アーティストに舞台人、マルチに活躍する古川雄大が「今」を語る
数々の話題作で主役を務め、ミュージカル俳優として活躍する一方、最近は朝ドラ『エール』(NHK)や、現在放映中の『恋なんて、本気でやってどうするの?』(カンテレ・フジテレビ系)などの、映像作品でも注目を浴びている古川雄大。
4月27日にリリースしたばかりのミニアルバム『i be』を引っ提げて、大阪を含めた3都市で『古川雄大 LIVE TOUR 2022~i be~』を開催する。新型コロナウイルスをきっかけに書き溜めた『i be』に込めた思いや、今回のツアーの見どころ、そしてミュージカルや映像作品の出演に対して感じていることなどについて、胸のうちを訊いた。
取材・文/吉永美和子
◼️「今感じていることを、ダイレクトに届けたい」
──コロナ禍で制作された『i be』の曲は、アップテンポからスローナンバーまでバラエティに富んだ曲がそろっていましたが、いずれも「希望」を感じるという点で共通していました。
ありがとうございます。確かにすべてにおいて、前向きな気持ちで終わる曲です。このなかで1番はじめに作ったのは『夜に咲く花』で、2年前にコロナによる自粛が始まった頃でした。いろんな人がメッセージを発信するなか、自分にはなにができるんだろう? 今感じていることを、ダイレクトに届けたい・・・と思って書いた曲です。
──そのときに、1番届けたいと思ったことはなんでしたか?
「みんなで同じ方向を見たい」という想いでした。理想というより「みんなでこういう方向を見て、前に進みたかった」という、ちょっと結果論みたいな感じ。でもそれを作ったことをきっかけに、「つながり」というテーマで、もうちょっと曲を書きたいと思ったんです。
つながりから生まれる欲や、つながってしまう悲しさ、つながりが自分にとってプラスになることなどを表現できればな、と。『指先、手』は、主演させていただいたドラマ(『私の正しいお兄ちゃん』/FOD)の主題歌でした。
──その『指先、手』と『夜に咲く花』は、「なんとか形になり」とインスタグラムで書いてましたね。
『夜に咲く花』は明るい気持ちというよりも、強いメッセージをしっかり込めたかったんです。「曲を作りましたよ」というより「聞いてください!」って感じにしたくて、そういう意味では大変でした。『指先、手』はドラマの主題歌ということで、脚本のいろんな要素や、いろんな方々の意見を取り入れる過程もあって。今までと作り方が違うので、その意味で難しさを感じました。
──アルバムタイトルの『i be』に込めた思いは。
アルバムジャケットにも使っているアイビーは、花言葉が「友情」とか「永遠の愛」とか、人のつながりを感じさせるものなんです。「切っても切れない愛」という、ちょっと怖いニュアンスの言葉もあるんですけど(笑)。そこに「I BE=○○になりたい」という欲をかけて、タイトルとさせていただきました。
◼️「ライブと舞台の本番とでは、音程の重みが違う」
──そんな古川さんですが、今やミュージカル界にも欠かせない存在となりましたが、意外にも最初は「歌」で苦労したとうかがいました。
まず、発声方法が全然違うんです。あと音程を外してしまうのも、ポップスのライブと舞台の本番とでは、その重みが全然違う。しかもみなさん本当に一人ひとりがすごい実力を持っていて、そんななかに「アーティストをやっています」というだけで、ポンと入っちゃったので、最初はすごく大変でした。
──そのなかで、歌い方や意識が変わったターニングポイントはありますか?
歌い方というのは、正直まだつかめてないんです。技術的にはだいぶ上手くなったと思うんですけど、100%成果を出せているか? と言われたらまだ難しいし、全然模索中です。意識の変化でいうと『1789 -バスティーユの恋人たち-』(2016年)です。主役の下に男が3人横並びにいた、そのなかの1人だったんですけど。
──主人公・ロナンとともにフランス革命に参加する、マキシミリアン・ロベスピエール役ですね。
そのなかで、本来任されるはずのことを任されなかったりとか、いろいろ苦い経験をしたんです。その悔しさから、もちろん今までもがんばってはいたんですけど、そこでスイッチが入りましたね。
──確かに古川さんが頭角を現してきたのは、その辺りからでしたね。この年末には、ミュージカル界屈指の人気キャラ・トートを演じる『エリザベート』が控えていますが、大阪公演は古川さんのシングルキャストとなります。
ひとつの都市を1人だけで(トートを)やるという経験は初めてです。大阪にいる間ずっと出られるのは、挑戦であり楽しみです。
──最近は映像での活躍も目立ちますが、舞台でやっているときとは違う発見とか、ポテンシャルを感じたりはしますか?
奇抜な役から、ちょっといいお兄さん的な存在まで、いろんな役を経験させてもらいましたが、それぞれの役の気持ちを理解できるのが楽しいです。今までは貴族とか悪魔とか、そういうのが多かったので。
──非日常だったり、時代が違うキャラクターばかりが。
そうなんです。だから世界を表現するうえで、(役に)共感とはちょっと違う感覚を使わないといけない。映像では、奇抜でも割と身近な人物をやらせていただいたことで、さらに視野が広がったかな? と思っています。
◼️過去の曲を「つながり」でくくってみた
──話はライブの方に戻りますが、今回は劇場ではなく、ライブハウスが会場のツアーとなります。どういったライブにしたいと思っていますか?
ライブハウスのツアーは、まずはよりライブ感があるように。そしてライブのテーマ「つながり」を、具体的に感じられるものにしたいと思っています。自分の曲だけでセットリストを作っているんですけど、なんだか面白いことになってます。
──どんな風に面白いですか?
過去の曲を「つながり」でくくってみたら、結構いびつなつながりがそろったんです。新曲以外は、ストレートなものがあまりない。だから、改めて歌詞の内容をとらえてみたら、より楽しんでもらえそうな気がします。それとわかる方には、開場前の(客入れ音楽の)選曲から「つながり」をどこかに感じてもらえるようにしました。ちょっと説明が多くなるかな? とは思うんですけど、今までの割とワチャワチャしていたものから、より密度を上げたライブになりそうな気がします。
──ちょっとシアトリカルな香りがしそうですね。まだ古川さんのライブがあることをご存知ない方もいるかもしれませんので、ぜひお誘いの言葉を。
人は経験がすべてだと思うので、ちょっとでも気になったら来ていただきたいです。8割は変化しないかもしれないけど、2割は人生が変わるみたいな瞬間が訪れる可能性がありますから。割といい曲を作ってると思うし(笑)、初めて来た方にも丁寧に説明しますので、楽しんでいただけると思いますし、盛り上げていきたいと思います。
──ちなみに・・・古川さんはスイーツ好きとしても有名ですが、大阪で楽しみにしてるスイーツはありますか?
行ったことはないのですが、大好きな生クリームが、ものすごくたくさん盛られているクレープ屋さんです。ただスケジュール的に滞在中に行けるかどうかわからないのですが、食べられたらいいなあと思ってます。
◇
「古川雄大 LIVE TOUR 2022~i be~」は、5月2日に「Zepp Osaka Bayside」(大阪市此花区)で開催される。チケットは全席指定7700円(ドリンク代別途必要)ほか、現在発売中。
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