最上の笑顔と涙、男役の鑑・轟悠の宝塚最後となる舞台が開幕

2021.7.9 17:56

3歳から日本舞踊を習っていた轟悠。満開の桜のもと山神に扮し、国土安寧、悪霊退散の祈りを込めて優雅に舞った

(写真5枚)

七夕の夜に輝く満天の星のごとく、いくつもの煌めきを残して偉大な男役が去ってゆく。宝塚歌劇団専科に属する轟悠の最後の舞台、戯作『婆娑羅(ばさら)の玄孫(やしゃご)』が、7月9日に「梅田芸術劇場シアター・ドラマシティ」(大阪市北区)で開幕した。

轟は1985年に初舞台を踏み、雪組トップスターを経て専科に異動。長年宝塚歌劇団理事も務めながら多くの舞台に出演し、男役の鑑として後輩たちに多大な影響を与えてきた。2021年10月1日付での退団を発表し、残すは本公演とディナーショーのみ。その心中はいかばかりか・・・と察する観客への「答え」=轟の率直な思いが、まさにこの舞台に詰まっているようだった。

作・演出を担当したのは、轟の初舞台公演や代表作『風と共に去りぬ』などを手掛けてきた植田紳爾。「惜別の熱情」をもって生み出された芝居は、弱きを助け強きをくじくヒーローの物語。特に1幕は轟の明るい笑顔がまぶしく、得意の日本舞踊や美しい立ち回りを随所で披露し、江戸の風情をたっぷり届ける。

轟が演じる細石蔵之介(実の名は佐々木高久)は、神田稲荷町の長屋で、よろず指導を商いとして生きている。「婆娑羅大名」と呼ばれた佐々木道誉の子孫というだけに、派手な着物を着こなす洒脱な雰囲気や、文武両道に秀でた特異な存在感が光り、轟はそれを自然に醸し出す。

蔵之介を「石さん」と慕う長屋の民たち。星組メンバーの熱のこもった演技が、リアリティに満ちていて心をつかまれる。「てーへんだ!」と江戸言葉が板についている瓦版売りの極美 慎、ひとくせある旗本と佐々木家の忠実な家臣の二役を好演する天華えまのパフォーマンスも見どころだ。

夏祭りで踊る細石蔵之介(轟悠)とお鈴(音波みのり)。2人の息の合った掛け合いと、物語後半での展開に惹きつけられる

父の仇討ちを必死に果たそうとする清国の姉弟を演じた小桜ほのかと稀惺かずとは、最後まで轟と心通わせる台詞を交わし、清々しい風を運ぶ。お鈴役の音波みのりは、蔵之介と丁々発止の江戸弁喧嘩を繰り広げて痛快。それぞれ轟との結びつきを感じさせてくれた。

また、轟を下級生時代から見守ってきた専科の汝鳥 伶が、蔵之介の世話をする佐々木家用人として重要な役目を果たす。今の苦難の時代をも反映させたような最後の2人の会話には、胸が締めつけられると同時に、希望の光を感じさせる。そして主題歌「轟く我が心」を歌う轟は、こみ上げる思いをかみしめるように、勇ましく気高い表情。カーテンコールは共演者と顔を見合わせ、最上の笑顔で締めくくった。

大阪公演は7月15日まで。その後「東京芸術劇場プレイハウス」で7月21日~29日まで上演。また、7月14日・16時開演の舞台がライブ配信される。詳細は公式サイトへ。

取材・文/小野寺亜紀

宝塚歌劇 星組シアター・ドラマシティ公演 戯作『婆娑羅の玄孫』

日程:2021年7月9日(金)~7月15日(木)
会場:梅田芸術劇場シアター・ドラマシティ(大阪市北区茶屋町19-1)
料金:全席指定9000円
電話:06-6377-3888(梅田芸術劇場)

【ライブ配信データ】
●ライブ配信
日時:2021年7月14日(水)16時開演
視聴方法:「Rakuten TV」および「U-NEXT」にて配信
料金:3500円

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