1日限りの「大茅の輪」京都で祈る疫病退散、交通安全も

2020.6.25 06:45

北野天満宮に6月25日にだけ登場する大茅の輪。茅には邪気を払う力があると信じられている

(写真6枚)

全国各地の多くの神社で6月と12月の末日におこなわれる「茅の輪(ちのわ)くぐり」。身についたけがれを祓う大祓(おおはらえ)の大祭を執りおこなう。6月の大祓は「夏越しの祓(なごしのはらえ)」と呼ばれ、茅でつくった輪をくぐる「茅の輪くぐり」で厄除けを祈願する。

なぜ茅(ちがや)でつくった輪に? その由来は、蘇民将来という人が武塔神(むとうのかみ)の教えに従って、茅で作った輪を身につけたところ、疫病を免れたという古い言い伝えがあるから。疫病除け祈願とあれば、コロナウイルスの感染をなんとしても封じ込めたい今年、この茅の輪に、くぐらずにはいられない。多くは人ひとりが通れるくらいの大きさのものだが、なかには特別な茅の輪もある。

北野天満宮の大茅の輪は「大蛇」と称されるだけあり、直径だけでなく太さも相当のもの。足元注意!

圧倒的なのが、「北野天満宮」(京都市上京区)の「大茅の輪」。一般的な茅の輪にくらべて直径で約2倍の5メートル。「大蛇」とも呼ばれる日本最大級の威容だが、毎年、これを神職総出で手作業でつくっているといいうのも、またすごい。京北、美山で刈りたての茅の青々とした生命感には、お清めの強い力を感じる。祓いの月である6月の、天神さんの縁日25日の1日限りで登場し、6月30日には通常の茅の輪が本殿前に設置される。6月25日は、閉門時間を例年より早める予定で、昨年おこなわれたライトアップは中止に。詳細は公式サイトにて。

城南宮の「愛車の茅の輪くぐり」は、高さ約5メートル、バス、トラックも楽々通過できる大きさ

車のお祓いで知られる「城南宮」(京都市伏見区)では、なんと車ごとくぐれる「愛車の茅の輪くぐり」が登場する。駐車場に設けられた巨大茅の輪は、鉄芯に茅を巻きつけたもので、これも日本最大級の大きさ。神職が1台ずつお祓いをして、この茅の輪をくぐり、交通安全を祈願する。期間は、7月1〜7日・9時~16時。

さて、通常の茅の輪くぐりには、実はくぐり方に作法があるので予習してからお参りするもの悪くない。これは神社によって異なり、1回くぐるだけの場合もある。

●軽くお辞儀をして、左回りに1回、右回りに1回、そして左方向に回る。

●茅の輪をくぐるときに「水無月の 夏越の祓(はら)え する人は 千歳(ちとせ)の命 延(の)ぶといふなり」という和歌を唱える。

●茅の輪の茅を、むしって持ち帰らない。

茅の輪をくぐるときに唱えるといいとされる和歌がもうひとつある。『後拾遺集』和泉式部の「思ふこと みなつきねとて 麻の葉を きりにきりても 祓へつるかな」。悩み(おもうこと)がみんな尽きてしまえ(みなつきね)という言葉の中に「水無月(みなつき)=6月」が詠み込まれている。平安時代に作られたとは思えないほど、今の気分にぴったりの歌だが、混雑も予想される。唱えながら茅の輪をくぐっていていいかどうか。神職さんの指示に従おう。

取材/沢田眉香子

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