齊藤工監督「窪田正孝さんと芦澤さん、この2人が条件だった」

『スイート・マイホーム』の齊藤工監督(左)と映画評論家・ミルクマン斉藤
◆「お客さんに鍛えられないといけない」(齊藤監督)
──いやあ、あの顔は忘れられません。トラウマものです(苦笑)。
『零落』のとき、監督の竹中直人さんに「ラストシーンの表情は、最低な顔してくれ」って直前に言われたことが、すごく僕の心に残っていて。カメラがそこにあると、どうしてもよそ行きになるじゃないですか。役者を何年やろうが、見られている前提からは逃れられないので。そのとき、「最低な顔」というのはすなわち、人に見せないような部分だと僕は解釈したんです。
で、蓮佛さんにも似たようなお話をしました。各役者さんに言ったかも知れませんね。僕は監督としてのアイデンティティみたいなものはほとんどないので、自分が現場でいいなと思ったことをトレースしていくシステム。竹中さんにそう言われて霧が晴れるような感覚を受けたんで、その言葉をそのままお伝えした記憶がありますね。
──それでもしかし、最低といっても、ある種屈折した母性を感じます。それこそ中川信夫監督の『東海道四谷怪談』(1959年)のラストみたいな。あっちは天上に成仏するんで逆なんだけれども、そういう凄惨を突き抜けた美しさがやはりある。
そういう雰囲気はありましたね。蓮佛さんの表情だったり、子役の磯村アメリちゃんのエンドロール後の表情につながる「なにか」を感じてもらえたらいいなと思いながら構成しましたね。
──それが映画ですもんね。なんでも説明的じゃ面白くない。
そう、そうですね!

──それにしても近年、勢力的に映画撮られてますよね。あれだけ役者として出ていながら、今年は別府短編映画プロジェクトとして、短編映画『縁石 ふちいし』(主演:安部賢一)も控えている。
今、動いている映画が2本あって、実はもうクランクインしてます。その2本が落ち着いたらしばらくはないと思いますね。
──今後、原作モノのオファーも増えると思いますが・・・。
どうでしょうか?今回の映画制作を通していろいろ学ぶことはありました。キャスティングなどもデータ化されて、マーケティングの一種なんだなと。でもこれが日本映画の作り方のひとつということは分かっています。だからこそ今回は、わがままでそれを打ち破りたいと思っていました。
これまでは海外にデータを送って無料で出品できる映画祭があるので、21カ国くらいに送ったんです。自費も含めて半分くらいは現地に行ってそこで映画が拡がっていってました。だけど今回、それがそんなにできなくて。

僕はもっと作品に厳しいお客さんの目線に鍛えられないといけないと考えていて。だからやっぱりマーケティングベースの作品作りの危うさは感じています。モノを作るというクリエイティヴィリティと、情報データ、ロジカルさの良い調和というか、バランスは非常に難しいんだなと。
だからと言って、後ろ向きだけではないんですけど。こういう混乱のなかでこそ時代の危うさみたいなものは感じてるので、なんか良い作品は生まれるんじゃないかな。
──実際、インディペンデントでは面白くてチャレンジングな監督が実際に出てきてるのは工さんもよくご存じなのは知った上で話しますが、そこをもうちょっと商業ベースにのせていく、それこそATGみたいな弱小規模でもセンセーションを巻き起こしたりする、ある種の戦略みたいなもの。そういう団体というか、映画会社が少ないですよね。
今泉力哉さんと城定秀夫さんの『L/R15』(註)みたいな、小さなところでは起きているんですが、俳優組合がないように、日本って結託が下手ですよね。だから日本ではストライキが起きようがないというか。アメリカの方が自己主義なんだけど、こういうときには結託するじゃないですか。
※註:『L/R15』(今泉監督と城定監督がお互いの脚本を提供し合い、R15+のラブストーリーを2本を制作した、異色のコラボによるプログラムピクチャー)
それが日本だと逆で、パッと見た感じでは仲間意識があるようで、実は蓋を開けてみると自分のことしか考えられないというか、一枚岩になれないという脆弱さを感じてしまう。でも、意外とそういう状況だからこそ生まれるものも無くは無いなと。そこに心の拠りどころを持っていくしかないという気がしなくはないですけどね。
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