小説のごはんを再現、大阪・中崎町に「文学めし」カフェ
大阪・中崎町の閑静な路地にあり、本に登場するごはんが週替わりで楽しめるカフェ「Andbooks(アンドブックス)」(大阪市北区)。食事や読書ができる空間で、小説やエッセイ、短歌などの魅力を伝えている。
週2日の営業で「店というより、お客さんが自宅に来てくれる感覚に近いかも」と、笑顔で話すのは、店主の大谷正世さん。ビル2階の新店は、食事や会話を楽しむオープンキッチンと、読書や黙食に集中できる2スペースに分かれ、どちらも4人ほどで満席になりそうなアットホームな空間だ。
幼少期から本に親しみ、国語の教員免許を持つ大谷さんが2019年に店を始めたのは「文学好き以外の人にも、本や本屋さんを新たな形で紹介したい」という思いから。半年間で関西や東京の書店を150店ほど巡り、本に関わる活動を模索した末に飲食業での勤務経験を活かし、「食べる」ことが入口になる現在のスタイルに。
文学めしの魅力について、大谷さんは「レシピ本にはない料理に出合えること。分量や調理法が分からないからこそ、前後の文脈や料理が作られる状況、主人公の性格から予想するおもしろさがあります」と、かえって作品の深掘りにもつながるという。そして「料理を探すためだけの読書はしたくない。本当に内容に惹かれた本を紹介したいので」というこだわりも。
取材日の「週替わりランチ」(1100円・予約制)は、大谷さんが「料理の描写が抜群においしそうで、料理家が苦心してレシピをつくる様子や登場する女性たちの芯の強さが魅力的」とおすすめする、原田ひ香の小説『口福のレシピ』(小学館)のメニューが登場。作中に合わせ、りんごジュースを使ったという豚の生姜焼き、京風玉子焼きの明太入りなどが再現された。
「1番うれしいのは、ランチを食べたお客さんが帰りに書店に寄り、その本を買ってくれたこと」と話す大谷さん。作家名や作品をお客集めに利用しないようSNSのメニュー告知は基本的に料理自体やヒントだけだが、食べた人の投稿などを見た作家が喜んだこともあるそう。
移転前の店から常連という30代男性客は、「特に読書好きではなかったのですが、横で短歌を詠み始めるお客さんがいたり、話すうちに仲良くなった方もいておもしろい店だなと。好きな漫画めしをリクエストしたこともありますよ」と、料理とともに客同士のつながりも楽しんでいた。
店舗やオンラインショップでは、大谷さんが企画した「本を味わうハーブティー」や「本を買いたくなるバッグ」も販売。営業は月・火曜(第1週のみ木・金曜)、昼12時~夕方5時、ランチのみ予約制(前日夜7時まで)。
取材・文・写真/塩屋薫
「Andbooks」
住所:大阪市北区中崎西1-8-3 ソラニワビル2F
営業:12:00~17:00(LO16:00)
※月・火曜のみ営業(第1週のみ木・金曜)
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