映画評論家が観る朝ドラvol.6「林遣都が困り果てている」

2020.3.23 19:00

第126回より、信作(林遣都)に、私は何番目なのかと聞く百合子(福田麻由子)

(写真8枚)

数々の映画メディアで活躍し、本サイトLmaga.jpの映画ブレーンでもある評論家・ミルクマン斉藤。映画の枠に収まらず多方面に広く精通する彼は、NHK連続テレビ小説(朝ドラ)も注意深くチェックするという。『スカーレット』第21週(2月24日〜29日放送)を振りかえって思うところを訊いた。

第21週「スペシャル・サニーデイ」

この週は大問題である。Wikipediaによると2008年の『ちりとてちん』以来、朝ドラは最終回まで放送を終了したあと、だいたい2か月以内にスピンオフが放送されている(作られない例外もある。あんなに切望された『あまちゃん』のように)。僕がしっかり観はじめたのは2014年の『ごちそうさん』からか。

でも僕は、これを面白いと思った記憶がほとんどない。スピンオフにはパターンがある。本編における脇役がメインとなって話が進行すること。たまに本編の主人公がチラッと顔を見せること。本編とは別の脚本家が手掛けること。

それはそれでいい。しかし本編が半年かけて紡いできたテイストとは微妙に、あるいはかなり違って、何故か決まって笑えないコントに終始してしまうのだな。毎回毎回、劣化版の吉本新喜劇がそんなにやりたいのか、とツッコミたくなるくらい「安っぽくて笑えない」のが何よりマズいのだ。

あろうことか『スカーレット』では、そんなスピンオフを本編に組み込んでしまった。脚本は三谷昌登。『あさが来た』のスピンオフも執筆していたようで、「劇団6.89」を主宰する京都出身の脚本・演出・俳優であるらしい。

池ノ内富三郎(夙川アトム)と磯貝忠彦(右・三谷昌登)にあることを告げる深野心仙(左・イッセー尾形)©NHK
第50回より、池ノ内富三郎(夙川アトム)と磯貝忠彦(右・三谷昌登)にあることを告げる深野心仙(左・イッセー尾形)©NHK

「あるらしい」というのは誠に申し訳ないが、僕はさほど小劇場に詳しくはないからで、三谷昌登の顔もちょっと思い浮かばぬ。いや、『スカーレット』にはあの深野先生(イッセー尾形、いやあ実に良かった。再登場を期待していたのだが)の二番弟子・磯貝役として出演していたというが・・・、つまり「夙川アトムじゃないほう」ってことだな。

大野信作(林遣都)と百合子(福田麻由子)をメインとした話はいたって他愛ない。福引で有馬温泉ペアご招待券を当てるが、それを両親に譲った信作夫婦。そのあいだ、ほとんど接客したこともないのに喫茶「サニー」を預かることになったふたりのドタバタ劇だ。

そこに絡んでくるのは熊谷家の敏春・照子夫婦(本田大輔&大島優子・・・、相変わらず超地味な本田と完全におばはん演技にシフトした大島のこのコンビは、なんだか妙な味わいが増してきた)くらいで、頻繁に挟まれる回想シーンを除けば30分くらいで収まる内容を90分でやろうというのは無理がある。

お互いの気持ちを話す熊谷敏春(本田大輔)と照子(大島優子)
第123回より、お互いの気持ちを話す熊谷敏春(本田大輔)と照子(大島優子)

そもそもこのドラマ、起伏がなさすぎるくらいの全体的なトーンのなかで、突発的に躁的なキャラが何人かいるのだが、そのなかでもっとも不自然なのが、林遣都演じる信作だ。

最近では『おっさんずラブ』の大ヒットがあるが、『パレード』の謎の男娼役や『闇金ウシジマくん』の無茶な野望に燃えるイベンターなど、幅広い役柄のできる俳優である林。

以前のLmaga.jpの記事で、チーフ演出・中島由貴が、「林さんは俳優としては良いけど、(コメディで)あまり面白いと思ったことがなくて(笑)。ああいうキャラができるんだ、というのは発見でした」と語っているが、僕にはこんなキャラ、おかしくもなんともない。

やたらと躁的で夜郎自大な役(※明るく自意識過剰な役/だからプレイボーイを気取ってたのに百合子に告白できないでいるときの彼はかわいかったが)を振られて、どう演技していいのか困り果て、オーバーアクトに走り浮きまくる俳優・林遣都としか映らないのだな。

母・陽子(財前直見)からの電話に出る信作(林遣都)
第125回より、母・陽子(財前直見)からの電話に出る信作(林遣都)

そもそも残るところ1カ月。話を中断してまでこんなスピンオフを入れねばならない余裕はないはずだ。武志もいよいよ自分の陶芸を発見しかけ、家族関係も新たな発展を見せてきた直後に・・・。

このあと武志が白血病になるという重い展開が待っているから空気抜きになるでもと思ったか? そんなアホな。もしそんな理由ならば、視聴者を軽く見るんじゃねえと言いたいし、こんな無駄に一週間を費やすなら喜美子が成功する過程をもっと丹念に描くべきだったろう。とにかく僕には退屈でしかない一週間だった。

文/ミルクマン斉藤

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