阿部サダヲの怪演光る、白石和彌監督が挑んだサスペンス映画

映画『死刑にいたる病』のメガホンをとった白石和彌監督
今や日本映画界に無くてはならない存在となった映画監督・白石和彌。そんな若き名匠が新たに挑んだのは、作家・櫛木理宇の最高傑作と称される小説『死刑にいたる病』だ。
鬱屈した毎日を過ごす大学生・雅也は、世間を震撼させた連続殺人鬼から「最後の事件は冤罪だ」という1通の手紙を受け取る。独自に調査を始める雅也、そして浮かび上がる残酷な真実。
映画『そこのみにて光輝く』などで知られる脚本家・高田亮と初タッグを組んだ本作について、白石監督を直撃した。
取材・文/ミルクマン斉藤
「やれることを全部試してみようと」(白石監督)
──犯人からの手紙が主人公のもとに届いて物語が始まる、というのはどうしても白石監督の出世作『凶悪』(2013年)を想起させますが、今回の企画は監督自身によるものですか?
原作を発見したのはプロデューサーの深瀬(和美)さんですね。そうなんですよ、どうしても『凶悪』みたいになっちゃうんで、最初はちょっと厳しいかなと思ったんですけど。ただ、(阿部サダヲ扮する)榛村大和という人物の造形が面白かったのと、物語もどこに行くのかよくわからない感じが良くて。
──そもそも、岡田健史さん演じる大学生・雅也になぜ新犯人捜しの依頼が来るのか。
ほとんど最後までわからないですからね(笑)。
──映画を拝見してから原作を読んだのですが、白石監督らしい大胆なアレンジが施されてますよね。例えば、大和の母親のエピソードが原作にはかなりありますが、ほとんど省かれていたり。
そうですね。過去の話は現在軸に入れていくとどうしても回想になってしまって、映画が止まっちゃうんで。
──犯行の動機の理由付けにしかならないですもんね。あくまでも普通人が理解できる範囲での。
理由なんて要らないですよね。(2021年、カンヌ国際映画祭でパルムドールを受賞した)『TITANE チタン』を観てよくわかった。マジで説明いっこもない(笑)。日本映画は語りすぎ。
──終盤は特に面会シーンが多くなるので、そこをどうやって見せていくのかに、あれこれ苦労の跡がうかがえます。
『凶悪』は正面と正面の切り返しのカットバックばかりという手法で意識的にストイックにやったんですけど、逆に今回はやれることを全部試してみようと。カメラも縦横無尽に走らせたし、へんてこりんなギミックを入れてみたり(笑)。

──アナログな手法でプロジェクターなどを駆使して、面会室を異様な空間にしてしまう。2人を隔てるアクリル板にお互いの顔が映りこむ瞬間も計算されてて。
使えるものは全部使おうと思って。あれもアクリルとガラスのどっちにするか何度もテストして。ガラスの方が透明度があって、映りが良くわかるんですよ。
──遮断された面会室の障壁をものともせず、大和がどう他人を洗脳していくかっていう。
やはり阿部さんの力が大きいですね。阿部さんに出ていただいた『彼女がその名を知らない鳥たち』(2017年)のときの仄暗い目がずっと記憶にこびりついていたんですよね。それで今回、榛村大和を誰にしようかとなったとき、あの阿部さんを見たいなあ、と。
──わかります。黒目がちで。
阿部さんって、どういう人かわからないって感じがあって(笑)。そこが榛村のキャラクターと僕のなかでシンクロして。原作はもうちょっと中性的な感じなんですけど。

──それが俗を超越していて畏怖の念が湧くというか。
映画の主人公もそうなんですけど「結局、あの人はどういう人だったんだろう」って謎が残る方が僕はとても魅力を感じるんですよね。そういうところが阿部さんにはあって、榛村のキャラクターと相まって畏怖するような存在になりましたね。
──そういうところが『彼女がその名を~』のときも効いてたし、今回はまさに謎でしかない人だから。自分の趣味のためだけに殺人を重ねていく。その理由も常人には理解できないのが一番恐ろしい。
趣味のために働いている人っていっぱいいますもんね(笑)。それがたまたま大和の場合は、残念ながら殺人だった。だから『死刑にいたる病』の「病」ってなんだろうと考えながらやってたんですけど。
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