村上虹郎「お芝居とは心理の極みの表現」

人気作家・中村文則の原点である、2002年発表のデビュー作『銃』がついに映画化された。メガホンをとったのは『百円の恋』(2014年)で注目された気鋭監督・武正晴。普通の大学生が拳銃を手にしたときなにが起こるのかを、ひりつくような緊張感のなかに描いていく。主演は日本映画の次世代を担う俳優として、出演作が相次ぐ村上虹郎。来阪した本人に話を訊いた。
取材・文/春岡勇二 写真/本郷淳三
「自分にぴったりって言われると複雑(笑)」(村上虹郎)
──資料によると、以前お知り合いの方から、「虹郎にやってほしい役があるんだ」ということで、今回の原作本を薦められたことがあったとか。
そうなんです。3年前、舞台『書を捨てよ町に出よう』に出演したときの共演者から、「虹郎に合うと思うよ」と言われて。買ったのですが、そのままツンドク(積読)していたんです。そうしたら、それから1年半後ぐらいに、今度は映画のプロデューサーの奥山(和由)さんからも同じように言われて。
──そのとき、どう思いました?
びっくりしたのを越えて、腑に落ちたというか。こういうことってあるんだなって。ただ、やっぱりそう言ってもらえるのは光栄だなと思いました。
──奥山さんとのそもそもの出会いはどんな感じだったのですか。
これも3年前になるのですが、出演作品の深田晃司監督『さようなら』(2015年)が『東京国際映画祭』に出品されて、映画祭の控室に行ったら、そこにいらっしゃったんです。「どうしてここに?」と訊いたら「お前の出演作の製作総指揮じゃないか」とおっしゃって(笑)。それが最初でした。後で聞いたら、そのときから奥山さんのなかでは、僕で『銃』をやりたいと思っていたって。

──そこから1年半経って映画化が決まり、そこで原作を読まれたのですか? それとも、シナリオが先?
普段はあまり原作は読まないで、シナリオで初めて内容を知ることが多いのですが、これはお話をいただいてからシナリオが上がるまでに時間があったので、我慢できなくて原作を先に読みました。
──印象はいかがでしたか?
一気に読めました。自分はそんなに活字を読む習慣がなかったのですが、これはほんとにツラツラとすぐに読めました。それだけ面白かったってことですよね。また、読んだときには主人公のトオルを自分が演じることもわかっていたので、トオルの気持ちになって読みました。
──トオルというキャラクターについてはどう思われました? 知り合いや奥山さんから、合っていると言われていたわけですが。
この役が自分にぴったりって言われると、複雑なものはありました(笑)。トオルはそこそこ頭はいいのですが、過信しているのが問題なんです。トオルはなんでも自身で構築したストーリーに沿って物事を進めようとする。それは彼なりの正義なのですが、人としてコアの部分に在るべき「やさしさ」が歪んでしまっているんです。彼は銃を手にしたことで変わるんじゃないんです。銃によって、歪んでいるのを暴かれてしまうんです。
──なるほど、そういう解釈で演じられたわけですね。
そうです。でも、自分と共通している部分もありました。自分もいろいろなものから逃げていた時期があったので。器用貧乏で、学校の勉強もスポーツもそこそこできるのですが、一生懸命になにかに打ち込むことをしない。それどころか、ちょっと悪いことや危険なことをして、人がどこまで許してくれるかを確かめるみたいな甘えていた時期もありました(苦笑)。トオルは大学生にもなって、まだそれをやっている。それも過信の表れだと思いますが。
──村上さんのそういう時期って、いつごろのお話ですか?
16歳で初めての映画、河瀬直美監督の『2つ目の窓』(2014年公開、撮影は2013年)に出る前の頃ですね。あのときはまだ仕事をしているという感覚があまりなくて。現場のスタッフの方々がアットホームな雰囲気を作ってくださっていたんです。そこで、1人ではできない映画づくりというものを観て、面白いなと思った。俳優という仕事を、人を演じるということを突きつめてみたいと思ったんです。
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