宮沢和史が明かす、THE BOOMの軌跡と自身のロック感

「刃物のように鋭くて、でも笑顔が似合うっていうのがいい。そういうミュージシャンでありたいですね」と宮沢和史
僕はソロでディック・リー作、主演のミュージカル(オペレッタ『ナガランド』1992年)に参加してアジアを一緒に回ったり、全然違う世界に目を向けてみた。そこで急に視野が広くなったんです。ワールドワイドに考えている人が世界にはいるんだ、ってことを知るきっかけになったんですね。舞台自体も刺激的で、これをバンドに持ち帰ったら面白いコンサートができるかもしれない、アルバムを作れるかもしれないって思い始めて。
──そこでできたのが『FACELESS MAN』(1993年8月)。
このときのツアーもミュージカルみたいな演出をしたりして楽しかったですね。そこからですね、僕のロック感がハッキリしてきたのは。ロックはスタイルじゃない、とにかく誰も聴いてないもの、見たことがないものを提供するっていうことなんだって。しかも奇をてらったりしないで。だから、次にいきなりブラジルの音楽に傾倒しても自分のなかではすごく自然でした。

──1994年11月にリリースされたブラジル録音の『極東サンバ』ですね。
そうです。だからいきなり直角に曲がるぐらいバンドの方向が変わるっていうのも、僕からしたら非常にロックだった。誰もついてこれないようなスピード感でどんどん新しいものを提供していく。しかも、日本人が1回も作ったことないもの、というのがいつしか自分のスタイルっていう感じになってたんですね。
──なるほど。
結果として『極東サンバ』はTHE BOOMで一番売れたアルバムになりました。正直言って、そのときはたくさんのファンの方が離れていったと思います。そもそも、その前に僕が沖縄と出会って三線を手にしたときに多くのファンが離れていました。「宮沢、どうしちゃったんだ?」って言われたりして(笑)。でも、そうやって新しいことをやっていくことに迷いはなかったですね。『風になりたい』(『極東サンバ』収録)もリオに初めて行って作った曲です。
──ブラジル音楽もアフリカ音楽もアジアの音楽もすべて「ワールドミュージック」と十把一絡げにされることも多かったなか、宮沢さんが日本のポップ・ミュージックの目線から丁寧にアプローチしていたのはとても意味があったと思いますよ。
当時、レコード会社がよくあの作品の制作を許してくれたなあって思いますけどね(笑)。「CBSソニー」(当時)の僕らの担当ディレクターの上原(英二)さんが、本当に僕を信頼してくれていて。「ミヤがいいと思っているものを作ればいい」「のびのびやってくれたら、あとは俺がなんとかするから」っていつも言ってくださっていて。デビュー当時から面倒を見てくれていた上原さんと出会ってなければ、僕はこんなに音楽の旅をしていなかったと思います。
最初はシングルじゃなかった『島唄』がヒットする流れも支えてくれたし、次はもっと違うところに行こうっていうようなディレクションも一緒に考えてくれた。結果として売れましたけど、CDが売れようが売れまいが関係ない、とにかくこの音楽は絶対新しいはずだって信じられた。
■「残りの人生、音楽を楽しくやっていきたい」(宮沢和史)

