タクシーの違法停車にチクリ…京都の交通看板「効果は絶大」

2022.10.21 06:45

歩行者が「タクシーを利用しよう」というタイミングでタイムリーに訴える狙いがあるという(四条河原町交差点の歩道側)

(写真2枚)

観光地・京都の交差点に登場した、とある看板がSNSを中心に話題を呼んでいる。小窓が付いた看板には、歩行者側から見える部分に「この窓から見えるタクシーは、違法停車中です」。その裏側にはじろりと睨むような目のイラストとともに「ドライバーさん 違法停車みんな見てますよ」という文言が添えられ、運転手側に働きかける仕様になっている。

このユニークかつ「チクリ」と刺すような看板に、SNSでは「ナイスアイデア!」「京都にしてはドストレートな批判」「めちゃくちゃぶぶ漬けメソッドで笑う」など、称賛とともに「うちの地域にも取り入れてほしい」という声が相次いだ。

看板は、京都市と「NTTデータ経営研究所」(所在地:東京都千代田区)の共同で実証した実験をもとに設置されている。「京都らしい」と皮肉のきいた文言が話題になっているが、あくまで「ナッジ」という人間の心理を巧みに利用し良い行動をうながす手法を取り入れた結果、このような表現になったとか。

■ パトロールが不発に終わり、新たなアプローチに

四条河原町交差点の南東という設置場所は、違法な客待ちタクシーが頻発しているのにくわえ、バス停にも近く、交通量も多いという理由から選ばれた。

違法停車によって走行車線がふさがれると、交通事故や渋滞の原因にもつながり、バス停付近に車両が駐車されることでバスが正しい位置に停車できなくなる可能性も生まれる。

看板の設置により、以前まであった違法停車に関するクレームも減ったという(裏側)

京都市は、これまでも警察やタクシー業界と連携し合同パトロールをおこなうなど、交通ルールの啓発に努めてきた。しかし、効果があるのはパトロールの直後だけで、時間の経過とともに元の状態に戻っていくというふるわない結果に。

原因を追求するうち、「タクシー運転手だけでなく、利用者にも交通ルールに関する働きかけをおこなう必要がある」という結論に達し、ナッジを活用するアイデアにたどり着いたのだという。

■ 違法停車時間が約9割減少

2022年2月上旬におこなわれた検証では、1日あたりの違法停車時間はなんと約9割も減少。看板の効果はてきめんだ。今後も、四条河原町交差点と同じような課題があり、かつ効果が出そうな場所があれば、新たに設置される可能性もあるそう。

これから紅葉シーズンを迎えると、より多くの観光客が訪れるはず。それに伴い「また違法駐車が増加するのでは?」と京都市の担当者に聞いてみると、「定量的なデータが無いためはっきりとは断言できないのですが、これまでと同じく定期的な啓発活動に力を入れていければと思います」とのコメントが返ってきた。

また同市では、渋滞緩和に向け、目的地の最寄り駅付近に車を停車させ、そこからは公共機関を使用する「パークアンドライド」を推奨しているほか、11月下旬には嵐山地区、東山地区で臨時の交通対策を実施する予定だという。

取材・文/つちだ四郎

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