朝ドラ・エールの恋物語、劇中劇「椿姫」と見事にシンクロ

第43回より、福島での希穂子(入山法子)と鉄男(中村蒼)(C)NHK
■「希穂子がひとり身を引く姿が重ねあわされる」

この週の2日目、第42回で『椿姫』の物語はものすごいダイジェストで紹介される。佐藤久志(山崎育三郎)がリードし、喫茶「バンブー」の謎夫婦(野間口徹&仲里依紗)の珍演技でもって。
ゆえに、さほどややこしいハナシでもないのにドタバタして、いささか判りにくかったであろうと思うのだが、つまるところ希穂子がヴィオレッタ、鉄男がアルフレード、堂林社長がアルフレードの父ジェルモンの役割なのである。
ヴィオレッタ役を目指す音が、オーディションで歌うアリアもこの恋物語に推移する。ヴィオレッタが理解できない音が二次審査で歌うのは、享楽的な人生をなんとか自己肯定しようとするヴィオレッタが歌う『花から花へ』。
鉄男と希穂子の恋模様を通じて、恋愛の機敏を垣間見てからの音が最終予選で歌うのは、ヴィオレッタが結核でひとり死なんとするときに歌う『さようなら過ぎ去った日々よ』であって、そこに希穂子がひとり身を引く姿が重ねあわされるのだ。
実は、『椿姫』というのはデュマ・フィスの原作に基づく訳で、現在ではオペラ題どおり『ラ・トラヴィアータ』(「道に外れた女」の意味)と表記されることのほうがむしろ多い。
本作を一度でも観たヒトなら、なるほどとすぐさま納得できたであろうが、そうでなきゃ単なるメロドラマ週であった可能性は大きいかも知れない。ま、『椿姫』にしたって大甘メロドラマの元祖なので別にそれでいいのだが。なんたって泣けるし。
■「地方小唄の流行ともつながる音の勉強」

その一方で、裕一に課せられた地方小唄のオーダーは、「福島三羽烏」の結成を促進させることになる。
ところで地方小唄が流行したきっかけは、今も歌い継がれる西条八十作詞&中山晋平作曲による『東京行進曲』の大ヒットに拠るもの、と劇中でも説明されるけれど、これはもともと菊池寛の小説『東京行進曲』を溝口健二が映画化したときのテーマ曲であった。
ヴィオレッタが判らない、という音が「恋愛小説を片っ端から読んでみては?」とアドバイスされ、真っ先に手に取るのが菊池寛の『真珠夫人』(そう、あのトンデモ昼メロの原作だ)なのは、それを踏まえた冗談か?
しかしながら『椿姫』をめぐる偶然の物語は、希穂子との福島での思い出を介して鉄男に『福島行進曲』の詞を書かせることになり、裕一のレコード・デビューに繋がるわけである(本連載の第1週目で紹介した竹久夢二詞『福島夜曲』のA面だ)。
・・・ま、この鉄男の恋のエピソードはまるまるフィクションなんだけどね。そんなのはどうってこたあない。
【今週出てきた曲】
●ドビュッシー/『ベルガマスク組曲』より『月の光』(双浦環が音楽学校で弾いているピアノ曲)
●ヴェルディ/歌劇『椿姫』より『幸福なある日でした』(二次審査で音以外が歌う曲)
●ヴェルディ/歌劇『椿姫』より『花から花へ』(二次審査で音だけが歌う曲。夏目もイタリア人教師つけてレッスン)
●古関裕而『福島行進曲』(劇中の歌手名は川野三津代だが、史実は天野喜久代)
●ヴェルディ/歌劇『椿姫』より『さようなら過ぎ去った日々よ』(最終予選で音が歌う曲)
文/ミルクマン斉藤
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