テロップ全盛時代、映画はどこまで説明が必要か? 監督の願いとは

映画『ちょっと思い出しただけ』 (C)2022「ちょっと思い出しただけ」製作委員会
クリープハイプ・尾崎世界観の楽曲『ナイトオンザプラネット』に触発された松居大悟監督が、キャリア初のオリジナルラブストーリーとして作り上げた映画『ちょっと思い出しただけ』。主演は池松壮亮&伊藤沙莉という、今をときめく実力派による共演だ。
誰もが戻れない過去を抱いて生きていく、そんな日々を「ちょっと思い出しただけ」の物語は、ふたりが別れた後からさかのぼって描かれる・・・。わけだが、試写の段階で、そこに気づかないという指摘があったという。テロップ全盛時代、作品の構成はもとより、どこまで伝えるか。松居監督と映画評論家・田辺ユウキがそれについて語った。
取材・文/田辺ユウキ
「テロップを入れると、仕掛けが生きない」(松居監督)
田辺「この対談企画の経緯を簡単に説明すると、本作を鑑賞した方から『時間をさかのぼってることに、途中まで気づかなかった』という感想があったそうなんです」
松居「えぇ!? じゃあ、物語もなにも全然分からないじゃないですか」
田辺「そうなんです。僕もそれを聞いて驚いて。そこに気づかなければ、この作品の良さがまったく伝わらないじゃないですか。それで『映画を観たけど気づかなかった人への後押しになる記事を作れないか』という話になりまして」
松居「たしかに編集段階で、『年代表記のテロップを出すべきか?』という話はありました。ただ、最初のパート(2021年)で照生(池松)と葉(伊藤)がマスクを着けているけど、次の次(2019年)からは着けてないし・・・」
田辺「同じく、照生は最初のシーンで怪我はしていないけど、次では足を引きずっていたりしますよね」

松居「そういう変化から、時間がさかのぼる展開とともに、いろんな要素を探してもらった方が、鑑賞者が映画を自分のものにできると思いました。テロップなどで分かりやすい説明を入れると、その仕掛けが生きないんじゃないかと」
田辺「登場人物の変化を細かく観る、というのはとても大切なこと。照生が、1パート目では仕事に慣れている風だけど、そのあとのパートでは先輩にめちゃくちゃ怒られているとか。就職したばかりだから、仕事ができていないんですよね。あれは、池松さんの演じ方もとても上手い」
松居「映画の序盤に『結果』を出すことで、いかにみなさんが今過ごしている何気ない瞬間が貴重なものなのか、過去があるからこそ前に進めるってことを伝えたかったんです。誰もが思い当たる何気ない感覚をテーマにしたので、自分の作品のなかでは分かりやすい内容。もしこの映画を『難しい』と感じていたら、『くれなずめ』(2021年)なんて本気で分からなくなる(笑)」
田辺「田んぼでバトルする成田陵とかね(笑)。ただ、誰もが思い当たる出来事ではあっても、観てる人に共感を求めているわけではないですよね?」
松居「共感って映画を観るうえで大事な要素だし、してもらえるとうれしい。ただ『共感できるからおもしろい』『できないからつまらない』とは考えて欲しくなくて。『映画を自分のものにする』というのは、イコール共感することではないはずで」
田辺「自分の感情や経験をもとに映画を観ようとすると、それこそ『登場人物の感情が分からない』場合は、物語が受け入れられなくなる」
松居「この映画は『とある1日を描く』ということがテーマ。登場人物の気持ちが分からなくても、それは当然なんです。ただ映画を観たあと、『そういえば、自分にはこんなことがあったなぁ』と思い出してくれたら良いかなって」
田辺「そもそも、映画は虚構(作り話)ですからね。松居作品の面白さは、そこだと思っていて。フィクションなんだけど、そのなかにハッとさせられるリアリティがある。たとえば『アイスと雨音』(2018年)で、主人公が行動する先々にミュージシャンが待ち受けているじゃないですか。そして、その場で音楽を奏でる『生演奏』が、そのまま劇中歌になっている」
松居「そうです、まさにそうです」
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