堤幸彦監督「自分で評価できない作品を世に出しても仕方がない」

自主映画『truth~姦しき弔いの果て~』を発表した堤幸彦監督
「映画を撮るときも、いつも最後と意識」(堤幸彦監督)
──その一方で、作品の大きなテーマになっているのが精子バンク。自分が死んだとき、何を残すのかを問いかけています。堤監督は自著『堤っ』(2002年)のなかで、20代を振りかえり、当時は死に対して無感情であると書かれてました。でも『truth』を観ると、その考え方に変化があるように見えます。
おっしゃる通りです。自分はいくつかの喪失を経験していて、また病気をしたこともあったので、20代、30代は死を選ぶことに拒否反応がなかったんです。20代の頃はバラエティ番組も手がけていましたが、かなりブラックな演出をしていました。それは当時の死生観からきていた部分。しかし、東日本大震災でその考え方がはっきり変わりました。

──『Kesennuma,Voices.』(TBS)というドキュメンタリーシリーズも制作されていらっしゃいますね。
震災があったとき、以前からお世話になっていた宮城県気仙沼の人たちの安否を確認し、撮影現場からそのまま被災地へ行ってボランティアをやらせていただきました。今はもう、以前のようなブラックな演出はできない。震災の影響もあるし、歳をとったせいかもしれない。決して丸くなったわけではなく、自分の経験からくる成長なんです。
──死んだら何が残るのか、というテーマも堤作品にはずっとついてきたものですね。
そのテーマのなかでは、特に『くちづけ』(2013年)が印象的でした。原作者・宅間孝行さんの脚本を読んでボロ泣きしましたから。『包帯クラブ』(2007年)、『悼む人』(2015年)、『十二人の死にたい子どもたち』(2019年)、今回の『truth』はそういうテーマの流れにあるといいなと思います。それらの作品では、冷徹な映像とヒューマンな描き方の相性をずっと探しています。
──監督自身、現在は寿命や死を強く意識することがありますか。
めちゃくちゃあります。仲間も何人も死んでいますし、20代からその連続ですから。仲の良い佐野史郎さんも今、病と闘っていますし(「多発性骨髄腫」であることを明かし、現在治療中)。あと私は2020年、転倒して左目を失明しそうになったんです。手術で持ち直しましたが、そういった出来事も自分の衰えとしてとらえています。
──そんなことがあったんですね。
映画を撮るときも、いつも「これが最後の作品かもしれない」と意識しています。僕自身、映画監督として、まだ自分にしかできない作品はあるはず。「もうすぐ70歳だし、勘弁してよ」と言わずに、なんとかしつこく生き続けて、自分にしかできないものを作っていきます。
──なるほど。
自分の本当の満足度は、どうだったのか。表現に対して落とし前をつけられたのかと言われたら、それは疑問が残る。賛否両論ならまだ良い。自分自身で評価できないものを世に出しても、仕方がない。だけど、『truth』のように熱量を持って作ったものは、100回ダメでも、101回目には光を見出せるかもしれない。その光を探して、このコロナ禍をやっていきたいです。
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