一夜限りのライブの楽しさを再認識させるステージ

ここで１５分の換気タイムを挟んで後半に入ると、派手な色のインディオ風の衣装を着たＫＡＮ、奇妙なカントリー・ボーイ風の大橋、初期を思わせるアフロヘアの常田、オーバーオールにチューリップ帽の山崎が４人ともフォーク・ギターを携えて登場し、７０年代のフォーク・ユニット的な雰囲気でＫＡＮの初期のヒット曲『まゆみ』を披露。

その後は、スキマスイッチがピアノと歌のみのデュオで『ハナツ』をエモーショナルに熱演し、山崎が名曲『Ｏｎｅ ｍｏｒｅ ｔｉｍｅ，Ｏｎｅ ｍｏｒｅ ｃｈａｎｃｅ』を弾き語りで情感たっぷりに歌い上げて場内の空気を一変させる。

ＫＡＮはきゃりーぱみゅぱみゅとの共演時にも着ていたというド派手な衣裳で登場して笑いを誘いながらも、リリースされたばかりの最新アルバム『２３歳』の最後に収録された珠玉のバラード『エキストラ』を。曲終わりに、大橋から曲と衣裳がミスマッチ過ぎるとツッコまれるも、切ない歌詞とメロディでしっかりと聴衆を引き込んでいった。

そして、再びスキマスイッチとＹＡＭＡ−ＫＡＮの両方のバックを務める面々がズラリと並んだ大所帯のバンド・スタイルへと戻ると、ＫＡＮがスキマスイッチからの依頼を受けて２７曲分の断片を繋ぎ合わせてリ・コンポーズした大曲『回奏パズル』をライブで再現。シンフォニックに展開する超メガ・ミックス的な内容で圧倒すると、ＹＡＭＡ−ＫＡＮは前半にやり残した『Ｔａｋｅ ｍｅ Ｆｏｌｌｏｗ ｍｅ』をグルーヴ豊かに城ホールに響かせた。

続いて締めのラスト３曲は全員が演奏に参加し、ＫＡＮの不朽の名曲『愛は勝つ』で祝祭的に幕開け。山崎が「上昇気流に乗りましょう！」と高らかに告げたあとにデビュー２５周年を迎えて８月にリリースした新曲『Ｕｐｄｒａｆｔ』を重厚なグルーヴとともに解き放ち、最後はスキマスイッチが『全力少年』で観客の手拍子によるコール＆レスポンスも求めつつダンサブルに締めくくった。

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１９９０年に関西の新興イベンターとしてスタートした「グリーンズ」は、一昨年には２０周年を迎え、関西を代表する夏の野外音楽イベントとしてすっかり定着した『ＲＵＳＨ ＢＡＬＬ』をイチ早く発足させるなど、常に独自の動きで関西のライブ・シーンを活性化させてきた。

手がけるミュージシャンもどこか地に足の付いた個性派が多くて一貫したカラーが感じられ、しっかりと「顔が見えるイベンター」という印象を持つのは筆者に限ったことではないだろう。

今回のグリーンズの新旧の顔といえる３組の共演にしても、単なる豪華な大物同士のカップリングというだけでは終わらせないコラボや遊び心が満載のスペシャルなセットとなったところに、各々の音楽家たちや制作スタッフのグリーンズへの並々ならない愛着が感じられた。

終息の見えないコロナ禍でコンサートの開催自体が困難を極めるなかで、改めて音楽や一夜限りのライブの楽しさを再認識させてくれた記憶に残るステージだった。

山崎まさよしは１２月２３日にバースデー配信ライブ『ＯＮＥ ＫＮＩＧＨＴ ＳＴＡＮＤ ２０２０』、２０２１年から、ＫＡＮは単身弾き語りツアー『弾き語りばったり ＃３０ Ｆｉｒｓｔ Ｃｌａｓｓ Ｄｉｓｔａｎｃｅ』、スキマスイッチは全国ツアー『ＴＯＵＲ ２０２０−２０２１ Ｓｍｏｏｔｈｉｅ』を開催予定。

取材・文／吉本秀純