「魂の名演だ」中川大志演じる畠山重忠、壮絶に散る【鎌倉殿】

2022.9.19 20:15

鶴ヶ峰にて。馬上奮戦する重忠(中川大志)(C)NHK

(写真15枚)

三谷幸喜脚本・小栗旬主演で、鎌倉幕府二代執権・北条義時を中心に描く大河ドラマ『鎌倉殿の13人』(NHK)。9月18日放送の第36回「武士の鑑」では、義時の父で執権の時政と、時政の娘婿でもある有力御家人・畠山重忠がついに激突する「畠山重忠の乱」が描かれた(以下、ネタバレあり)。

■ 畠山家の名誉のため…戦い抜くことを決めた重忠

時政(坂東彌十郎)が、三代目鎌倉殿・実朝(柿澤勇人)から討伐の下文をせしめたことで、全面対決を避けられなくなった重忠(中川大志)。義時からの助言で、まずは鎌倉殿に申し開きをするために、わずかな兵を率いて武蔵国を発つが、その間に鎌倉にいた息子・重保(杉田雷麟)が、三浦義村(山本耕史)らに人質にされそうになったことに抵抗したために、討死してしまう。重忠は鶴ヶ峰に陣を構え、臨戦態勢に入る。

自ら望んでこの戦の大将となった義時は、長らく重忠とは敵対関係にあったものの、今は情が移ったという和田義盛(横田栄司)を、仲裁のために重忠の陣に送る。しかし重忠は、「戦など誰がしたいと思うか!」という激しい本音を義盛にぶつけ、それでも畠山家の名誉のためにあえて戦い抜くこと、そして「今の鎌倉で生きるつもりはない」ことを告げる。

鶴ヶ峰・畠山の陣にて。重忠のもとを単身訪れた和田義盛(横田栄司)(C)NHK

やがて戦がはじまり、多勢に無勢でもなんとか持ちこたえる重忠は、戦に不慣れな義時の息子・泰時(坂口健太郎)を狙う作戦に出るが、そこに義時が駆けつけて一騎打ちに。落馬した2人はそのまま乱闘となり、重忠が義時に刃を振り下ろすが、その刃は首から外れ、重忠はそのまま笑いながら戦場を去る。その日の夜、重忠が敗走中に討ち取られたことが、鎌倉殿に報告された。

義時は重忠の首桶を持って、「執権を続けていくのであれば、あなたは見るべきだ」と時政に迫るが、一度も見ることなく去ってしまった。そこで義時は、義弟の稲毛重成(村上誠基)に重忠に謀反をそそのかしたという罪をなすりつけることで、時政の信頼を落とすことに成功。重忠の真の敵と言える時政は、彼があえて生かした義時の手で、政の一線から外されることになった──。

■ 制作陣の並々ならぬ気合いを感じた戦闘シーン

「知勇兼備にして人格清廉」と言われるほど非の打ち所のない武将で、歌舞伎でも善玉キャラとして人気の畠山重忠(ちなみに「見栄えがいい」という記録は、ハッキリとは残ってないそうで・・・)。24歳の若さながらすでに大河ドラマ4度目の登場となる中川大志は、勇ましさは当然ながら、楽器の演奏にムキになるなど、ちょっと天然な要素も入れて、本作屈指の人気キャラにした。

その重忠の勇退となる「畠山重忠の乱」は、中川自身「まさしく自分がやってきた道筋の先に、なんのズレもなく存在する重忠」(公式インタビューより)と言うだけあり、脚本も演出もスタッフワークも全方向から気合の入った「中川大志版・重忠の全部盛り」とも言うべき、名シーンが炸裂する回となった。

武蔵・畠山の館にて。妻のちえ(福田愛依)に「行って参る」と告げる畠山重忠(中川大志)(C)NHK

送り出す妻・ちえ(福田愛依)に自愛に満ちた表情を向けたかと思えば、「戦など誰がしたいと思うか!」と叫ぶ場面では、悲しみと怒りを今までにないほどむき出しに。SNSでも「すげぇ顔だ。入魂すぎる」「ただの『戦は嫌でございます』ではない。古今無双の大力と武勇を誇り、『坂東武者の鑑』といわれた畠山重忠が絶唱するのだ。重みが違う」「魂の叫びに涙が止まらない」などの絶賛の声が。

そして、義時と重忠が一対一の殴り合いとなるクライマックスシーンでは、「本気で殴り合ってるのでは?」というほど鬼気迫った姿に、「こんな泥臭い熱いタイマン、歴史物で見たこと無い!」「兜を外して飛びつき落馬。鎧着用での取っ組み合って殴り合い。すごいものを見せられている」「すさまじすぎて言葉で表現できない」「大河ドラマ史上に残る殴りあい」と、圧倒されたというコメントがSNSに並んだ。

■ とどめを刺さなかった重忠、その思いとは

このタイマンでは、多分誰もが予想した通り重忠の方が勝ち、「戦で負けてケンカで勝った」という状態になるのだが、なぜ重忠は振り上げた刀で、義時を刺さなかったのか? 実質北条家に息子を殺されたようなものなので、復讐として殺害しても、なにもおかしくなかったのだが・・・。

義時(小栗旬)にとどめを刺そうとする重忠(中川大志)(C)NHK

しかしその後、義時が時政を「失脚=政治家としての死」に追いやり、重忠に代わってリベンジを果たすという流れに、「小四郎(義時)は何故次郎(重忠)が自分を殺さなかったのか判っている」「ここで義時くんを殺すと時政パパを止める人がいなくなるから、これからの鎌倉の為にやめたと思ってる。だって畠山重忠だもん」「御家人の間でも冤罪扱い、時政パパ排除の契機を作る、もう今回は実質的に畠山重忠の勝利と言っていいのでは」と納得の声が並んだ。

■ 「次はぜひ主役で」との声があがる中川大志

そして改めて、重忠を演じた中川には「中川大志、魂の名演。記憶に残る畠山重忠でした」「あまりにも貫禄がある。痛いほど想いの伝わってくる表情。周りに負けぬ堂々とした演技。素晴らしすぎる」「中川大志さんの畠山殿メチャクチャ素敵だったし、鎌倉殿見て畠山重忠という稀有な武将がいたことを知りました」など、視聴者からは感謝とねぎらいの言葉が止まらず。

第35回より、時政が武蔵国を我が物にしようとしていると告げる畠山重忠(中川大志)も名演技だった (C)NHK

そして当然ながら、次の五度目の大河は「ぜひ主役で」という声も多数あがっているよう。SNSでは「何年か後、きっとこの枠に主演として帰ってくる人材」「(『真田丸』の)堺雅人さんのように、大河主役へ飛躍して欲しい」「彼に合う主役を早く探してほしい」という願望に混じって、「『大河の主人公は誰が良いか』はたくさん聞いたけど、『中川大志さんにふさわしい大河の主人公は誰か』という話題になるの、やっぱりすごいよね」という、規格外ぶりに感心する言葉もあった。

『鎌倉殿の13人』の放送はNHK総合で毎週日曜夜8時から、BSプレミアム・BS4Kでは夜6時からスタート。第37回『オンベレブンビンバ』では、義時と政子の新体制に対して、時政とりく(宮沢りえ)が平賀朝雅(山中崇)を巻き込んで、反撃の狼煙を上げるさまが描かれる。

文/吉永美和子

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