地下アイドルが異例の先行試聴会、なぜ?

2018.12.20 19:00

「タワーレコード梅田NU茶屋町店」で異例の先行試聴会をおこなった地下アイドルグループ・代代代

(写真3枚)

「アイドルはなぜ地下で夢を見るのか」をテーマに、大阪を拠点とする地下アイドルについて不定期で特集しているこの連載。第6弾となる今回は、大手レコード店で開催した、地下アイドルとしては異例のイベントを取材した。

かつてのようにレコード会社を通さずとも、個人レベルでもレコード店でCD販売ができるようになった今。大阪の「タワーレコード梅田NU茶屋町店」でも、アーティスト参加によるCD発売記念イベントが連日のようにおこなわれている。ちなみに同店は、「アイドルといえば『ヌーチャヤ』」と言われるほど、その展開に注力。特に、曽我部淳也店長によるアイドル関連のツイートは、並々ならぬ熱意と愛情にあふれている。

そんな「ヌーチャヤ」で今秋、7人組アイドル「代代代(だいだいだい)」の最新アルバム『むだい』の先行試聴会が開催された。先行試聴会とは、アルバムを一足早く聴くことができるイベントで、メジャーの有名アーティストが実施する場合がほとんど。地方を拠点とする地下アイドルグループが、大手レコード店の協力を得て先行試聴会を催すのは、異例中の異例である。

その代代代の先行試聴会は、平日にも関わらず超満員となり、アルバムのプロモーションとして大きな成果を残すことができた。地下アイドルにとって夢のあるこのイベントは、どういう経緯で生まれたのか。そして、メンバーの実感はどうだったのか。曽我部店長、代代代のメンバーに話を訊いた。

──曽我部店長、これまで同店でアイドルの試聴会はやったことはありますか。

「いえ、初めてのことです。ライブ映像の試写会的なことはやったことはありますが、試聴会はありませんでした。代代代のプロデューサー、小倉ヲージさんから相談を受けまして、即答で『やりましょう!』と返事をしました」

──イベントは結果的に満員になりましたが、まずは音楽作品として評価できるか、どうかですよね。

「『むだい』は特にバランスが良いですよね。小倉さんの作品には、『煩(うるさ)い、激しい、でも美しい』が必ずあって、そのバランス感覚が本当に素晴らしい。今作はそのバランスをこれまで以上にギリギリのところで保っているところがすごい」

曽我部店長に限らず、代代代は活動当初より、音楽性の評価が業界では高かった。音楽家・小倉ヲージさんがプロデュースする代代代のサウンドは、基軸ジャンルはハードコアテクノ、ブレイクコア、ノイズであるものの、1980年代アイドルソングなども交え、一方で様々な音をクラシックの協奏曲のような様式性で構築。地下アイドル界隈では「小倉ヲージの曲は狂気的」とよく言われるが、曽我部店長も、その音楽性とメンバーの表現力を高く評価する。

──曽我部さんはツイッターでも、代代代についてたくさん発信しています。曽我部さんを突き動かす彼女たちの魅力はなんですか。

「代代代の魅力は、プロデューサーである小倉ヲージの才能を堪能できる点、そしてメンバー7人の成長物語のエモさです。2016年9月に結成し、メンバーの脱退と停滞期があって・・・という紆余曲折を経て、パフォーマンス、精神面、女性として成長していく過程が実にエモーショナルなんです。そのドラマがあるから、私もバックアップしたくなった。とても美しいグループです」

代代代らの告知をする「タワーレコード梅田NU茶屋町店」のツイッター

──こういった企画はおそらく、誰でもできるわけではないと思いますが・・・。

「実施するためのハードルは特にはないです。単純に、私や店のスタッフが気に入ればやります。本当は売り上げのことを第一に考えるべきなのですが、それはまた別の話として考えています。関西のアイドルを応援したいですし、お客さまが喜んでくれれば大丈夫。そうなるために事前に運営さん、またはメンバーとちゃんと話をします。まずは音源を聴かせていただきたい。遠慮なく相談をしに来て欲しいですね」

──曽我部店長のような気持ちで動いてくれる関係者が、現在の大阪の地下アイドルシーンは圧倒的に足りていません。

「まあ、僕の場合は、自分が好きになったものは単純に多くの方に知って欲しいだけですし。逆に、そのグループのやり方に疑問を持ったり、楽曲に熱が入らなくなったりしたら、静かにその人たちから離れていくようにしています」

アイドルのニュースタンダードを掲げる7人組の少女隊、代代代(前列左から六花、みすゞ、後列左からアユ、宮衣紗羽、宇野祐生佳、たんなむ。、梨央)

──代代代のみなさんは先行試聴会は初めての体験だと思いますが、やってみていかがでしたか?

「いつもライブで新曲を披露するときは、こちら側だけまず(曲を)知っている状態じゃないですか。でもこういうイベントをやることで、多くの人と一緒に楽曲を共有できることが、とてもうれしいです」

──最新アルバムって普通は、レコード店で買ってそれを自宅に持ち帰り、一人で聴いたりするものです。

「そうですよね。だから今回、よよよ(代代代のファンの呼称)のみんなの初めて各曲を聴いたときのリアクションを生で見ることができて、『そういう反応をするんだ』と面白かった。そんなことはまず出来ないので新鮮でした」

──インディーズのアイドルがタワレコという大きな場所で、代代代だけの特別なイベントができたというのは、自信に繋がったんじゃないですか。

「今日は試聴とトークだけで、ライブ・パフォーマンスはやりませんでした。にも関わらず、あんなに多くの人が集まってくれたのは、確かに自信になりました」

──『むだい』はみなさんにとっても、思い入れの深いアルバムになりましたよね。

「バズったらいいなあ。誰か、TikTokで私たちの曲を使って踊って欲しいですね!」

取材・文・写真/田辺ユウキ

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