──そしていつのまにか、周囲からは「宮沢さんは次に何をしてくれるだろう?」という期待が募るようになっていました。
そうなんです。THE BOOMの過去の曲を聴きたい人もいれば、全く新しいことを求めてくる人もいる。その両方の方々の思いに応えようとすると結構大変なんですよね(笑)。でも、そうやっていくつかのチャレンジをしていくなかで、前ほどもう疲弊しなくなったというか、気持ち的に自分のやりたいことをマイペースにやっていこうと思えるようになったんです。
──そんななか『極東サンバ』に続いて『TROPICALISM −0°』(1996年7月)を発表されます。
この2枚はとても気に入ってまして、僕自身すごく手応えがありました。ただ、一方でバンド内は混沌となっていて。アルバムのゲスト参加者も多いし、コンサートも最大16人がステージに立ったりして、そのなかでメンバー4人それぞれの居場所を見つけていたと思います。
実際、みんなすごい一生懸命やってくれていました。けれど、やっぱりどうしてもそのもう一歩先を行こうとしたときに無理が出てきそうで・・・。それでソロ・アルバムを作るようになったんです。
──ロンドン録音の『Sixteenth Moon』(1998年3月)と、ブラジル録音の『AFROSICK』(1998年7月)ですね。
そうです。『AFROSICK』は僕以外全員ブラジルのミュージシャンで制作する環境でした。その2枚のアルバムを発表するためのコンサートツアーを経て、1998年にTHE BOOMは再始動したんですけど、ブラジル音楽の指向をさらに進め、やりたいことを再現するために2006年にGANGA ZUMBAを結成することになるんです。ただ、そのあとにヘルニアになって活動ができなくなって・・・。GANGA ZUMBAにせよTHE BOOMにせよ誰も作ったことない音楽をやっていく自信がなくなってしまったんです。で、THE BOOMも解散し、2016年にはしばらく歌手活動をやめたんですね。そのときは音楽から完全に離れたんです。
註釈:「GANGA ZUMBA」=宮沢が主体となってブラジル出身のミュージシャンや高野寛らと結成した音楽グループ。
──歌手活動から離れていた1年ほどの間、どのような毎日を過ごされていたのですか?
そもそも音楽を聴かないし、ギターもひかない。本当にそういう毎日でした。ただ、2017年になったら少し余裕も出てきて、また歌えるかなって思えるようになりました。そのあたりから、自分がやりたいことだけじゃなく、これまで自分が歌ってきた人気のある曲とかヒット曲を聴かせてあげたいなって思うようにもなったし、自分も歌いたいなと思うようになって・・・。
今はもう残りの人生、音楽を楽しくやっていきたいという気持ちです。何も背負わずに楽しく気持ち良く歌う。急に何か新しいものを提示して勝負に出るみたいなことはないかもしれないですけど、そのぶん気持ちよく歌っていきたいと思っています。
■「刃物のように鋭くて笑顔が似合う、それが到達点」(宮沢和史)

──さらに最近は、音楽にとどまらないさまざまな活動にも取り組まれています。
何も新しい曲を作って歌うってことだけが活動ではないと思うんです。僕は今でも誰もやっていないことをやっているという自負があります。今、沖縄で三線に使う琉球黒檀の植樹活動もやっているし、沖縄の民謡を後世に残すための『唄方プロジェクト』という活動もやっている。こういう誰もやっていないことをやることが、僕にとってのロックだと思っています。50年後、100年後に沖縄の未来が輝かしいものであってほしい、芸能が華やかであってほしいっていうのを夢見る活動です。
今年の5月14日(沖縄返還50周年祈念式典の前日)にも、沖縄で『三線音楽公演「唄方」~島々の誉れ歌・情け歌・哀れ歌~』の構成・演出をしました。地元の若い歌い手さんが島々から生まれた歌を歌うという企画です。ただ、去年リリースしたソロ・アルバム『次世界』、あれは自分でもすごくいいものが作れたと思っています。僕なりのメッセージがうまくまとめられたアルバムですね。
──そうした活動が全て宮沢さんにとっての「ロック」であると。
そうです。以前、佐野元春さんが「ロックは約束の音楽だ」っておっしゃったことがあって。すごくよくわかるんです。つまり、自分でメッセージを発するということは、一方で自分の首をしめるというか、自分の行く道を狭めることになると思うんですよ。でも、僕はそれはロックだと思う。約束をひとつすると、それを守らなきゃいけないし、その生き方って窮屈なんですけど、それを守っていくってカッコいいと思うんです。
──確かに。

もちろん、沖縄からも離れられないですし、沖縄の未来のために自分ができることを全てやっていかなきゃなって思っている。それも約束なんです。沖縄の未来のために、というのは自分自身の道を狭めているのかもしれないけど、でも僕の人生に道を作ってくれたものでもあって感謝してる。考えてみたら、僕が尊敬している人はみんなそういう側面があって、ボブ・マーリィもジョン・レノンもスティングも、ブラジル音楽だとカエターノ・ヴェローゾもジルベルト・ジルも70代なのに洗練されている。
みんなもう本当にいい歳になってしまいましたけど、カッコいいんですよね。そして美しい。僕はこれから60代を迎えようとしてますけど、これからの人生を考える上でも彼らはお手本です。刃物のように鋭くて、でも笑顔が似合うっていうのがいい。そういうミュージシャンでありたいですね。うん、それがひとつの到達点かな。
『島唄』30周年を記念したコンサートが全国で開催。大阪公演は、8月7日に「サンケイホールブリーゼ」(大阪市北区)にて、チケットは7000円で7月9日に発売される。また、宮沢に加えて夏川りみ、大城クラウディアが出演した『沖縄からの風コンサート2021』の模様をおさめたDVD/ブルーレイが6月15日に発売。「島唄」「涙そうそう」など沖縄から生まれた名曲を披露している。
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