「キノコはやめろ!」不穏なときこそ…喜劇展開が話題【鎌倉殿】

2022.8.2 07:15

義時の館にて。初に言われたことでショックを受ける頼時(のち泰時・坂口健太郎)に、あるアドバイスをする義時 (C)NHK

(写真10枚)

三谷幸喜脚本・小栗旬主演で、鎌倉幕府二代執権・北条義時を中心に描く大河ドラマ『鎌倉殿の13人』(NHK)。7月31日放送の第29回『ままならぬ玉』では、宿老たちが次々と抜けていき、鎌倉のパワーバランスがジェンガのごとく危うくなっていくのと同時に、随所で三谷らしい笑いが光る回ともなった(以下、ネタバレあり)。

■ 激化する比企と北条の対立…巻き込まれた全成

「十三人の合議制」の1人だった、梶原景時(中村獅童)が誅殺されたのに続き、三浦義澄(佐藤B作)と安達盛長(野添義弘)も病気で相次いで世を去る。そんななか、義時の父・時政(坂東彌十郎)は妻・りく(宮沢りえ)にそそのかされ、頼家(金子大地)の弟で、娘・実衣(宮澤エマ)が乳母をつとめる千幡を跡継ぎにすることを画策。実衣の夫で頼家の叔父・全成(新納慎也)に、頼家の呪詛を依頼する。

一方で頼家は、訴訟をぞんざいに対処したり、台風の被害が出ているにも関わらず蹴鞠にいそしむなど、暗君的な振る舞いが目立っていた。義時は息子の頼時(坂口健太郎)を、頼家と距離を置かせる意図もあり、揉めごとが起こっている伊豆へ派遣。しかしそこを上手く収めてしまった頼時に対して、頼家は自分と同じ「頼」の字を取り上げて「泰時」と名乗るよう命じる。

鎌倉御所・庭にて。孤独感を深める頼家(金子大地)にあることを伝えるせつ(山谷花純) (C)NHK

征夷大将軍に任じられ、正式に二代目鎌倉殿となっても、孤立を深める頼家。側室・せつ(山谷花純)は、頼家の母・政子(小池栄子)のアドバイスに従い「私はただあなたと話がしたいのです。私と一幡をおそばに置いてほしいのです」と素直な言葉をぶつける。それを受けた頼家は、跡継ぎをせつとの息子・一幡に決めるとともに「父上が母上と手を携えてこの鎌倉をつくったように、せつとなら鎌倉をまとめていけるような気がする」と義時に告げる。

さらにそこで、頼家が蹴鞠の師・平知康(矢作俊博)を助けようとして、古井戸に落ちた所を、呪詛の効果を高めるために頼家の髪を手に入れようとしていた、全成が助けに入る。甥と叔父として、改めて膝を突き合わせて話をしたことで、2人は改めて絆を確認。

全成は、御所に仕掛けた呪詛の人形をすべて回収し、実衣に「お前が喜ぶ顔が見たかった」と、呪詛を引き受けた真意を明かす。そうやって2人が笑顔で語らうちょうどその頃、忘れられた1体の人形が、何者かに発見されてしまう──。

■ 三谷幸喜のサービス精神に振り回される視聴者

梶原景時の首桶が大写しとなる衝撃の幕開けから、「鎌倉殿の13人」があっという間に9人まで減ってしまった第29回。しかし重苦しいトピックが多いときこそ、パンチの効いた笑いで視聴者をやわらげる・・・というか、過剰に一喜一憂させるのが三谷幸喜のサービス精神。

SNSでも「たった45分であらゆる感情を揺さぶってくるのが本当にスゴい」「毎度おなじみ感情ジェットコースター」「今日も感情の振り幅が大きすぎ且つ早すぎて、非常に疲れる回だった(褒めてる)」などの言葉が並んだ。

特に反響が大きかったのが、三浦義村(山本耕史)の娘・初(福地桃子)が気になる頼時に、義時が「おなごは大体キノコが大好き」とアドバイスを送ったが、実際は大量のキノコを突き返されたという展開。義時は前妻・八重(新垣結衣)にも大量のキノコを送ってアタックしていたが、実はドン引きされていた・・・という事実を知らないままだったので、この結果に「えっ?!」と本気でビックリしたリアクションを見せた。

