仏教美術のオールスター戦、名作の表情から読み取る面白さ

2021.7.27 06:15

「伽藍神立像」木造 彩色 鎌倉時代(13世紀) 通期展示 禅宗寺院にまつられる伽藍神とされ、修行を怠る者がいれば釘を刺して懲らしめる。かつては手に釘と槌を持っていたようだ

(写真8枚)

「奈良国立博物館」(奈良市登大路町)選りすぐりの名品246件(うち国宝13点、重要文化財100点)を展示し、日本仏教美術1400年の歴史をたどる展覧会『奈良博三昧-至高の仏教美術コレクション-』が、9月12日までおこなわれる(前後期で展示替えあり)。

古都奈良をはじめとする、さまざまな社寺に伝わる仏教美術を中心に展示をおこない、仏像、仏画、古写経、仏教工芸など約2000件のコレクションを有している同館。本展は、「ブッダの造形」「飛鳥・白鳳・天平の古代寺院」など10章で構成されている。

どの章も名品揃いで、仏教美術のオールスター戦を見ているかのよう。本展を見れば日本仏教史の概要と仏教美術の素晴らしさが理解できるだろう。・・・そういう模範解答も良いのだが、もうひとつ別の見方、楽しみ方を伝授しよう。仏様の顔立ちやポーズに注目して鑑賞するのだ。

例えば、ガンダーラ仏の『菩薩立像(ぼさつりゅうぞう)』は、彫りの深い洋風のイケメン。『如意輪観音菩薩坐像(にょいりんかんのんざぞう)』は、整ったクールな顔立ちが麗しい。

一方で、憤怒の表情が格好いいのは、重要文化財『愛染明王坐像(あいぜんみょうおうざぞう)』。また、すっ飛ぶように走る姿の『伽藍神立像(がらんしんりゅうぞう)』、つぶらな瞳とエラの張った顔立ちで愛嬌を振りまく重要文化財『力士立像(りきしりゅうぞう)』など、キャラ立ちした作品も多数見られる。

このように、自分好みのルックスを基準に作品を見るのだ。知識は後からでも十分間に合う。まずは自分流で楽しむことから始めよう。

取材・文/小吹隆文(美術ライター)

『奈良博三昧-至高の仏教美術コレクション-』

日程:7月17日(土)~9月12日(日)、前期~8月15日(日)、後期8月17日(火)〜 ※月曜休、8月9日(月・休)は開館
時間:9:30~18:00(土~19:00 ※入館は閉館30分前まで) 
会場:奈良国立博物館(奈良市登大路町50番地)
料金:一般1500円、大高生1000円、中小生500円
TEL:050-5542-8600(ハローダイヤル)

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