京アニ事件が残したメディアの「実名報道」は、是か非か?

2021.7.18 21:00

36人の社員が亡くなり、全焼した「京都アニメーション第1スタジオ」

(写真2枚)

2019年7月18日、京都市伏見区にあるスタジオに当時41歳の男性が侵入してガソリンに火を放ち、36人を死亡させた「京都アニメーション放火殺人事件」。国内外で高い評価を得ていた「京アニ」を襲った凄惨な事件は世間に大きな衝撃を与え、逮捕された青葉真司被告はもちろん、周辺へのマスコミの取材は加熱の一途を辿った。

その一方、事件で死亡した犠牲者の氏名が公表されるまで1カ月以上かかる異例の事態に。京都府警が、遺族から実名報道や取材の意向を聞き取り、多くの遺族が拒否していることを通達したにも関わらず、報道機関は犠牲者の名前を報道。世間から大きな批判が集まったことも、同事件のひとつの爪痕となっている。

新聞協会は、報道機関の使命を『国民の知る権利に奉仕』することだと記し、実名による事件報道は大きな役割としている。読売テレビの番組『NNNドキュメント’21』では、遺族とマスコミのあり方について取材を敢行。今回の事件で娘の幸恵さんを失った津田伸一さんは、『(自分は)京アニという集団に献花に来られているのではない。名前を明らかにした方がいいと思った』と語り、実名報道に理解を示した。

メディアの「実名報道」は、是か非か?報道機関の取材、実名報道について明確な「拒否」が並ぶリスト

一方で、匿名を希望し取材を拒否してきた別の遺族は、同番組の取材に初めて胸の内を明かし、『心を落ち着けようとしているときに、むやみに扉をノックするのはやめてほしい。そっとしておいてほしい気持ちが分かっているならば、どうして実名報道をしたのか』とコメント。

龍谷大学の畑仲哲雄教授(ジャーナリズム論)は、この現状を客観的に捉えようと、ある実験を実施。遺族が実名報道について『拒否』の意向を示すなかで、それでも実名を報道すべきかどうか学生に質問したところ、95%以上が「匿名にすべき」と回答。実名報道の意義をいくら説明してもこの数字が変わることはなく、遺族の気持ちが優先されるべきという社会の考えが如実に表れる結果となった。

また番組では、遺族とマスコミの狭間に立たされた人物を訪問。2004年、長崎でおこなった「佐世保小6女児同級生殺害事件」の被害者の父であり、当時、毎日新聞社の記者でもあった御手洗恭二さんだ。事件直後、遺族として記者会見に臨んだ御手洗さんは、『(普段は記者として)会見を求める立場だから、(会見から)逃げられないと思った』と辛かった胸中を吐露した。

明らかに実名報道、および取材を拒否した京アニ事件の被害者。にも関わらず、取材に押し寄せた報道メディア。事件の真相や記事の信憑性、社会全体への教訓など、報道機関の言い分はそれぞれだが、その一方で「ある自民党幹部は〜」「関係者によると・・・」といった匿名性を便利づかいする側面も。同番組では、取材で得たひとつひとつの言葉を、報道の在り方を考える未来への提言と受け止めて検証。この模様は7月18日・深夜1時5分から放送される。

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