「遠吠えしてる方へ」大阪・天王寺動物園の張り紙がキレッキレ

2023.2.2 20:15

話題となった「天王寺動物園」(大阪市天王寺区)の張り紙

(写真12枚)

「残念なお知らせ」という一言とともに、「オオカミの前で鳴き真似をする方が多いですが、仲間の声ではないとバレています。群れはメンバーの声を覚えていますし、格下には返事しないこともあります」と書かれたパネルの写真付き投稿がツイッターで話題に。

これは「天王寺動物園」(大阪市天王寺区)のオオカミ舎に立てられたもので、SNSでは「格下認定(泣)」「オオカミにバレてる時点でおもしろいのに、格下には返事しないって(笑)」「返事してくれるオオカミに対する感謝がより深まる」と、メッセージが心に刺さった人々が次々にコメントし、6.1万いいねがつくなど大きな反響となっている(2月2日時点)。

ツイートしたのは、動物園からすぐ近くの飲食店「あなぐま亭」のスタッフ・泉谷さん(@anagumatei_iz)。このときの状況を聞くと、「この日は、ヤギやキリン、推しのアナグマなどの写真をツイッターに上げながら、ふらふらとオオカミのところまで来たところでした。前からこの看板の存在は知っていておもしろいなと思っていたのですが、なぜかこの日はツイッターに上げてみようという気分になりました」とのことだった。

それにしても「天王寺動物園」の張り紙、キレッキレだな・・・。なぜこのような張り紙をしたのか? オオカミの習性も含め、担当者に詳しい話を訊いた。

新世界のど真ん中にある「天王寺動物園」(大阪市天王寺区)

■「誰得?」な状況が続いていた、オオカミと来園客

──「遠吠えしてる方々へ」という掲示物はどなたが制作されたのでしょうか。

オオカミ担当動物飼育専門員の坪谷が作成しました。2022年8月下旬から掲示しています。

──作ったきっかけは何かあったのですか?

オオカミ舎の前で遠吠えする方が多く、その方々を観察しているとオオカミからの返事を期待しているようでした。しかしオオカミたちは鳴き声だけで群れのメンバーの個体識別ができるので、人の鳴きマネが仲間の声でないのは簡単に分かると思います。

そんなオオカミにとって、寝ているときでも鳴きマネを聞かされるのは若干迷惑そうに見え、オオカミたちがストレスに感じることがあるかもしれません。鳴きマネする人からしても期待の反応が得られない、オオカミからしてもやや迷惑・・・。この「誰得?」な状況を変えたいと、パネル作成を考えました。

「天王寺動物園」のオオカミ

──確かに誰得ですね、それは・・・。鳴きマネをする方って結構いらっしゃるのでしょうか?

老若男女、いらっしゃいます。特に遠足シーズンには子どもたちが大合唱していますよ。ただ、オオカミに興味を持ってくださるのはうれしいですし、遠吠えを聞きたいという好奇心も大事にしたかったので、QRコードで読み込める動画で実際の遠吠えを聞けるようにしました。ついでに私がおもしろいと思った遠吠えに関するプラスアルファな情報もつけました。

──でも張り紙では、ちょっとキレてませんか?

キレてないです(笑)。立地上、大阪近郊からのお客さまが多いのですが、それ以外の来園者の方々にもきっと真意は伝わると思っています!

──改めてオオカミの習性を教えてください。

群れのなかで順位を作って生活しています。繁殖できるのはオスの1位とメスの1位だけなので(まれに2位・3位も繁殖に加わる)、発情期には自分の順位を上げるため激しい闘争をします。遠吠えは群れ内のコミュニケーションにも使われますが、順位が低い個体の遠吠えより高い個体の遠吠えの方が、ほかのオオカミから返事が返ってきます。

天王寺動物園でいうと、「モンモン」というオオカミの遠吠えは独り言になりがちですが、順位の高い「メグ」の遠吠えはみんな返事するので大合唱になりやすいです。

それぞれの性格などがわかりやすい「天王寺動物園」の紹介看板

──遠吠えの反応から群れの順位づけなど観察できるんですね。何度かツイッターで話題になっていますが、その反響は届いてるんでしょうか?

パネルに記載したブログ(動画を埋め込んでいる)のアクセス数は大幅に伸びているので、たくさん興味を持っていただけたのかなと。ただ・・・「天王寺動物園」のロゴマークを入れることを失念したため、ツイッターで拡散された画像だけでは「天王寺動物園」と一目でわからず、副園長から厳しく(!?)指導されました。

──動物園でのこういった張り紙で意識していることがあれば教えてください。

真偽不明の記載はしないように、しっかりエビデンスのある情報を記載するようにしています。でも、事実をそのまま難しく書くだけだと興味を持ってもらえないので、読みやすくわかりやすい表現を心がけていますので、来園の際はぜひ注目してください。

それぞれの性格などがわかりやすい「天王寺動物園」の紹介看板。関西弁にも親しみを感じる

ツイート主・泉谷さん(推し動物はニホンアナグマだそう)は、天王寺動物園の張り紙について、「個々の動物の種としての特徴だけでなく、個体としての性格などもユーモラスに紹介されていたりして、決して知名度が高くないたくさんの種類の動物たちそれぞれがちゃんと主役としてキャラ立ちするように配慮されているので、どこを見ても学びがあります」と魅力を語る。

また「亡くなってしまって今は展示されていない動物の紹介や追悼のポスターなども所々に掲示されていて、ただ珍しい動物を見て楽しんで終わりではなく、命を預かることの重みについても、きちんと考えさせてくれます」と教えてくれた。

「天王寺動物園」は、平日朝9時半〜夕方5時まで、休日は朝9時半〜夕方6時まで営業。ちなみに「あなぐま亭」では月・火・水・金曜のお昼に日替わり弁当を販売しているそうなので、立ち寄ってみては。

  • LINE
  • お気に入り

関連記事関連記事

あなたにオススメあなたにオススメ

コラボPR

合わせて読みたい合わせて読みたい

関連記事関連記事

コラム

ピックアップ

エルマガジン社の本