娘を殺された両親と加害者、魂の救済に挑んだアンシュル監督

インド出身のアンシュル・チョウハン監督
娘を殺された元夫婦と、犯行時に17歳だった加害者女性。癒えようもない苦しみにとらわれた3人の葛藤を、「魂の救済」という深遠なテーマで正面から挑んだ問題作『赦し(ゆるし)』。メガホンをとったのは、日本在住のインド人監督であるアンシュル・チョウハン。
長編第2作の『コントラ』(2019年)では、エストニアの『タリン・ブラックナイト映画祭』でグランプリ、北米最大の日本映画祭『ジャパン・カッツ』で第1回大林賞を受賞したが、彼の最新作となる『赦し』では、寓話的なファンタジーだった作風から一変。本格的な裁判劇となった(一部ネタバレあり)。
取材・文/ミルクマン斉藤
「内容は人と人の関係、3人の蠢く関係性」
──今回はこの2作と違った方向性、異なるジャンルの作品で、ある意味びっくりしました。
今回はより商業寄りにしたかったというのもあるのですが、前2作はスケールとして小さかったと思うんです。ただ、今回は法廷劇なので、そうした意味でもスケールが大きくなって。予算も撮影の規模も、撮影日数も少し多くなったので、大きく変わったイメージになるんだと思います。
──なんでも『コントラ』は10日で撮られたとか。
9.5日です(笑)。予算の関係ですよ。
──でも、良い意味で予算に見合わない作品でした。
みんながこの映画を作りたいという一心で作っていたので、そういった意味ではすごく正直な映画になったのだと思います。10日という撮影期間ではテイクがあまり重ねられなかったので、どうしてもワンカットが長くなってしまって。編集はなかなか大変だったんですが、あの映画はあの映画で良かったと思います。

──いや、確かに作品的にはぴったりなんです、あのリズムが。でも今回はカット割りがかなり前2作とは違いますよね。
編集でカット割りが多いような感じになっているんですけど。今回はアングルをいろいろ変えて撮影しています。ズームインしたり、途中でアングルを変えたりしているので、すごく多いカットになってるんですけど、澄子(MEGUMI)の法廷シーンは明らかに長回しでズームインしているって分かるでしょ? その関係で、前作とは違った感覚なんだと思います。
──今回、題材がこれまでの作品と比べて極めてリアリティスティックですよね。日本の少年法、少年犯罪を取り上げられた大きな要因はなんなのでしょう?
特に日本では、少年犯罪やいじめを描く映画ってあまりないですよね。それを取り上げるのは大事なことだなと思ったんです。ただトピックは違うんですけれども、扱っている内容は人と人の関係、3人の蠢く(うごめく)関係性。それを考えると、前作も前々作も同じようなヒューマンドラマなので、そういった意味では違うジャンルという感覚はなかったです。
──なんでも、いつも組んでられる脚本のランド・コルターさんはカナダにお住まいだそうで。
カナダ出身ではあるんですけど、大阪に長いこと住んでいて。難波や梅田はもちろん、大阪のことはなんでも知っています。もし、長い髪でガタイが良くてレザージャケットを着てバイキングみたいに歩いている人がいたら、たぶんコルターだと思います(笑)。
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