「原物よりも、当時の様子が分かる」正倉院宝物・再現模造展

2020.7.25 14:15

再現模造の『螺鈿紫檀五絃琵琶(らでんしたんのごげんびわ)』(宮内庁正倉院事務所所蔵)

(写真6枚)

「奈良国立博物館」(奈良県奈良市)の御大典記念特別展『よみがえる正倉院宝物 再現模造にみる天平の技』が7月4日に開幕した。

当初は4月からの予定だった同展。新型コロナウイルス感染拡大の影響を受け、2月末からの臨時休館により「もう開催されないのでは?」とSNSなどで心配の声が上がっていたが、無事開幕の運びとなった。

同館の松本伸之館長は「新型コロナで一時開催が本当に危ぶまれたが(全国の8会場を巡回するため)他会場と調整がついた」と説明。また、「常に入館者数をカウントし、密を避ける充分な感染症対策を整えている」と語る。

「正倉院宝物」とは、東大寺の倉「正倉院正倉」に納められた約9000点におよぶ聖武天皇ゆかりのものや大仏開眼会などで使用された品々のこと。奈良時代から約1300年もの間、奇跡的な保存状態で現存しており、そのほんの一部を毎年秋に同館で開催される「正倉院展」で鑑賞することができる。

再現模造の『酔胡王面(すいこおうめん)』(宮内庁正倉院事務所所蔵)。酔っぱらった胡人(西方の民族)の王の伎楽面。髭や宝冠の彩色など当時の様子が分かる

同展では、この正倉院宝物の模造86件を公開。模造制作は、明治期から宝物の大規模な修理に伴い本格的に始められた。昭和47年(1972)からは、これまでとは異なり、宮内庁正倉院事務所が万が一に備えての危機管理や技術継承を目的に、外見を似せるだけでなく、同じ構造・材料・技法により、限りなくオリジナルに近い「再現模造」を製作している。

注目の再現模造は、昨年「東京国立博物館」(東京都台東区)で開催の御即位記念特別展『正倉院の世界』でも話題を集めた『螺鈿紫檀五絃琵琶(らでんしたんのごげんびわ)』。事前調査などを含めると、17年もかけて完成した品だ。宝物の構造・材料・技法を科学調査し、現代の名工の手により、鮮やかによみがえった再現模造に「匠の技術と最新の技術成果がつまっている。ある意味、原物を見るよりも当時の様子が分かる」と松本館長。五絃の琵琶は、正倉院のものが世界で唯一の現存品。螺鈿の重要無形文化財保持者(人間国宝)の北村 昭斎(きたむら しょうさい)氏らにより製作された。

宮内庁正倉院事務所の西川明彦所長は「代替品や模造品と聞くと、コピーやまがい物、場合によっては偽物みたいなイメージを持たれるが、この展覧会では、それを払拭する自信がある」と力を込める。

同展担当の中川あや学芸員は、「秋の正倉院展だと渋い色味のイメージですが、この夏は、再現模造で当時(奈良時代)の色彩感覚を楽しんで欲しい」と話す。期間は9月6日まで(会期中展示替えあり)。その後も全国を巡回する。料金は一般1500円、高校・大学生1000円、小中学生500円。

取材・写真/いずみゆか

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