尾上松也、新作映画と『半沢』の共通点「敗れて終わりじゃない」

2021.3.10 19:15

映画で初主演の尾上松也

(写真4枚)

金魚すくいを題材とする原作漫画の映画化『すくってごらん』が、3月12日より全国公開。東京から左遷された銀行員を演じるのは歌舞伎俳優の尾上松也、町名物の金魚すくいの魅力に目覚める物語だ。

2020年に出演した大ヒットドラマ『半沢直樹』(TBS系)では、挫折を繰り返しながらもIT会社の社長になる瀬名洋介を演じた松也。同作とのキャラクターに共通するもの、それは人生の転落を味わったという点だそう。

『すくってごらん』では、金魚すくいに使うポイが破れやすいことに引っ掛け、「破れて(=敗れて)からが楽しい」という人生論が描かれる。松也も、「ポイが破れても終わりではない。それは自分たちの生き方にも重なること」と話す。

そして「香芝は、『追いかけてはいけない、待つこと』と金魚すくいのコツを教わります。ポイに乗ってくるまで、待つ。そしてすくってあげる。これも人生とのリンク性がある気がします」と、物語に流れる多面的なメッセージについて触れた。

金魚すくいの魅力を「紅燈屋」で学ぶ主人公の香芝(C)2020映画「すくってごらん」製作委員会 (C)大谷紀子/講談社

松也自身も、さまざまな経験をバネに歌舞伎俳優として成長を遂げた。2009年11月「前進座」で初めて歌舞伎の自主公演をひらいたが、「市川猿之助さんが亀治郎時代におこなっていた『亀治郎の会』に刺激をいただいて、自主公演を始めましたが、予算もなく、何をして良いかも分からない状態。パッションだけで動き出したんです」と当時を振りかえる。

「関係者へのご挨拶や段取り等も理解しておらず、父(六代目尾上松助)ももうおりませんでしたので、ほかに教えてくださる方がおりませんでした。うまくいかないことが山のように起きました。が、自主公演ですので責任は自分にある。お弟子さんからも怒叱られました」と厳しい現実に直面。「やらなければ良かった」と本気で落ち込んだそうだ。

それでも「数年経ってから『当時の経験がなければ、失敗をしていた』という出来事が山ほど出てきました。一度失敗をすると、同じことを繰り返さないようにする。そのおかげで問題が起きずに済んだことがたくさんある。失敗には可能性があるんです。チャレンジをして恥をかいた方が、経験値として大きい。『すくってごらん』を観ると、そういった点に気づけるはず」と作品のポイントを語った。

漫画家・大谷紀子の『すくってごらん』が原作で、今回、尾上松也はラップなどにも挑戦。主人公が恋する相手役にはももいろクローバーZの百田夏菜子、ライバル的存在として元劇団四季の柿澤勇人、夢破れUターンしたカフェ店員を石田ニコルが演じる。

取材・文・写真/田辺ユウキ

『すくってごらん』

2021年3月12日(金)公開
監督:真壁幸紀
原作:大谷紀子『すくってごらん』(講談社「BE LOVE」所載)
出演:尾上松也、百田夏菜子、柿澤勇人、石田ニコル、ほか
配給:ギグリーボックス

(C)2020映画「すくってごらん」製作委員会 (C)大谷紀子/講談社

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