レトロ建築へ花嫁行列、コロナ禍で工夫した手作り結婚式

2020.11.26 13:15

沿道の地元住民から「おめでとう」と声をかけられ満面の笑みの新郎新婦(11月23日・姫路市)

(写真10枚)

コロナ禍の影響で、結婚式を延期したり式の開催を迷ったりするカップルは少なくない。そんななか11月23日、姫路市で手作りの結婚式と花嫁行列がおこなわれた。

結婚式を仕掛けたのは、レトロ建築のレストラン「旧網干(あぼし)銀行 湊倶楽部」(姫路市網干区)。

約100年前に建てられた、レンガ造りのこの建物。前の所有者が高齢になり「外観を生かしてくれる人に譲りたい」と売りに出していたところ、建物に魅せられた会社役員の鵜鷹司さんが2018年に購入、2019年11月にベーカリーレストランとしてスタートした。

その湊倶楽部が結婚式を企画。コロナ禍で式の目処が立たないカップルを対象に募集したところ、網干にゆかりのある清瀬健吾さん・友紀さん夫妻から応募があった。加古川市に住む2人だが、健吾さんは網干育ちで、旧網干銀行の前を通って通学していた。友紀さんの父も網干出身だという。

道中、晴れやかに歩く新郎新婦(11月23日・姫路市)
道中、晴れやかに歩く新郎新婦(11月23日・姫路市)

『網干祝言 花嫁行列』と銘打った結婚式の当日、網干銀行の頭取だった故・山本真蔵氏の邸宅「旧山本家住宅」で祝言(挙式)を挙げた2人は、徒歩10分ほど離れたレストランまで花嫁行列。沿道には地域住民が集まり、晴れやかな表情で歩く新郎新婦に「おめでとう!」と声をかけた。

網干は秋祭りがさかんな地域だが、今年はコロナ禍で中止に。不完全燃焼の思いを抱えていた住民は結婚式の話を聞き、祭りで唄う男衆のお囃子やちょうちんで行列を先導した。網干らしい光景に、行列を見た女性は「今年は祭りがなかったから、こういうことで町が盛り上がるのがうれしい」と喜んだ。

レストランウェディングを想定していた新郎新婦は、祝言や花嫁行列の話を聞いて驚いたという。しかし、「子どもの頃の網干はもっと活気があり、今は少しさみしくなっている。(自分たちの結婚式で)地域を盛り上げるお手伝いができればいいと思った」と健吾さん。

友紀さんも花嫁行列を終えて、「いろんな年代の方が見て『おめでとう』と声をかけてくれ、『結婚式って、自分たちだけのものじゃないんやな』と感じました。まだ自分ごとじゃない感じですね」と感動を隠せない様子だった。

実は、網干銀行の頭取・山本氏のご子息が結婚する際にも今回と同じルートで花嫁行列をおこなったそうで、当時の華やかな光景が、時代を超えて再現されたことになる(当時は「銀行→山本家」で方向は逆)。

花嫁行列の終点、レストラン「旧網干銀行 湊倶楽部」でも、多くの人が待ち受けた(11月23日・姫路市)
花嫁行列の終点、レストラン「旧網干銀行 湊倶楽部」でも、多くの人が待ち受けた(11月23日・姫路市)

レストランオーナーの鵜鷹さんは「『網干祝言』『花嫁行列』というキーワードが最初から頭にあった。銀行と山本家は対なので、結婚式をするなら、レストランで完結せずに山本家で祝言を挙げ、花嫁行列をしたいと。しかし、地域の協力がないとできることではない。祭りがさかんな土壌があるからこそ、あれだけの賑わいになった。新郎新婦がいちばん驚いているんじゃないか」と語った。

その後、レストランでは参列者を30人にしぼって披露宴が開催。参列者は「花嫁行列は非日常で楽しかった。レストランもとてもおしゃれ」と笑顔だった。

大規模な披露宴が難しい社会状況では、しばらく地域の特性や新郎新婦の個性を生かした結婚式が、注目を集めるかもしれない。

取材・文・写真/合楽仁美

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