【どうする家康】女狐にふさわしい暗躍、クラッシャー・茶々

2023.11.1 17:00

出陣の算段をしている大名らを横目に冷たい視線を送った茶々(北川景子)(C)NHK

(写真5枚)

古沢良太脚本・松本潤主演で、江戸幕府初代将軍・徳川家康の、厳しい選択だらけの人生を描きだす大河ドラマ『どうする家康』(NHK)。10月29日放送の第41回『逆襲の三成』では、ついに「関ヶ原の戦い」のカウントダウンが開始。それぞれの思惑が交錯するなか、とりわけ茶々の「女狐」にふさわしい暗躍にSNSが震え上がった(以下、ネタバレあり)。

■ どうする家康、大名らを振り回す茶々

大阪城西の丸に入り、政の中心となった家康。しかし、五大老のひとり・上杉景勝(津田寛治)は領地の会津で戦支度を進め、上洛をうながしても黙殺する。さらに家老の直江兼続(TAKAHIRO)に至っては、家康を挑発するような書状を送ってくる始末。茶々(北川景子)の要望もあり、景勝の降伏をうながすために、家康みずからが出陣することになった。

出陣の命を受け取る家康(松本潤)に笑みを浮かべる茶々(北川景子)(C)NHK
出陣の命を受け取る家康(松本潤)に笑みを浮かべる茶々(北川景子)(C)NHK

しかしその隙に、家康を「豊臣家の逆賊」と見なす石田三成(中村七之助)が挙兵。毛利輝元(吹越満)ら有力大名が集まり、茶々の元で打倒家康を誓う。しかしその一方で、茶々から「治部(三成)が勝手なことをして怖くてたまらないから、なんとかしてほしい」という書状を受け取り、思わず笑い出す家康。それは関ヶ原の戦いの、53日前のことだった・・・。

■ 曖昧な実話を放り込む、絶妙なタイミング

家康は戦嫌いな白兎だし、三成は家康と仲良しだし、今年は関ヶ原起こらないんじゃね? という、ありえない妄想をしてしまう状況だった『どう家』。しかし三成は、狂信に近い豊臣秀吉への忠義心と、茶々などが吹聴した陰口から生まれた疑念をこじらせて、前回で家康と決別。そしてこの41回では、周囲の人々の思惑がガソリンとなって、一気に戦の炎が燃え広がりはじめた様子を目撃することになった。

家康を挑発する「直江状」を送った家老の直江兼続(TAKAHIRO)(C)NHK
家康を挑発する「直江状」を送った家老の直江兼続(TAKAHIRO)(C)NHK

まず先陣を切ったのは上杉景勝&直江兼続という、06年の大河ドラマ『天地人』でもおなじみのコンビ。家康をマジで激怒させた「直江状」は、兼続が「うちが戦を起こすとか、意味わからんのですが?」という弁明を皮肉たっぷりに記した書状で、歴史に残る煽りアイテム。そのためSNSも「直江状キターーー!!」「今回もクッソ長!!」「『穏便に事を済ませる』という意識が欠片もない長文」と、まるでアイドル登場並みに盛り上がった。

そして家康が上杉討伐に繰り出した隙を狙い、兵を挙げてしまった三成。しかも家康との架け橋になっていた大谷吉継(忍成修吾)まで、まんまと自分の陣営に引き入れてしまった。そのきっかけが、病(ハンセン病と伝わる)感染の恐れをものともせず、吉継が口をつけたお茶を三成が飲み干すという果敢な行動。有名だけど「いつどこで」などの詳細が曖昧な実話を、ここぞというタイミングで出す『どう家』の得意技(?)が、今回も効果的に炸裂した。

SNSでも「刑部(吉継)の茶のエピソードここにいれるのかよ!」「『うつして治る病なら私にうつせ!』殺し文句だな」「こんな親友の姿を見せられたら西軍に付かざるを得ない」「今週のベストシーン確定」という感動の声が相次ぎつつも、三成の決意には「刑部殿の声も届かない。それほど三成殿の疑念は深くなってしまった」「今年は関ヶ原は起こらないと思ったのに・・・」「三成も家康も、お互いを評価してるが故に戦わざるを得ないのか」という嘆きの声が上がった。

■ クラッシャー・茶々の脅威とも戦わねば

しかし三成の心をもっとも効果的に動かしたのが、茶々からの軍資金の提供だろう。これは資金面の潤いもあるが、「家康討伐に豊臣家のお墨付きが出た」という側面の方が大きい。その一方で家康には、三成を倒すよう打診。両方にいい顔を見せながら、相手の悪口を吹き込んでいき、両者がいがみ合っていくのを他人事のように見物する・・・という、まるでサークルクラッシャーのような手口だ。

毛利輝元(左・吹越満)ら有力大名と共に杯を交わし、茶々の元で打倒家康を誓う三成(中村七之助)(C)NHK
毛利輝元(左・吹越満)ら有力大名と共に杯を交わし、茶々の元で打倒家康を誓う三成(中村七之助)(C)NHK

これにはSNSでも「茶々様、サークルどころか天下をクラッシュさせにきたぜ!」「わずかひと月で治部を動かした覇王の手腕」「家康、茶々が自分を潰したいことも、三成を利用するだけの相手としか見ていないことも全部見切っていますよね」「あの手紙は、市が家康に助けを求めて家康が応えられなかったことを、わざわざ揶揄するやり方」「ガチ黒幕すぎる。家康と同じく乾いた笑いしか出てこない」と震え上がる声が続出した。

この「関ヶ原の戦い」の茶々のスタンスは、三成の暴走に手を焼いたとも、他人事として静観していたとも、影で操っていたとも言われている。この『どう家』の茶々は、「母・市の遺志をついで天下を取る」という強い意志で、みずから計略を練って不穏な状況を作り、最終的に自分がすべてをかっさらうことを狙うという、これまでになく積極的に関わるタイプとなった。三成だけでなく、その後ろにいる茶々の脅威とも戦わねばならなくなった松潤家康、今年の関ヶ原は本当に勝てるかどうか不安になってきた。

『どうする家康』はNHK総合で日曜・夜8時から、BSプレミアムは夕方6時から、BS4Kは昼12時15分から放送。11月5日放送の第42回『天下分け目』では、三成と対決するために西に向かう決意をした家康の姿と、伏見城で戦う鳥居元忠の最期が描かれる。

文/吉永美和子

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