江戸時代から続く奈良の老舗書店、10月末で歴史に幕

10月31日でその歴史に幕を下ろす老舗書店「桂雲堂豊住書店」
江戸時代から続く老舗書店として地元に愛された「桂雲堂豊住書店」(奈良県奈良市)が、10月末でその歴史に幕を下ろす。
近鉄奈良駅の北側、地元住民の暮らしに根付いたお店が並ぶ「東向北商店街」にある同店。2021年8月25日に店主の豊住勝郎さん(85歳)が死去したことから、東京都在住の息子の勝輝さんが仕事を休職し、現在は臨時の店主として閉店の準備を進めている。
幕末の慶応3年(1867)創業と伝わるが、「どうやらもっと古く、文化13年(1816)に三重県伊賀上野で出版業に携わっていたのが始まりと聞いています。祖父は、日本で2番目に古い書店だと言っていました」と勝輝さん。本当なら創業205年ということになる。同店の2階には先祖代々の店主が集めたと思われる古書や書籍が積み重なっており、その歴史を物語る。
雑誌や児童書、文庫本だけでなく、奈良関連の書籍や、文化財、歴史、古美術関係の専門書などが充実した店内。多くの研究者や県内外の奈良ファンが常連として同店を愛用していたことでも知られる。
これらの専門書などを取り扱っていたのは、祖父の謹一さんと父の勝郎さんの趣味が強かったという。謹一さんは、大学などで奈良学講座を開くなど積極的に市民へ自身の知識を還元。勝郎さんも同様に造詣が深く、客との対話のなかでその人が求める1冊を丁寧に探し、提案する「知識の源」のような存在だった。
勝輝さんは、「おやじは、ワインに例えるとソムリエのようでした。実際に今回のことで、同じようなクオリティを維持し、お客さまの求めていることに答えるのは難しいと今さらながら思い知らされました。やはり、何十年もやってきた経験が無いと・・・」と語る。
また、同店のメイン業務は、地元の学校(小・中・高)の教科書の取次。勝輝さんも小学生の頃から春休みには家族総出で手伝いをしたそう。一度は継ぐことも考えたそうだが、亡くなった勝郎さんは、もともと高齢を理由に2022年春に閉店するため教科書の取次権利を返納していたことが分かり、幕引きを決断した。
閉店を知り訪れていた常連の82歳の男性(奈良市在住)は、「本当に残念ですね。昨年お会いした時はお元気だったのに・・・。ここへ来たら、奈良の本はだいたいあるから、(ほかに書店はあるが)買うならここでって決めていました」と深い想いを滲ませた。
「来店する多くの方が本当に『お世話になった、お世話になった』と何度もおっしゃってくれます。祖父も父も話好きだったので、むしろお世話になってなったのはこちら。相手をして下さって楽しい時間を過ごさせていただいたと思います。生前にはできなかった最後の親孝行として最後の日まで店主を務めます」と10月31日まで通常営業をおこなう。営業時間は10時~18時。
取材・文・写真/いずみゆか
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