ゴミになってもかっこいい。アートの「副産物」が商品に
宿泊型のアートスペース「kumagusuku(クマグスク)」が、「アートを売る、買う」ことについて、新しい形を提案するスペースを6月にオープン。
透明パッケージのなかに詰め合わされている断片。色も形も素材もランダムで、どれもいちいち主張がある…と思いませんか? 実はこれ、アーティストのスタジオや芸術大学の実習室から出たゴミ。版画の版として試みられた発泡スチロールや、レーザーカッティングされた作品の切れ端、写真作品の試し刷りなどの廃材を絶妙なバランスで詰め合わせるセンスも、アーティストならでは。
これらは、アーティストの矢津吉隆と山田毅が、作品制作の際に出た「副産物」を回収、加工して販売するプロジェクト「副産物産店」のプロダクトだ。二条城の北にオープンした「kumagusuku SAS(クマグスク スタジオ アンド ショップ)」のプレオープニングで販売された。
矢津さんは、宿泊型のアートスペースを京都の壬生に立ち上げ(2020年5月クローズ)、旅人や観客とアーティストがそこに滞在する、という開かれた時空から、アートを生成する場を生み出してきた。「普通の人にとって、ギャラリーに入って作品鑑賞することのハードルは高い。僕なりのアートの伝え方を考えてきた」と言う。この新しいスペース「kumagusuku SAS」では、「アートを売る、買う」ことに関して新しい形を提案。その主力商品が、アートの副産物プロダクトだ。
副産物の入手先は、芸術系大学や、矢津さんが知るだけでも京都市内に10カ所以上ある共同アトリエ。木や紙、発泡スチロール、なかには正体不明のケミカルな物体もある。いずれもアーティストたちの汗と涙を知る、トライ&エラーの生き証人。「アーティストたちは、こんなにも多彩な素材と格闘しているのか」「完成したのはどんな作品?」などと、想像を刺激してやまない。
さらに、制作現場に足を運んで「仕入れ」した2人から副産物たちの生い立ちを説明されると、もうアーティストのアトリエ訪問気分だ。矢津さんの思いもここにある。「制作現場と関係性を作りながら、アートの副産物を新たな作品、プロダクトとして還流させる生態系を生み出したい」。この断片からアートに引き寄せられる人たちも現れるとしたら。それもまた、プロジェクトの豊かな副産物だ。今後は、オンラインショップや店舗にて販売を予定。7月には、自動販売機を使った販売イベントを企画中。
取材・写真/沢田眉香子
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