義時から「キノコ」というワードが出た瞬間、SNSでは「やめろ! キノコを引き継ぐな!」「小四郎(義時)の恋愛指南を聞いてはだめだー!」などお祭り状態に。

義時の館・庭にて。義時の命で伊豆に向かう頼時(のち泰時・坂口健太郎)、準備を手伝う鶴丸(きづき)、ある文句を言う初(福地桃子)(C)NHK

しかも頼時が頼家からの仕打ちに打ちひしがれる、その目の前にはキノコの山が・・・というシュールな状況に、「シリアスなのにキノコ大量にすんなw」「頼時から泰時への改名よりキノコ返品がショックなのか、この親子」などのツッコミに混じって、「この先、どんなシリアス義時を見ても、その横に『この男は今こんな顔をしているが、女子はキノコが大好きだと信じ込んでいる』というテロップが浮かんで笑っちゃいそう」と、今後の視聴に影響しかねないとの声もあった。

また三浦義澄の最期では、見舞いに来た時政に、義澄が「一緒に行こう!」と迫り、時政が拒否して突き飛ばしたら、そのまま臨終・・・という予想を超えた展開には、「大河の歴史にサスペンスドラマばりの『突き飛ば死』爆誕」「三浦義澄の死に様を北条時政とのコントで締めるとは思わなんだ」「パッパに一緒にいこう言うためだけに最後のエネルギー残してたんだったら三谷キャラの鑑」などの言葉が。

佐藤は三谷作品に対して「(台本で)読んでおもしろいものを映像化したときにきちんと表現できるのか」(公式サイトより)というプレッシャーがかかると語っていたが、見事に強烈なインパクトを残す退場を果たした。

■ 「井戸落ち」は史実通り…実は考え抜かれたシーンだった

これらの笑いのなかでも、最大のクライマックスとなったのが、知康が古井戸に落ちてからの、義時・頼家・全成の一連のやり取りだ。「なにか縄のようなものがないか探せ」「縄のようなものはないが縄はあったぞ!」の流れから、全成が「今お助けします」と言ったはいいが、お経を唱えるだけで「お経はいいから!」と義時に突っ込まれるという怒涛の展開に、SNSでは「コント・井戸に落ちた鎌倉殿を助け出せ!」「井戸の場面がこんなコメディになるとは思わんやん」など、こちらも大きな反響があった。

実はこの井戸落ちエピソードは、鎌倉時代の詳細な記録文書「吾妻鏡」にも記載された史実。この「なんでわざわざこんな記載を?」と思うようなささいな事件に対して、三谷は頼家が(多少コントが入っても)とっさに最善の策を判断できる能力の高さを持ち、決して暗君ではないことの再確認や、全成が良心を取り戻すきっかけにするなど、二重三重の意味を含ませた。

そのうえであえて全体をコントチックに、無心に見ても楽しめる方向に誘導するという、本作のなかでも、実はもっとも考え抜かれたシーンだったと言えるだろう。

全成の館・全成の居室にて。ひとりこもって怪しげなことをしている阿野全成(新納慎也) (C)NHK

■ 「ラスト1秒まで気を抜くな」…来週以降は腹を括って視聴せよ

そしてこの井戸落下事件をきっかけに、頼家がもっと人を信じることを決め、全成は実衣にすべてを打ち明けて仲を深める・・・という大団円だったが、鍛えられた視聴者からは「いい話の流れは不吉の前兆だって大河ドラマクラスタさんが言ってました」「幸せシーンは破滅フラグ」「俺は『新選組!』で学んだんだ。三谷大河で笑いどころがあったら直後にそれを台無しにするような悲劇が起きるんだ」との警告のような言葉が。

そして実際、スタッフロールの後に人形が発見されるシーンが流れるという、フリーフォールのようなラストに「全成と実衣の仲直りにほっこり・・・した後のこのラスト・・・脚本がエグすぎる」「いい話で終わらせないという確固たる意志を感じる三谷脚本」「ラスト1秒まで気を抜くな。私の好きな言葉です」との嘆き節が。

実際に来週以降は、このお笑い回に戻りたいと思うほど、毎週誰かがいろんな理由で抹殺されていくハードモードに突入するはずなので、腹をくくって視聴したい。

『鎌倉殿の13人』の放送はNHK総合で毎週日曜夜8時から、BSプレミアム・BS4Kでは夜6時からスタート。第30回『全成の確率』では、頼家への謀反を疑われた全成と、実衣夫婦の運命が描かれていく。

文/吉永美和子

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