奈良で古代の甘味料の味覚を再現! 最古のかき氷の味とは?

幻の古代甘味料「甘葛煎(あまづらせん)」の味覚を再現したシロップを使用。平安時代の枕草子に登場する「最古のかき氷」
日本最古のかき氷にかけられた、古代のシロップの味は一体どのような味なのだろうか? 文献上で確認できる最古のかき氷は、平安時代、清少納言の随筆『枕草子』第四十二段「あてなるもの・・・」の「削り氷(ひ)に あまづらいれて あたらしき鋺(かなまり)にいれたる」に登場する「削り氷(ひ)」で、それにかけられたシロップが「甘葛(あまづら)」という古代の甘味料だ。
7月9日、「奈良女子大学」やならまちの飲食店主、「奈良県農業研究開発センター」らでつくる『奈良あまづらせん再現プロジェクト』のメンバーが、幻の古代甘味料「甘葛煎(あまづらせん)」の味覚を再現したシロップを開発したと発表し、一般へのお披露目会を開催した。
■ 砂糖が無い時代に人々を感動させた甘葛煎
甘葛の歴史は古く、平城京の長屋王邸跡から出土した木簡(もっかん)にも記載が残る。菓子に分類され、全国から税として都である平城京や平安京へ納められた貴重品だ。砂糖の登場とともに江戸時代には廃れ、原材料も製造法も分からない幻の甘味料といわれている。
今回、シロップ開発に携わった「奈良女子大学」大和・紀伊半島学研究所、協力研究員の前川佳代さんは、2011年に甘葛煎の再現実験を実施し、2016年から毎年、『奈良女子大学甘葛煎プロジェクト』をおこなっている。原材料は、諸説あるが、厳冬期のナツヅタの樹液(未煎/みせん)と考えられており、それを煮詰めたものが「甘葛煎」になる。
甘葛煎製造には、かなりの人手と労力がかかり、1日かけても約1リットルしか採取できない大変貴重なものだという。「現代で天然ものの甘葛煎を提供するならば、10gで2万円くらい」と前川さん。メロンの糖度14~17度に比べ、未煎(みせん)の糖度は20~28度もあり、非常に甘い。
天然ものは大量生産ができないことから、今回のシロップは、甘葛煎の最大特徴である「とても甘いが口に含んだ時に甘さがスッと消える」味を再現。味わうことで「砂糖が無い時代の古代の人々の感動を多くの人に知っていただけたら」と開発された。

■ 奈良県の特産品「柿」でスッと消える甘さを再現
味の再現に関して、「奈良県農業研究開発センター」の濱崎貞弘さんが甘葛煎の成分分析をおこなって試作。ナツヅタの成分は入っていないが、ショ糖、ブドウ糖、果糖の割合をオリジナルと同じにし、スッと消える甘さはポリフェノールの影響によるものと考え、さまざまなポリフェノールから柿タンニン(柿渋)を使用することで再現に成功したという。
濱崎さんは「柿の専門家」として知られており、「数あるポリフェノールの中で、奈良県の特産品である柿(柿タンニン)で成功したのは奇跡」と力を込める。味覚は再現できたものの、色に関しては、これからも改良を重ねていくという。

会場では、開発された甘葛シロップを使用した、清少納言が口にしたであろう古代かき氷(鋺に入れた削り氷)が来場者に振る舞われた。なかには、子どもの頃に枕草子を読んで以来、憧れ続け、50年越しの夢を叶えたご婦人(50代、大阪府在住)も。「失われた甘味をまさか口にできるとは!思ったよりも甘い。あっさり、さっぱりとした甘み」と感激もひとしおだった。
■ 「甘葛煎」を今後、味わうことができる?
今後について、現時点で一般販売は未定としながらも、プロジェクトメンバーで、古代を楽しめる雑貨とカフェBAR「ことのまあかり」(奈良市)を経営し、古代を体験できる歴史文化イベントを主催する生駒あさみさんは、「お店で前川先生が監修した古代スイーツを提供しているので、削り氷とセットでゆくゆくは提供できたら」とコメント。
また「平城宮いざない館で『平城(なら)のとよほき』というイベントを開催しているので、甘葛という木簡が出ていることから、木簡づくりワークショップと絡めるなど、古代を体感する企画を考えたい」と、さまざまな形での提供を示唆した。
同じくプロジェクトメンバーで、奈良のかき氷店の草分け的存在として知られる「ほうせき箱」(奈良市)の岡田桂子さんは、「(枕草子の甘葛シロップ削り氷の)レギュラー提供は未定だが、イベントを開催して、背景のストーリーとともに提供予定」と語った。
今後の情報については、「ことのまあかり」「ほうせき箱」のツイッターアカウント等で告知予定。さらに、前川さんは、毎年「奈良女子大学甘葛煎プロジェクト」で、天然ものの甘葛煎づくりをおこなっているため、希望者は、ナツヅタを伐採するところから体験することも可能だ。
取材・文・写真/いずみゆか
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