したコメントが並んだ。

■ 初回から辛い展開、しかし逆に物語へは期待

そんな少女漫画的にキュンキュンな逢瀬から一転、まひろの母・ちやはが通り魔的に、しかも三郎の兄・道兼に殺害されるとは、まったく誰も考えていなかっただろう。この瞬間はSNSも「は???? ま???」「えええええっ!!人殺し道兼!!」「展開がショックすぎて言葉も出ない」「思わず『うっそやろお前』っていってまったわ」という、声にならない悲鳴のような言葉で一挙にあふれかえった。

『光る君へ』第1回より、まひろ(落井実結子)の母・ちやは(国仲涼子)を怒りにまかせて刺し殺す道兼(玉置玲央)(C)NHK
『光る君へ』第1回より、まひろ(落井実結子)の母・ちやは(国仲涼子)を怒りにまかせて刺し殺す道兼(玉置玲央)(C)NHK

さらに犯人がハッキリとわかっているのに、相手が直接の雇用主の息子という理由で告発ができないという、現代でもわかり味の深い状況にも、「親の仇は初恋の相手の兄であり、同時にこの家の恩人の息子」「ああ〜これはおとん泣き寝入りするしなかいやつ」「三郎に会いたくて急いでいた自分のせいで母上が殺されて、それをなかったことにされるなんて初回から地獄すぎる」という、胸を痛めたような言葉が相次いだ。

しかし、「こんな辛すぎる展開、もう耐えられない!!」と視聴者はドン引くかと思いきや、意外にもSNSは「さすが大石静。呆気ないほど無慈悲な展開と、ここから始まる仇なのに惹かれ合う苦しみ。期待しかない!」「ラブストーリーっぽい感じで売り出されてて楽しめるか不安に思っていたら、予想を裏切る理不尽さで初回から釘付けになった」など、逆に期待値が上昇したという声の方が数多く上がっていた。

ここ最近の大河ドラマの第1話を振りかえってみても、冒頭からいきなりショッキングな事件を起こしてくることは数多くあったものの、まだ10代にもならない主人公にこれほど残酷なトラウマと因縁を叩きつける展開はなかったように思う。「恋愛と歌にうつつを抜かすお花畑・平安」というイメージを「本当は怖い修羅の世界・平安」に早くも上書きした『光る君へ』、今年も背筋を伸ばして見た方がよさそうだ。

『光る君へ』はNHK総合では日曜・夜8時から、NHKBSでは夕方6時から、BSP4Kは昼12時15分に先行放送。第2回『めぐりあい』では、成人を迎えたまひろが文才をはぐくんでいく姿と、藤原道長の父・兼家が急速に勢力を広げていく様が描かれる。

文/吉永美和子

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