吉原光夫「宮崎駿監督の気持ちと似てる」
2019年、全国5都市で上演されるミュージカルの金字塔『レ・ミゼラブル』。今回で5回目の出演となる俳優・吉原光夫が大阪で会見をおこない、舞台に立ち続ける今の思いを話した。
日本初演から30余年、通算上演回数は3100回を突破した同ミュージカル。吉原は、2011年に日本公演歴代最年少(32歳)でジャン・バルジャン役に抜擢され、一躍注目を浴びた。
「初めて出演した2011年は、ほとんど記憶が飛んでいます。何をやったんだろうみたいな。帝国劇場という宇宙みたいな場所に放り込まれて、レジェンドと呼ばれる人たちと同じ楽屋で過ごし、毎回必死でした」と振りかえる。
また、2013年はジャベールとの2役を担ったが、結果ほとんどバルジャンを務めた吉原。「ただ毎日務めることに集中しました。2015年も2役でしたが、バルジャンもジャベールも同じ量をやらなくちゃいけないという壁が立ちはだかり、これはきついぞと。『二兎を追う者は一兎も得ず状態になるぞ、光夫!』みたいな感じで追われていましたね(笑)。2017年でやっと地に足が着いた感じでした」と、ようやく役と対峙できたようだ。
そして初出演から8年が過ぎた今、思うことがある。
「同じ人が同じ役をずっとやるというのは、自分の指針的には違うかなと思うんです。若い人もどんどん出てきますし、代謝のいい演劇界であった方がいい。毎公演、千穐楽を迎えるたびに『これで終わり』と思うのですが、新たにお話をいただくとまたその世界を見たくなる。宮崎駿監督が『また描きたい』と思われる気持ちと似ているのかもしれません」。
これで最後と思いながら、またバルジャンを演じたくなる。吉原はこの役をどうとらえているのか。
「バルジャンは、演じる俳優によっては聖人のように見えるかもしれない。でも僕は、彼は一般人だという感覚を持っています。当たり前のように落ち込むし、おそらく僕と同じように『目には目を』で生きてきた。若いころは自分はこういう人間だからとシャッターを下ろしてしまうことも。親も、プロローグでの僕の演技を見て『昔のあんたやな』と言ってました(笑)」。
2013年から取り組む新演出版では、「泥にまみれた犬のようなところから正しい人間になろうとするバルジャンを描いている」という。この夏、苦悩のなかにありながら力強く生きる姿をまた、熱く演じるに違いない。
大阪公演は「梅田芸術劇場メインホール」(大阪市北区)にて、7月3日~20日まで。チケットはS席14000円ほか、3月23日に発売される。
取材・文・写真/岩本和子
ミュージカル『レ・ミゼラブル』
日程:2019年7月3日(水)〜20日(土)
会場:梅田芸術劇場メインホール
料金:S席14000円、A席9500円、B席5500円
電話:06-6377-3800
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