甦る国宝、日本の修復技術を間近で鑑賞
住友財団が30年にわたり推進してきた文化財修復助成の成果を紹介する展覧会『文化財よ、永遠に』が、「泉屋博古館」(京都市左京区)で9月6日からおこなわれる。
古の文化や思想を伝える美術工芸品や資料の数々。それらが現代に残っているのは単なる偶然ではない。多くの人々の手によって大切に守り、受け継がれてきたからだ。同展は東京、京都、福岡の4会場でほぼ同時期におこなわれるが、京都会場では、市内や京都市近郊に所在し、修復が完了した作品を取り上げる。
たとえば「浄瑠璃寺」の『大日如来坐像』(京都府木津川市)は、後世の改変で像全体に漆と金箔が施されていたが、それらを取り除くと端正で若々しい姿が現れた。日本の肖像彫刻の傑作とされる「建仁寺 霊源院」(京都市東山区)の重文『中厳円月坐像』は、修理中に胎内から鎌倉時代に遡る秀麗な毘沙門天立像が発見され、取り出された。また、やまと絵の現存最古の作例とされる「神護寺」(京都市右京区)の国宝『山水屏風』は、6扇の配列が過去の修理で混乱していたのを並べ直し、なだらかな山野に水が流れ、野に花が咲く日本の原風景がよみがえった。
本展では、修復によって息を吹き返した文化財約30件(うち国宝2件、重要文化財10件)が見られるほか、文化財修復のための技術も紹介。世界最高水準にある日本の修復技術を知ることができる。普段の展覧会では窺えない「修復」という側面に着目した、とてもユニークな、そして意義深い企画だ。
文/小吹隆文(美術ライター)
『住友財団修復助成30年記念 文化財よ、永遠に』
期間:2019年9月6日(金)~10月14日(祝・月)※月曜休(9/16・23開館、9/17・24休館)
時間:10:00~17:00 ※入館は16:30まで
会場:泉屋博古館(京都市左京区鹿ヶ谷下宮ノ前町24)
料金:一般600円、大高生400円、中小生無料
電話:075-771-6411
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