阿部サダヲの怪演光る、白石和彌監督が挑んだサスペンス映画

映画『死刑にいたる病』のメガホンをとった白石和彌監督
「ホントにどんな映画なんだよと」(白石監督)
──もちろん原作のタイトルは、デンマークの思想家キルケゴールの有名なフレーズ「絶望とは死にいたる病である」のもじりなわけですが。
よしんば、持って生まれて来ちゃったという。その環境や彼を取り巻く社会とか、いろんな意味合いがあってこういうタイトルなのかなぁ、と。なかなか深いタイトルですよね。
──みんな何かしらコンプレックスを抱えていて、台詞にもありますが、「自尊心を低くされてきたからああなってしまった」人物ばかりですよね。自分もそんな状態で生まれ育ってきながら、殺人というひとつの生きる術を見つけたために、同じような境遇の人間をどんどん沼に引きずり込んでしまうのが大和なわけで。
雅也も物語の途中で、大和がそっと撒いていたエサに喰いついて、とある勘違いをした瞬間、全然違う顔を見せますよね(笑)。急に全能感というか強くなったような気になる。人間ってそんなもんなんでしょうね(笑)。いきなり女子高生に微笑みかけたりとか。ホントにどんな映画なんだよと(笑)

──岡田さんはどちらかといえば、テレビドラマのイメージが強かったですが、見事な演技でしたね。
岡田くんに初めて会ったとき、すごく真面目だし、ものすごく物事を考えていてる目をしてたんですね。それが、大和に取り込まれていく雅也の目に見えたんです。こういう陰な世界観もすごくマッチするんだなぁと。あと、シーンによって顔つきが全然変わるんですよ。ランニング姿で焼きそば食ってるときとか、ブルース・リーにしか見えないし(笑)。こんなに顔の変わる人って珍しい。特殊能力を持ってるひとりだと思いますよ。
──イメージが違うと言えば、金山役の岩田剛典さんもです。最初、まったくわからなかった(笑)。
すごく微妙な役どころで、さじ加減が難しかったと思うんですけど、そんなに説明せずとも理解してくれましたね。あとどんなに本人と違うイメージの役をやっていても立ち姿に色気があるんですよね。素晴らしかった。森のシーンでは肉体性を発揮してもらわないといけないから、そこはさすがのパフォーマンスでした。

──森のシーンはもちろんですが、カメラワークの運動性が高いですね。
今回のカメラは池田直矢さんで、片山慎三監督とずっと一緒にやってますね。木村大作さんのお弟子さんで、画画をリッチにしてくれるんです。こういう人が日本映画界を背負っていくカメラマンになるんだろうなと感じました。そのレベルだと思います。
──インディペンデント作品が多かったけど、このところ本数の伸びがすごい。
インディーズの作品は撮影的にもいろいろな実験もできるし研磨の場でもありますよね。その上で木村大作さんのところで修業してるわけだから、本来的にはどメジャーなカメラマン。両方出来るということなんですよ。
──編集の加藤ひとみさんや美術の今村力さんは白石組常連ですよね。とりわけ、殺人を繰り広げる拷問部屋の禍々しさたるや。
あれ、素晴らしいですよね。あれは、水門のある家を見つけられたのがすべてだったんですよ。本当に助けられました。ロケーションからいろいろとインスパイアを毎回もらって映画に生かしていくタイプなんですが、これほどバッチリだった世界観は初めてですね。

──照明も含め、拷問部屋のシーンは凄惨美がありましたね。
そうなんですよ。スリラー・サスペンスなんですけど、ちょっとホラー要素を入れたいなと思ったんで。ラストの在り方もそういう風に持っていったんですけど、ゴア描写も含めて、上手くいったかなと思います。同時に大和は秩序型の殺人鬼なので、毎日のルーティンも含めて美しさが必要。そこも上手く表現できたと思います。
──そのラストにも関わることですが、こんな凄惨な状況でさえ、白石監督らしいラブストーリーもちゃんとある(笑)。ヒロインを演じた宮崎優なんて、出演作はだいたい観てるんですがまったくノーチェックでした。
芝居はまだまだこれからで荒削りなところもあるんですけれど、彼女にお願いして良かったです。頑張り屋さんで、撮影があるときは2時間くらい早く来て、「緊張するんで慣れておきます」と言いながら現場を見学したり。台本にないこともお願いすることもあったんですが、やり切ってくれました。後半、雨のなかで雅也と会うシーンも急に大人びてドキッとするヤバさがありましたよね。

──岡田さんが手に怪我されたとか?
そうなんです。岡田くんが手に怪我して大きな絆創膏を貼ることになってしまって、ちょっとしたアクションのなかだったので申し訳なかったのですが、岡田くんが絆創膏を気にして芝居に制限をかけたくないと。だとしたら、ストーリーのなかでも怪我した設定にして、物語に組み込んだんです。でも、できあがってみると、怪我の流れがなかったら映画の印象が全然違うものになっただろうなという感じになりました。
──あと、印象的だったのは父親役の鈴木卓爾さん。鈴木さんがまた良いんですよね。
いいですよね。ビールをぐびって飲むシーンとか、気持ち悪くて最高でしたよ。数年前、京都造形芸術大(現・京都芸術大)での卒業制作の合評会に呼んでいただいて。夜な夜な映画の話をしながら飲んでたんですが、飲みながらやっぱり卓爾さん、いいなあって思ってお願いしたんですよ(笑)。
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